貢献イベント その01
イベントエリア
「……なんか、普通だな」
イベントということでそれに参加してみたところ、転送された場所は農村のような場所であった。
鳥が囀り、家畜が鳴き、村の者が楽しげな声で賑やかす。
うん、どこにでもありそうな普通の農村であった。
同時にこの場所に転送されたプレイヤーたちもそんな感想を持ったのか、似たような発言が聞こえてくる。
「──『光学迷彩』起動」
そんな中、こっそりと姿を隠す。
いわゆるインビジブルというヤツで、これがあれば注目を浴びずに移動が可能だ。
……バレると困るってわけでもないが、あまり干渉しない方が良いしな。
(さて、本来は村の中に行って何かをするべきなんだろうが……嫌な予感がするな)
当然、村の中の者でも俺を殺せるらしく、あらゆる危険察知──以降死亡レーダー──が反応している……のだが、それよりも激しく、煩い反応が別の場所で感じ取れた。
(本当は、こういうのはショウみたいな一流の奴か、廃人がやればいいんだが……こればかりは、少々気になるんだよなー)
それは、どこかで感じたことのあるような気配、それを変質させたようなものである。
このゲームでの俺の関係者は、どいつもこいつも面倒事の火薬庫のような奴ばかりだ。
……つまり、その反応の持ち主も面倒事を抱えているのだろう。
ショウたちに任せても良いのだが、俺が先に行って見ておくのも構わないと思えた。
(まっ、村に行こうがそっちに行こうが、どちらにせよ俺は死ぬんだしな)
諦念の意が心の中で渦巻くのを感じながらも、こそこそと怪しい場所へ移動を始めた。
◆ □ ◆ □ ◆
誰も居ないその場所で、ソレは胎動を始めていた。
深き深き眠りから覚め、力を蓄えて……。
(アレは、いつのことだっただろうか……勇者が、我を倒しに来たのは)
聖なる光をその身に纏い、神が授けた魔を滅する剣を振るう──勇者。
ソレは勇者によって討たれ、この地──昏き牢獄の中で永い時を封印されていた。
(結局、勇者も我を討てずに封印を選んだ。やはり、我に敵う者などいないか)
人類最高の戦力である勇者が、ソレを滅することはできなかった。
そのことは、ソレの中でも一種の誇りのように感じられている……が、
(……しかし、あのときのアレからは勇者以上の力を感じた。世界には勇者を超える存在はごまんといることが分かった。我はアレを倒さねば、目的を果たすことはできなんだ)
勇者との邂逅をする前、ソレは一人の者に出会った。
黒い長剣を携えた金髪の男。
ソレに何をするでもなく、ただ見に来た、と一言だけ告げていた。
(出会った瞬間、死を感じた。全身が凍り付き、死神とやらに鎌を突きつけられるとはそのことであったか)
ソレもまた、何もしなかった……いや、することができなかった。
殺気を放った途端、男からは尋常じゃない死の波動が送られてきたのだ。
ソレはその力に抗うこともできず、その先に起き得る未来を甘んじるつもりである。
男は何もせず、自身のことを少しだけソレに話してから別の場所に向かっていた。
(──『超越者』、それが我の討つべき存在の名。封印が解けるのも時間の問題、我も準備をしなければ……)
ソレは、『超越者』との闘いを願う。
──そしてそれは、そう遠くない未来の話である。




