表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/3049

扉の先



 冥界らしさ、それはいったいどこにあるのだろうか。


 とある小説では、そこは何も無い草原とも選ばれし者だけが行ける楽園とも、宝石で装飾された宮殿とも記されていた。

 他にも日本では灼熱やら針山やら極寒やらいろいろとあったが……とにかく、極楽か苦痛かの二択で分かれていたはずだ。


 だが、目の前に広がる光景はどうだ。

 しっかりと足の人たちが、歴史物のドラマなどを視たときに見れるような日常を、当たり前のように過ごしている。

 全員がニコニコしているわけでも、全員が苦しんでいるわけでもない。


 走り出した子供が転んで泣いていたり、食品を朗らかな笑顔で売り捌いていたり……。


「これ、普通の町だよな」


《このタイプの冥界は……マグ・メルやヴァルハラ、それにエリュシオンと言った理想郷とは異なります。正か負の一方に偏っている様子もありませんので、この世界独自の冥界かと思われるかと》


『SEBAS』の見解を纏めれば、地球の神話には存在しない、新たな冥界がこの場所だということだ。


「運営も頑張ってるんだなー。オリジナルの世界観って結構大変なのに、冥界の方までわざわざ作ってるなんて……」


 ○○ワールドとかだけでもいろいろと細かい設定があるらしいのに、こういう所まで工夫を凝らしているのか。

 まあ、『騎士王』の所も引き継ぎ制になっていたりしたし、それぞれ微妙に異なっている部分はあったんだけどな。



 さて、ここまでは開かれた門の先の話をしていたが、そろそろ俺の立場に合った話をしようか。

 突然巨大な門が開いたら、当然住民や兵士たちも気付くだろう。

 俺の元には数人の衛兵がやって来て、すぐさま衛兵所に連れていかれた。


「――つまり、君は正道で扉を開けた……そう言いたいんだね?」


「はい、それが紛れもない事実ですから」


「ふむ……。少し、待ってもらえるかな?」


 俺に事情聴取をしていた衛兵のリーダー的な人は、一通り俺の主張を聞き入れると、部下に命じて水晶のように透明な石を持ってこさせた。


「これに手を当ててくれるかな?」


「えっと……これは何ですか?」


「鑑定石、その中でも特定の称号が無いかを確かめるものだよ。扉を開ける条件を満たせていれば光る、その色によってあることが分かるんだけど……それは光ってから話すことにしよう」


「分かりました」


 言われた通りに石に手を当てると──白色にピカッと光った。

 ……同時に、『SEBAS』が俺を通じて解析を掛けている。


 これで、魔道具では無いこの石の詳細が分かるかもな。


「……ふむ、第一権限の保持者か。確かにあるようだね。久しぶりのお客様だし、何よりあのお方からの指令もある……すぐにお連れしようか……」


 何かを考えるような表情をする衛兵さん。

 あの、少し休ませてもらえませんかね?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=196149026&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ