闘技大会無制限部門前篇 その46
かなり非合法な手段に打って出た生産世界により、用意された俺メタな固有種。
相手が生きている限り死なない、まさしく俺のためとも言えよう。
《[ミュチ・ユアル]、意味は相思に関わるものだと思われます。相思、そして双私……相手の鏡合わせに成りすますのは、そういった意味を持っているからかと》
「何か弱点はありませんかね……」
《本来であれば、対象が死ぬだけで同時に死ぬ性質を持つ個体です。それそのものが、ある種の弱点とも言えましょう……この場合、そうも言っていられませんが》
まあ、本来ならば相手が死ぬ寸前で解除などしてやり過ごすだけでいいんだろうな。
だが今回、彼(?)に与えられた使命は俺の討滅の補助……おそらく自滅はしない。
《相手の狙いは舞台からの退場、その際に行われるシステムによる強制的な死亡判定。あくまでも[ミュチ・ユアル]は壁となり、その一瞬を作るための盾なのでしょう》
「…………やはり、やることは一つということですね」
作戦など無い、いつものようにノープランでの特攻あるのみ。
辻褄合わせは『SEBAS』にお任せ、俺は俺の考える通りに動こう。
「──“検索召喚”」
「! それは──」
「繋げ、『不動止水』の残滓」
使うのは【魔導勇者】戦で得た、魔導世界が隠し持っていた特別な力……その残滓。
その場所へのアクセス権限は持っていないが、代わりに残滓を増やして溜めている。
今回発動した“検索召喚”は、特定の座標との穴を開くことができる術式。
俺だけがアクセスできる回路を通じ、そこから今回特別な水を呼び出したわけだ。
穴から現れたのは少量の鉄砲水。
激流で押し流すわけでもなく、狙った場所にただ素早く一射飛んでいっただけ。
──狙いは『忌創展概』、だがその水は展開された魔力の膜にあっさりと弾かれる。
「防ぎましたね、水を」
「しまっ……」
かつて【魔導勇者】が唱えた“水氷”。
本物が存在する『不動止水』へと繋げ、それこそ激流のように水を生み出し──辺り一帯を氷漬けるできる術式。
それほどのことはできずとも、水が当たった場所を凍らせることぐらいはできた。
止まらない水、それが停まった時──首位のすべてを巻き込んで動きを凍らせる。
それが“水氷”の力。
残滓とはいえ元は本物、防いだと思ったはずの『忌創展概』の想定を超えて──彼女を一時的に動けなくさせることに成功した。
「さて、今の間に倒さなければ……」
『────』
俺が死ねばあちらも死ぬだろう。
だが、それは『忌創展概』の死ではないため、彼女の勝利となり俺の敗北となる。
上手いこと倒すために、方法を考えなければならない。
……まあ、『SEBAS』が居るので割と早く終わるかな?
※“検索召喚”
術式そのものはともかく、その用途において危険視され封印されていた術式
座標部分の変数を書き換え、理論上あらゆるものを召喚できる
大きく分けて用途は二つ──召喚された対象の座標を把握すること、座標を指定して召喚すること
前者もまた、召喚術を得意とする術者からは忌み嫌われている
p.s. 無字×691
毎月恒例の投稿日となりました
チャットアプリと催眠術師ですね
何だかんだ、PVはゼロじゃないことにいつもほっとしています……ゼロはなぁ、うん、寂しい




