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ボート



 W6


「……あっ、曲がった」


 六区画目にして、とうとう川の進行方向が転換する。

 綺麗にカーブしていた川は、南に向けて遠く彼方まで進んでいく。


「しかし、もう断崖絶壁って急すぎだろ」


 W5で水鉄砲魚を倒してから、少しずつ川と陸とが離れていき……W6で、ついに滝壺以来の崖状態である。


 落ちたら激流に流されて死亡、といった感じになっていた。


「……だがしかし、ここでやらなきゃ男が廃るってもんだ。──来い、マイボート!」


 ポケットの中から、崖の幅に合わせたボートを取りだす。

 横幅は1mにも満たないが、魔法エンジンが搭載されているので漕ぐ必要もバッテリーが切れることもない。


 昔、アルミボートに乗りたいと調べてこっちで実現した結果である。

 ……それでも念のため、免許不要の大きさにしておきました。



 ボートごと崖から落ちて着水する。

 瞬時に結界の硬度を変更したので、軽く揺れるだけで他に問題はない。


 エンジンを作動させると、軽快な音を上げて待機状態(スタンバイモード)となる。


「試運転は海でもやってたからな。よし、とりあえず行ってみよー」


 川が深くなったので、ようやくこっちの世界でも使えるようになったボート。


 進路操作はハンドでもフッドでもなくヘッドコン──思考を利用した方法を採用しているので、片手が塞がることも足が塞がることもない。


 先ほどまで川の流れに合わせて動いていたボートは、俺の意思に従い運転を開始する。

 途中魔物がその音に反応して水面から出てこようとするが、すべて結界によって届くことなく諦めていった。


「うん、快適快適。これでクルーザーみたいに動きが取れれば、なおのこと良かった」


 人間の欲望に限りは無い。

 どうせなら、という心が蝕んでくる。


 ……まあ、そのうち試してみるか。


「それじゃあ目指すは七区画目、激流補正で高速進行だー!」


 とにかく楽しむのが大切。

 今はアドベンチャーを満喫しようか!


  ◆   □   ◆   □   ◆


「や、ヤバい。どうしてこんなことにっ!」


 冒険を楽しむ、そんなセリフを言っていた頃もあった気がします。


 だけど、現実はゲームの世界でも厳しかったようです。


「な、流されるぅう!」


 巨大な魔物が、魔法と自身の体を駆使することでボートを倒してきたのだ。


 そういった場合の対策もいくつか用意していたのだが、ちょっと休憩とばかりに昼寝をしていた俺にはどうしようもなかった。


「絶対に、次は自動運転でも対応できるようにしてやるからなブゥルゥゥ!」


 今それを誓おうと現状は変わらない。

 死に戻りを繰り返しながら、俺はどんどん奥へ奥へと流されていった。



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