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騎士王の頼み事

「やあ、久しぶりだな『生者』」

「……あの店以外で会うの、意外と初めてだよな。とにかく久しぶりだ──『騎士王』」

　生産ギルドとも話を付けた結果、今ではかなりの金持ちになった俺。

　なんとなく歩きたいな、と思って町の中を散策していると……面倒なのに出会った。

　最近は全然見かけていなかったのだが──いったい何をしていたんだろうか。

「ようやく国が安定してきてな。久しぶりにこちらに遊びに来れたのだよ」

「そうなのか……じゃあ、もう少しこの町で楽しんでいってくれ……なんだ、この手は」

　苦労したよ、と演戯する『騎士王』を放置して逃げようと思ったのだが、ガシッと腕を捕まれてしまう。

　俺が苦痛を感じない程度にソフトなタッチにしてくれているが、それでも優しく殺されることに違いはない。

「残念だが、『生者』を逃がすわけには──あれ？」

「いや、帰らせてもらうからな。じゃーな」

「ちょ、ちょっと待ってくれ！」

　すぐに死んで粒子化を行い、腕をすり抜けるとそのまま逃げる。

　……まあ結局、最後には捕まるんだがな。

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　余裕を持っているという体(てい)を装い、できるだけ俺に有利な条件を認めさせてから、話を聞くことになった。

　密会に選んだのは、いつもの焼き串屋のスペースである。

「……で、用件はなんだ？」

「本当なら、早く『超越者』の集団に加わってほしいのだが……『生者』は群れるのを嫌うからな」

「そうじゃない。俺はお前らみたいな一騎当千の力が無いから、分不相応だと言っているだけだ」

「それでこそ『生者』だ。……今回は、頼もうとしたのは簡単なことさ──頼む、国にできたダンジョンを踏破してくれないか？」

「……ダンジョン？」

　ダンジョンって言うとアレか？

　ローグとかウィザードリィ、Ｄ＆Ｄに出てくるあの……。

「国も治まって一段落していたある日、新たなダンジョンが大量に発生したのだ」

「そんなに簡単に増えるものなのか？」

「いや、『マーリン』もそれは違うと言っていた。本来ダンジョンは、長い年月をかけて発生するものだ。一気に複数個発生するのは異常と言っている」

「複数……それを全部俺がやれと？」

「いや、『生者』に頼みたいのは中でも一つだけだ。私や国の者では相性が悪い条件を課せられたダンジョンが一つ残っていてな。このままではダンジョン内の魔物が溢れて出てきてしまう」

　そりゃあ大変なことだな。

　詳しいことはまだ分からないが、魔物が溢れ出てくると言うのは、つい最近起きたエルフの森のレイドバトルみたいなことが起きると言うことだろう。

　ダンジョンの魔物は、フィールドの魔物より強いというのは相場が決まっている。

「分かった。先に言った条件にプラスして、もういくつか報酬について話し合いを終えたらダンジョンを踏破しよう」

　取れるものは取っておかないとな。

　それから『騎士王』と入念な打ち合わせをした後に、ダンジョンへ向かうことになる。

　……さて、何が待っているんだか。