貢献イベント その02
途中で『光学迷彩』を解除しつつ、目的の場所へと進んでいく。
何度か強そうな魔物に遭ったが、それらはすべて無視して直進。
当然そんなことをすれば攻撃を喰らうのだが、肉を切らせて骨を断つ作戦で、ただただ気にせずに歩き続ける。
途中からそんな俺の狂気性に感付いた魔物たちは、誰も俺を気にしなくなっていた。
たしかにありがたいのだが、それはそれで心が折れそうになるな。
「さて、着いたわけだが……ちゃんと封印してくれているんだよなー」
辿り着いた場所は、山腹にある洞窟だ。
奥へ進んでいくと巨大な扉があり、そこには複雑怪奇な魔方陣が存在していた。
ただ、少しだけ欠けており、扉の中から黒い靄のような物が漏れている。
「えっと……まずは写真を撮っておこうか」
全体が写るような場所でカメラを構え、その魔法陣を撮影しておく。
魔力の流れごと写し取れる代物なので、内容も丸解りになるのだ。
「『SEBAS』、よろしく頼む」
《承知しまし……おや、これは》
「あれ、もう分かったのか?」
さすが『SEBAS』、データを送信した瞬間にすべて理解するとは……。
《いえ、この魔法陣の中にこちらで把握している術式が混ぜられておりまして》
「へぇー、それってどんなの?」
《……それがですね、t──》
ガコン ガゴゴゴゴゴッ
「えっ? すまない、もう一度頼む」
どこかで急に大きな音が鳴ったから、肝心の部分が聞き取れなかったじゃないか。
《ですから、この術式は──》
ガゴゴゴゴゴッ ドドーン!
さらに大きな音がなるが、今度はどうにか聞き取ることができた。
が、それを喜ぶ暇はないようで──。
《『超越者』を識別する術式です》
「……オー、ノー」
いつの間にか目の前の扉は、思いっ切り全開になっていた。
中から一気に飛びだしてきた瘴気で死に戻りをしまうのは、いつものことだろう。
◆ □ ◆ □ ◆
パキンッ!
「……? 枷が、解けた? それに、封印も解除されている?」
久しぶりに自身の口を動かし、その身に起きた現象を客観的に考える。
「封印を解くのにはまだ時間が掛かるはず。なのに封印の解除と共に、我の楔は解き放たれた……なぜだ」
ソレは未だに理解できていない。
封印は確かに、解かれたのだ。
条件は──『超越者』の死亡による解除。
勇者がとある『超越者』より与えられたその封印の術式には、そのような条件による解除方法が刻まれている。
それが、今満たされたのだ。
「しかし、あの『超越者』が易々と死ぬはずもない。神の悪戯か邪神の介入か……よく分からんが、いい機会なのだろう」
たしかに、それは神の悪戯なのだろう。
今もどこかの空間で、抱腹絶倒の勢いで笑いこげる神がいたのだから。
そんな神の仕業だと錯覚し、ソレは永い封印の間に凝った体を動かしていく。
同時に、体から漏れた瘴気が流動し、何度も『超越者』が死んでいることも知らない。