表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/3050

孤児院 前篇



 それから、いろいろとあったとだけ纏めておこうか。

 少年が戻った途端、教会内にいた子供たちがいっせいに彼へ飛びかかってきて気絶。


 目を覚ました少年の前に現れたシスターが抱き着き、呼吸不可状態になって気絶。

 落ちてしまった焼き串を争い、少年の制止も聞かずに暴動が起きて俺死亡。


 最後のはどうでもよかったが、この教会で少年がかなりの地位を有しているのがよく分かる一コマであった。


「おっちゃん、追加を頼む」


「はいはい。……にしても食うよな」


「アイツら、お腹いっぱい食べたことなんて一度もないからさ。食べられる内に食べるってこともしたことなくて、手に入った食べ物は必ずここで分け合ってて、絶対に満腹にならないんだ」


 簡易の調理用魔道具を操り、焼き串を再度温めながら会話を行う。

 匂いにグーグーとお腹を鳴らす子供たち、すでに何十本も食べているはずなんだが。


「──おっちゃんには感謝してるよ、アイツらのあんな顔……俺も初めてみたからさ」


「金で解決できるなら、使うに越したことはないだろ? どうせ俺はお前の獲物にされるような雑魚だ、こうやって散財するぐらいどうってことないさ」


「うぐっ。わ、悪かったって」


 少年を軽くイジメつつ、目の前の光景を見て頷く。

 俺も家庭を持つ父親だからな、子供が苦しむ姿を見て何も思わないわけじゃない。

 できるなら、手を差し伸べてやろうと思ったんだ。


 ちょっと汚い金かもしれないが、俺みたいな奴が使うよりも子供たちのためになった方が心も洗われるだろう。






 さて、少年との心温まるハートフルな話はここで終了だ。

 ここからは、大人のちょっと汚い部分が多めに出てくるかもな。


「──では、貴方自身にこの場所をどうこうしよう、という意志はないので?」


「そのつもりです。偶然縁を持った少年に、手を貸そうとあぶく銭を振り撒いただけですから。恩を売って奴隷売買の餌にしよう、などと考えているわけでは」


「……ふむ。そうですか」


 懺悔室のような場所で、俺ともう一人の人物──神父さんは話し合っている。

 少年たちが焼き串を食べている最中に突如現れ、俺との話し合いを求めてきたのだ。


 どうやら自分たちが保護していた子供が何かの事件に巻き込まれていないかを確かめているようである。

 見知らぬおっさんが食べ物を提供し、ばら撒いているんだから当然だ。


「いつまでも疑っていては悪いですね。貴方からは、嘘を吐いているような反応は感知できませんでした」


「……はぁ。そう言ってもらえると、こちらとしてもありがたいです」


「驚きました。心からの謙遜、これはなかなかも意識できないものですから。貴方は純粋に、あの子たちのためを思ってくれていたのですか」


 何か特別なスキルでもあるのだろうか。

 勝手に話を進めて勝手に納得した神父さんは、今までに向けていた作り笑いを止め、彼自身の笑みを浮かべた。


 ……俺、何かしました?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=196149026&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ