服作り
天然鉱石繊維というモノが存在した。
採掘された天然物の鉱石を煙レベルに細かく粉砕し、熱で溶けている状態のポリエステルやレーヨンに練り込むことで、その鉱石が持つ効能を半永久的に持続させるという技術であり。
実際には、体を温めてくれるという効果を持つ温光石と呼ばれる天然鉱石を練り込むのだが……ここに、別の鉱石を混ぜてみたらどうなるのだろうか?
例えば、生き物が微弱に垂れ流している魔力を吸収することで、より強度を高める──そんな鉱石を使えば……。
「……まあ、混ぜるところまではできた」
俺の手元には一締めの布が置かれている。
まだ初めてなので、色や絵柄はとてもシンプルなものを採用してある。
うん、再びはっちゃけてしまった。
よくよく考えたら、家族の安全を守るというのがこのゲームでもっとも重要な装備の作製なのかもしれない……そう思ったら、ポーションを口に含んで全身全霊で作業に行ってしまう。
ログを見たので自分がだいたい何をやっていたのか分かるのだが……うん、はっちゃけぶりにビックリだったよ。
そ、それでも目の前に布があるという事実は変わらないので、それを使用して服を作っていこうと思う。
「型紙は……うん、これだな」
ネットは偉大である。
たとえ型紙を用意するという面倒な準備すらも、印刷というアクションを行うだけで一瞬で済むのだから。
俺にデザインの才能があるとも思えないので、ネットから良いデザインの型紙をダウンロードして印刷してみた。
ショウはカッコイイ、マイは可愛らしい、ルリは神聖な、そして俺は……効率を求めた服をな。
「さて、次は裁断だ」
型紙の模写もできたので、次はパーツごとに正確に切り取る段階だな。
布斬り鋏も前回使用した最硬の鉱石で作製してあるので、問題ないぞ。
チョキチョキと鋏を鳴らし、型紙を布に固定しながら一つ一つ丁寧切り取っていく。
生産時は器用さが無限になるからか、それとも手袋を嵌めて器用になっているかは分からないが、型紙にピッタリ沿って切れてる。
作業の大半がフリーハンドで行えているのが、少々恐ろしいところだな。
「チクチクチクッと、チョッキンチョっと」
パーツごとに切り取ると、今度はそれらをこれまたテンションに任せて縫っていく。
できるだけ糸が見えないように、と考えるだけで手が半ば自動的に動き、すいすいと服が繋ぎ合わされていく。
そして、最後に余った糸を断ち切って──
「完成だー!!」
そして、最後に自分の服を作り上げた。
汚れても良いような鼠色の作業服。
ポケットも多いので、様々な物を仕舞って置くことができる優れものだ。
「さて、これをみんなにも届けないとな」
さっそく転送装置を起動して、俺は作り上げた逸品たちを送りだした。




