第一回職業解放後篇 その17
神代魔道具の操作権限、それを上げられる方法の提示。
それを条件として、一先ず職業の解放をしてもらうことに成功した。
なお、前払いやら後払いなどはなく、一度に一括である。
信用とか信頼ではなく、【大船長】が失うもの的にそこまで損が無かったからだ。
「……さて、どうですか?」
《監視の機構は、一時的にハッキングを済ませております》
「ならいいですね……ふぅ、長時間はやっぱり疲れるな」
交渉用に準備していた意識を、ようやくオフにできた。
整えていた表情を緩め、傍から見たら相当気怠そうに映るだろう。
「それで、アレには何が書かれていて、どこまで効果があるんだ?」
《『造船』と『操者』、双方が許可した者にのみ与えられる正規のアカウントです。現在用いられている非常用の運用アカウントでは行えない、移動や防衛に関する機構が解放されるようです》
「…………神代魔道具の防衛って、最悪どこか滅ばないか?」
《問題ないかと。専守防衛とまでは行かずとも、基本的には相殺を目的とし、攻撃は主に乗員たちで行うものとして設計がされているとのことですので》
乗員たちが魔力を籠めると、それを飛ばす大砲なんかがあるらしい。
つまり【大船長】だけで国を滅ぼす、などのやり方は難しいようだ。
「なら移動に関しては? まさか、冒険世界から抜け出せるのか?」
《彼らによると、世界が破壊尽くされた場合はそれも可能になると。豪華客船であると同時に、救済の箱舟としての機構も組み込まれていると》
「じゃあ、今回解放されるのは?」
《海上以外での移動です。飛行船としての機構だけでなく、陸上用にもできるとのこと》
危険になったら空を飛ぶこともできると。
空に島が浮かんでいる、そんな場所もあるとのことなので【大船長】的にはそれで充分なのかもしれないな。
それなりに権限向上に必要な手続きは難しくしているようなので、まだまだ戻ってくるまでに時間は掛かるらしい……ここに居るとは言ったが、何もしないとは言ってないぞ。
「迷宮は……今回は諦めるけど、神代魔道具としての部分はどうだ?」
《迷宮としての再生機構もありますので、多少無茶をしても解析ができました。元となる技術は案役街にて得ておりますので、旦那様がお望みならばすぐにでも》
「うーん……いや、いいか。娯楽として欲しくなったら言うよ。俺の世界に、まだそこまで未来都市的な超技術の産物は必要ない気がする。休人が感づいて、何か求めてくるのも面倒だし」
《畏まりました。念のため、資料は纏めておきましょう。ご必要になった際は、いつでもご連絡ください》
神代魔道具はどれもこれも今の時代からすると希少だが、当時においてはそれが当たり前……発掘される品は、最新版ではないなんてこともあったようで。
文字通りの過去の遺物でも、今の時代よりも優れた技術が存在した神代。
たしかに集めれば便利なんだろうが……それは、俺がやる必要も無いからな。
※『超越者:造船』
船造りに特化した『超越者』
船の概念を限界突破させ、解釈の拡張ができる
──神代の船、そのハード面担当
p.s. 無字×578
いつも同じこと、対策を講じても圧倒的(睡眠)欲の前に、尽く潰されている作者です
時代の進歩はこれすらも解決できるのか…………リンクをスタートとしたい




