闘仙 その13
「えっと、どうやって使うんだっけ……」
取りだしたはいいが、ツクルはその指輪の使い方を完全に把握していなかった。
指輪を手に入れた際の出来事、が一部だけ鮮明に記憶されているため……それ以外の部分が、ひどく曖昧になっていたのだ。
そのときの記憶を必死に辿っていき……どうにか使い方を思いだそうとする。
──その様子は、帝国の兵から見れば隙だらけだと思える状態だ。
『…………』
だが、誰も動かない。
一般階級の兵に命令する立場である隊長たちもまた、指示を出せずにいた。
今は止まっているものの、ツクルが先ほどまで恐怖モノに匹敵する動きを見せていたため、兵たちを困惑させていた。
そのため、士気が下がってどうにも攻めあぐねている。
「──あっ、思いだした!」
『っ……!』
突然再起動するツクル。
同時に肩を上げ、驚く帝国の兵たち。
その顔は真っ青で、恐怖に染まっているのだが……ツクルは止まらない。
「────」
ツクルが何かを口に出して唱えだす。
その際、首の辺りを撫でていた。
「──、――――」
これまで聞き取れた言語が、大半の兵たちには聴き取れなくなる。
何を言っているのか分からず、さらに頭の中で恐怖を感じるのだが……。
「あ、あれは……」
「し、知っているのか?」
「ああ、嫌ってほどな」
一人の男がそう呟く。
彼の耳は普人よりも鋭く、彼の種族がエルフであると証明していた。
「あれは精霊語、俺たち妖精種の中でも極僅かな者しか使えない言語だ」
「つまり、アイツは妖精種なのか?」
「いや、違う。アイツの周りには一匹たりとも精霊がいなかった……なのに」
誰よりも顔を絶望に染め、言い放つ。
「どうして上級精霊が集まっているんだ!」
◆ □ ◆ □ ◆
俺の周りに、どこからともなく一つの珠が飛んできた。
それは俺が居る場所に辿り着くと、ゆっくりと人の形を成そうとする。
子供のような容姿、白いワンピース、吹いていない風で揺れる緑色のウェーブヘアー。
──精霊の少女が、この場に現界する。
予め首輪に設定しておいた精霊語で、少女とコンタクトを取る。
「あのー、すみません」
「? おおっ! 其方が精霊神様が言っておられた者か。ふむふむ、何やら複雑怪奇な風が感じられるのぉ」
「おそらくそうですけど……さっそく仕事を始めてもらえませんか?」
「うむ、それは構わんよ。しっかりと魔力を払ってさえくれればの」
大量の魔石を取りだし、手の上で転がす。
すべて俺の魔力を抽出した、俺100%の魔石でございます。
「この場に居る兵士たちを、可能な限りでいいので吹き飛ばしてください。上で飛んでいる機械と、向こうでありえない現象を引き起こしている『超越者』は除いてください」
「……まあ、魔石が足りておるから構わん。では、早急に終わらせるか」
そう言って少女が霞のように消えると、辺りの兵たちが突然悲鳴を上げ始める。
そちらの方を見てみると、兵たちが風で吹き飛ばされて結界の外に排出されている光景が確認できた。
魔法の武器を手放して吹き飛ぶ様子に、思わずガッツポーズを取る。
よし、これでレアアイテムゲットだぜ!
「──こんなものかの。一部の者は耐えおったが、用意された魔石の魔力では足らん」
「いえ、これで充分です。ありがとうございました」
「そうか……では、またの機会があることを望んでおるぞ」
再び俺の近くに現れた少女は、俺の手の中にある魔石を風で掬い集めてどこかへ消えていった。
……結構な魔力、籠めてあったはずなんだけどな。
「さて、回収回収」
精鋭はだいたい『闘仙』さんの所に居る。
今の間に魔法の武器を集めておかないと。