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死の灰



「──なるほど、そういうことでしたか」


「理解したか」


 さて、聞いた事情を纏めようか。

 代表の言う『灰振り』とは、火山から吹く火山灰のことであっているようだ。

 数百年に一度起き、箱庭全体に死を齎す災厄らしい。


 効果は──吸ったものが一定以上の能力値やレベルを持っていた場合死ぬ、そんなチートのようなもの。


 彼らにとって、それは死を意味する。

 強くなければ死んでしまうこの場所で、降り積もる灰は文字通りの『死の灰』なのだ。


 魔物は魔力溜まりと呼ばれる場所さえあれば、そこから何度でも誕生する。

 だが彼らは、地球人と同じ方法で子を生すのでそれはできない。


 逃れられるのは、あまり強くない者のみ。

 ──つまり、子供だけなのだ(このゲームでは、女性も強い……例は『騎士王』)。


 強い者たちが生き残るためには、この場所から脱出する以外の選択は無い。

 なので、過去『死の灰』が降ったときの代表は、子供を残して全員が守護獣へと挑んだそうだ……今、彼らがこの場所に住んでいる時点で、結果は解るだろう。


「お前はすぐにこの場所から出た方が良い。我らは数日後、守護獣に挑む。あれが起きるのは挑む日の翌日……生きるか死ぬか、結果は簡単に分かる。前回の『死の灰』から当時の子供たちは、この砦を築いた。生き残れる者を増やし、次代に繋げられる可能性を高めたのだ」


「……ではなぜ、精鋭で挑むので? 砦さえあれば、全員が生き残れるはずでは?」


「簡単な話だ、我らは強さと引き換えに命を支払った。生き残るために手に入れた力が、自らを滅ぼす呪いとなる……ふっ、笑える話だろ」


「いえ、共感する点がありますので」


 なるほど、つまり彼らのその技術を学べれば、俺は今以上に強くなれるのか。

 プレイヤーにそんな代償はないだろうし、俺にはこれ以上弱くなる可能性はない。

 ──まさに、俺向きな力の手に入れ方だ。


「話を聞いて分かりました、私は貴方たちを死なせたくありません。ですので、私から一つ提案があります」


「……言ってみろ」


 そう言われて、俺は一つの考えを伝える。

 たぶんだが、彼らが守護獣に挑むこと自体は止めることができないだろう。


 何やかんやと言ってはいたが、瞳がこう告げていたのだ──戦いたいと。

 なので俺は、それを全力でサポートする。

 戦うことでのそれは無理だが、憂いを無くすことぐらいならば俺にでもできる。


 すべてを説明すると、真剣な顔で俺の話を思案する代表。

 そして一言──


「本当に、それは可能なのか」


「あくまで一時的に、ですけど。それでも貴方たちにとって、悪い話ではないでしょう」


「そうだな、ならば頼む。確証はないが、選ぼうと選ばずとも結果は同じだ。ならばせめて、可能性が低い方を選んでみようか」


「……低い、と本人の前で言いますか」


「事実だからな」


 このような話をした数日後、俺と代表率いる精鋭部隊は──守護獣へと挑む。



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