元海
「おー！ 完璧だ。やっぱり持たせて良かったホイホ°イカプセル！」
現実での家を模したマイハウス、そこに設置したパソコンに一通の連絡が届いた。
ドローンたちが力尽き、プログラムの実行に成功したとの報告だ。
――そう、俺はホイホ°イカプセルを持たせていた。
最後に地面に落ちた際、仕込まれたスイッチが作動してある物を出現させる。
そうすることで、遠征をより成功へと近付けられるのだ。
「しっかしまあ、何ともシュールな光景なんだろうな」
出来上がった地図を見ると、円の軌跡を描くように八つの点が埋め込まれている。
それこそがドローンの落下地点であり、新たなスタート地点となる起点である。
「それじゃあ、一度視察に行ってみますか」
自分の足元に置いた怪しげな装置、それに両足を乗せると──視界が反転した。
◆ □ ◆ □ ◆
Ｓ１
今いる場所をそう名付けよう。
海が干上がって生まれたようなその場所には、果てしない地平線を眼前に広げている。
まあ、基本的にこの世界のほぼすべてが、そうだと思うんだがな。
俺が造り上げ、ドローンにカプセルとして持たせたのは転送装置。
『魔道具適性０(笑)』によって知った、転位の魔道具を改造した物である。
本来は空間魔法系の属性が必要となるその魔道具の作成を、科学的なコンタクトを取ることで無視し、指定した場所へ移動可能な代物へと昇華させたのだ。
細かいことは……まあテンションのせいで覚えていないということにしておいて、基本的には安全などこでも行けるドアをベースに作成してみた。
実はアレって、体を一度スキャンにしてから、ほぼ同じ存在が移動先で再現されているのであって、行こうとした本人が移動先に行けているわけじゃないんだぞ。
本人は分子破壊光線で消滅するそうだ……怖ッ！
魂云々や心云々など、そのままドアを再現したらいろいろと恐怖ものなので、魔道具の知識と:ＤＩＹ:、さらにインターネットを用いた安全装置の作成に取りかかり──誕生したのが、この転送装置である。
これがあれば、俺はドローンが起爆した場所ならばどこでも即座に移動が可能となる。
今もここから新たなドローンが出立し、俺の移動範囲を拡張してくれているぞ。
さて、どうして八つの転位先の中で、この南の地を選んだか……そこに深い理由は無いのだが、一つだけ考えてみたんだ。
仮にこの世界に命を育むとして、本来最初に生命が誕生したのがどこなのか？
──そう、答えは海だ。
海はすべての生命の母であり、現在地球で生存する生物もまた、原点まで戻れば皆海から生まれたものである。
そんな海を再生すれば……きっと俺も海水よ──（ゴホンッ）緑豊かで素材が集まりやすい普通の生産が可能な地帯が、その内できあがるであろう。
この世界の時間の流れがどうなっているかはよく分からないが、俺以外の家族がいる世界は、現実よりも加速した時間の中に存在している。
なので、億年単位で待つというような嫌がらせにはならないだろう。
さて、海再生プロジェクトの始まりだ！
……って、それはＤＩＹでもなんでもないだろ!!
初なのでここにて説明
転位：明確な認識の下で座標指定
転移：イメージだけでの座標指定
で移動します
壁に埋まってしまうのが前者で、自動的に調整してくれるのが後者となります
