第一回職業解放後篇 その03
渡永氣船 最下層
乗船後、迷宮維持費を稼ぐために最下層へと落とされた俺。
這い上がるまでに一定量を稼ぎ、目的の人物である【大船長】に会うのだ。
「──さて、ここが最下層……ではない気がするな」
《正しくは、客人を招き入れる範囲内では最下層、と言ったところでしょうか。穴を空けられますと、規模によっては迷宮の修復機能が働かなくなりますので》
「人によっては壊せるんだったな……これ、キーシは出禁になりそうだな」
非破壊オブジェクトへの干渉、砕いた存在の硬度に応じた自己強化。
そんな厄介な力に加え、他にもまだ切り札がある知り合いの休人キーシ。
彼が何らかの理由で暴れ回り、真の最下層で拳を床に叩きつければ……原因は別だが、この船はタイタニックな船のような劇的な沈み方をすることになるだろう。
アイツに与えられた擬似権能は、いろんな意味で迷宮との相性が良過ぎる。
味方であれば頼もしく、敵であれば天敵と呼べるレベルに。
閑話休題
そんなことを考えている間に、ドローンによるマッピングと『SEBAS』による迷宮へのアクセスが始まった。
自動的に[マップ]が埋まっていき、自分の居る場所がより鮮明になっていく。
イメージ的には『中』、スタート地点から真ん中を迂回するだけで次の階層に行ける。
「これは……あからさまだなおい」
《迷宮の構造を簡略化することで、コストを削減しているのでしょう。加えて、無駄を減らせば稼ぎも減る、そういった考えもあるかもしれません》
「まあ、外側には魔物も居るみたいだが……問題は、真ん中の道だよな」
《そちらはドローンでは侵入できませんでしたので、代わりにこちらで回収した情報を送信します》
サラッとハッキングができた、と言っているがそこはスルーだ。
代わりに更新された[マップ]に、追記情報として出現する魔物が記される。
「えっと、ランダムなのね……で、おまけにそこには映像の中継装置付きと。うん、完全に娯楽扱いだな」
《そこでの活躍に、上層の賓客たちや旅客たちが報酬を与えます。それらも含め、脱出後の報酬選択に使用可能です》
「これ、休人の入れ知恵とか入っている気がするな……まあいい、あくまでその中だけが配信対象なんだよな?」
《はい。ただし、迷宮の管理者【大船長】には我々の動向は筒抜けですが》
「それはいいや。むしろ、こういう面も前面に出した方がいい気がしてきたし。とりあえずはそこまでに出てくる雑魚の掃討、加えて配信中のアピールの仕方を考えるのが優先かな? 他は後回しでいい」
ドローンは甲板にも仕込んであるので、配信がいつから始まったかは確認可能だ。
より刺激的で、かつエンターテインメント性の高いショーをお見せしよう。
※迷宮維持費
不壊にして異界である迷宮は、その存在を維持するためのエネルギーを外部から得ている
対象は主に侵入者、彼らが活動する際に漏れる分や、死亡時の流出エネルギーを回収している
──渡泳氣船の場合、特定の乗客以外すべてを侵入者として扱うことで、余剰分のエネルギーを徴収して維持費を稼いでいる
それでも足りない分は────
p.s. 無字×565
……眠い、最近短かったからこそ、突然長くなると疲れる作者です
やることが多いな……一日前とほとんど逆のことを語る作者でした




