特殊耐久サバイバル部門後篇 その37
ショウに情報を授け、空間の支配領域へと帰還する俺。
次は無いと脅されつつも、家族に手を出したら……と脅し返しておいた。
「それから、あの遣いによって半ば強制的に装備のメンテナンスなどをしなければならなくなりましたからね……まあ、開いた講座はとても好評でしたが」
自分の手の内を晒したくない、そう考える参加者の多いこと。
ましてや裏切り者の集団、我の強い者たちばかりが集まっているからな。
だが、だからといって手入れをきちんとできていない武器を使うのは危険。
相手は非同盟の魔獣だけでなく、今は逸脱した連中も含まれている。
そこで俺が提案したのは、独りで行える装備の点検──その超特殊版。
俺が作る専用の道具が必要な代わりに、ほぼ最大値まで耐久値を戻せるのだ。
訝しんでいた参加者たちだが、実際に試してみればすぐに掌返し。
魔物由来の素材が多いため、ここが終わればそう用意できない貴重品だからな。
「誰でも分かるように、簡単にできる仕様で良かったです……まあ、とはいってもさすがに『復旧玉』レベルでは無理でしたけど」
課金アイテムの一つで、使用すれば一定時間内の耐久値減少を一気に戻せる。
これに関しては、ただ使用を意識して玉を装備に当てるだけでいいのだ。
謎パワーがすべてを解決する理不尽と違って、ある程度手間が掛かるのが俺版。
陣の上に装備を置き、アレやコレやと装備に合わせてやらなきゃいけないのだ。
「とはいえ、これのお陰で装備を理由に力の出し渋りをしていた者たちも、ある程度本気で戦ってくれるようになりましたから、結果的に良しとしましょう」
そんなわけで、何もかもが順調に……とはいかないのが現実。
すでに魔獣同盟は崩壊寸前、なぜならもう魔獣が二体しか居ないから。
「『空間』、そして『火山』。非同盟の魔獣に至っては、すべてが討伐済み。ずいぶんとまあ、追い込まれたモノですね」
それは現実を見るかの如く。
人の生存圏は見る見る拡張されていき、今やエリアの九割を占めている。
裏側にある空間の支配領域はともかく、すでに火山の支配領域は風前の灯火だ。
裏切り者たちもそこに集結させられ、日夜逸脱した連中と防衛戦を繰り返している。
「最終決戦も近い、ということでしょうか。数少ない者たちだけが知る、本当のボス……そして、そのための仕込み」
俺、そして俺以外の生産職が空間の魔獣の遣いに依頼されていたあるモノの生産。
それはこんな状況になると、分かったうえで頼んでいたのだろう。
「それによっては、あるいは……最後の最期の瞬間まではどうにかなるかもしれないんですよね」
はっきり言って、最終的には参加者たちの勝利で終わる以外の結果は存在しない。
だが、その直前まで魔獣側が勝てる可能性もあるにはあるのだ。
せめて、そんな限りなく低い可能性まで導いてやりたい。
ここで得た様々なモノ、それに対する恩義には報いてやりたいからな。
──次回、禁忌登場!
p.s. 無字×830
カクヨムの方で読書しまくりな作者です
400エピソードぐらい読むと応募できるそうです……三日で到達しました
代償はそれなりに……主に時間的な意味で
仕方のない犠牲と割り切りましょう……上の数字は増えていきますけど




