表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
272/3052

カムロドゥノン その02



 今回は一度、城で話し合いを行ってから各自の持ち場に移動するらしい。

 つまり転移魔術で向かった先は戦場ではなく、最終防衛(ライン)である『カムロドゥノン』となった。


 俺をここに連れてきた『騎士王』は、支度があると言ってまたどこかへ消えていく。

 装備が戦闘用の物ではなかったので、おそらく戦支度を整えるのだろう。


「皆さん、お久しぶりです」


 なので王の間には独りで向かい、そこで待ち受ける円卓の騎士に挨拶を行う。

 ボタンで『騎士王』を連れ帰ってもらっている際、顔は会わせているけれど……ほんの一瞬だからな。


 挨拶をしてみたが本当に忙しいらしく、会釈だけで挨拶を交わしてきた。


「──さて、どこで待つかな?」


 円卓に座るのはご法度、しかし他に椅子は用意されていない。

 まあ、椅子ぐらいは用意できるので問題ないんだけどな。


 問題は──ここが王の間であり、変な場所で待機するのがアウトな点である。


「…………まあ、適当でいいか。いちおう、対等な存在って言われているからな」


 細かいことを考えるのは止めだ。

 思考をフルに使うのは、これから始まる戦場の中だけで充分だろう。


 取り出した椅子を部屋の隅に設置して、俺は時間を潰していく。




 そしてしばらくして、『騎士王』がこの間にやってきた。

 すると、俺のときには作業を止めなかった円卓の騎士たちが、作業を中断して忠誠の構えを取る。


「待たせた……『生者』、それはなんだ」


「何って──リクライニングマッサージチェアですけど?」


 ウィンウィンと駆動音を鳴らし、俺の全身が解されていた。

 俺の体にジャストフィットした椅子となので、非常に座り心地が良い。


「……仕舞え」


「はい」


『騎士王』が来た今、わざわざ座って待つ理由も無くなった。

 彼らと同じポーズは取れないが、せめて直立して待とうではないか。


『騎士王』はこの間にある円卓の椅子の内、上座に置かれた少し大き目な椅子に座る。

 これで席は満席となり、座る場所はどこにもないのだが──


「『生者』、其方も座るが良い」


「え? いや、椅子は仕舞ったんだが……」


「用意周到な其方のことだ、質素な椅子も所持しているだろう」


 そこまで言われると座らざる負えなくなるので、一番最初に作った、思い出の椅子を取りだしてそれに座る。


「『生者』、もっと円卓に近づけ」


「いや、さすがにそれは気が引けるというかだな……」


「この戦いの間、私たちは同じ目標を相手に戦う仲間だ。そうも除け者にしては、こちらとしても問題になる」


「なら、仕方がない……のか?」


 せめてもの抵抗で、向かい側の席に座ることにする。

 それで充分だったのか、『騎士王』の頬が少し緩んでいた。


 そして、円卓会議が始まる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=196149026&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ