08:いきなり飛び出すのは禁止!
< スキル:野宿が成長しました >
< スキル:野営を取得しました >
朝からピロリ音に起こされた。
何だってんだ。
マロとハチのモフモフに囲まれてせっかく気持ちよく寝ていたというのに。
「ん、野営……ってなんだ?」
スキル名:野営
分類:一般・常時発動型
効果:野外での睡眠時に回復効果、及び睡眠中の警戒能力が上昇する。
へ~、警戒能力か。
俺向きのスキルじゃ~ん。
表示されたステータスウィンドウをぼんやり眺めていると、ペロリと頬をなめられた。
顔を向けるとマロが起きていた。
「おはよう、マロ。起こしちゃったか?」
頭を撫でてやるとマロが目を細める。
ちくしょう。可愛いな。
モンスターなんだけど。
「よし、起きるか」
すっかり目が覚めたので活動を開始する。
仲間が増えたおかげで昨日までのような焦りはない。
まずは新しく取得した職業の事を把握しながら、ゆっくり森を進もうと思っている。
焦って進み、マロとハチより強いモンスターなんかに遭遇してしまっても困る。
そんな時のために自分の出来る事を理解している必要があると思った。
実際の話、コボルト達のレベルは俺よし少し高いだけであまり変わらない。
恐らくはモンスターの中でもそこまで強いほうじゃないハズだ。
ゴミ以下の俺が瞬殺されなかったくらいだし、むしろ弱いほうかもしれない。
今後、格上との戦闘になる可能性はむしろ高いと考えるべきだろう。
俺は神様からもらったチート(笑)で沸き水を出し、手ですくって顔を洗う。
冷水が寝起きの脳を一気に覚醒させた。
そのまま喉を潤していると、マロとハチも湧き水をペロペロしていた。
「よし! マロ、ハチ。行くぞ」
< スキル:散歩が職業:魔物使いとリンクしました >
< 魔物使いスキル:散歩を取得しました>
歩き出した途端に良く分からないピロリンが来た。
散歩が増えたらしい。
「うん、どういう事だってばよ?」
スキル名:散歩
分類:魔物使い・常時発動型
効果:歩行時に同行中のペットのなつき度が上昇する
詳細を開いてみると、内容が別物のようだった。
どうやら一般スキルの散歩を持っていたおかげで、魔物使いとしての新しいスキルが取得できたという事らしい。
「なつき度なんてあったのか」
というかこいつらはペット扱いだったんだな。
マロとハチは尻尾をフリフリしながら俺の左右に並んでいる。
多分、めっちゃなついてると思う。
一応、ステータスを確認してみた。
「なつき度、なつき度……っと」
名前:マロ
なつき度:MAX
名前:ハチ
なつき度:MAX
うん、最大値みたいだね。
そりゃなついてるワケだよ。
これはあの猫じゃらしの効果だろうな。
見せた瞬間の食いつきが尋常じゃなかったし、あの時からずっと最大値のままなんだろう。
さすが神のアイテムだ。
なつき度を上昇させるスキルは要らない子になっちまう。
「むしろ猫じゃらしの方がチートじゃねぇか……」
それに比べて地脈くん(最強無敵チート)の哀れさときたら無い。
今の所ただの蛇口役だ。
いや、便利といえば便利なんだけどさ……。
チートの不甲斐なさを嘆いていると、マロとハチが急に吠えた。
「どうした?」
立ち止まって様子を伺う。
二匹の視線の先には、プルプルとした小さな影が見えた。
「モンスターか」
全く気が付かなかったぜ。
さすが俺だ。
無警戒のスキルを取得しただけの事はある。
敵はハッキリ言ってスライムだ。
もう見るからにスライム。
プルプルしたサッカーボールくらいの塊がノソノソと動いてる。
絶対にスライムだよ、コレ。
< 鑑定不可:知識スキルが不足しています >
試しにステータスを覗こうとしたが、ダメだった。
「ダメか。カテゴリーFじゃないって事か?」
そもそもカテゴリーって何だって話だ。
もしかしたら「私はゲーム序盤の町の横の草原あたりで出てきます」と言わんばかりのあの見た目の割りに実はめちゃくちゃ強いという可能性もある。
敵のステータスが分からない以上、下手に戦闘を挑む必要はない。
避けて通れるならその方が良い。
「よし、迂回して……」
指示を出す前に犬っころコンビは居なくなっていた。
「あ」
ハチよりもマロの方が一瞬だけ早く飛び出し、プルプル生物を一噛みにし、咥えたままブンと投げ飛ばした。
木の幹にぶつかったプルプル生物はその衝撃で弾け飛ぶ。
残ったのは何やら小さな石ころ一つと無残なプルプル生物の残骸だけだ。
「弱っ!!」
瞬殺だった。
無駄に警戒していた俺がバカみたいだ。
< モンスター知識:スライムを取得ました >
< モンスター知識;カテゴリーGを取得ました >
倒したおかげか、新しい知識が取得できた。
やっぱりスライムじゃん。
鑑定不可だったのはカテゴリーがFとは違うからのようだ。
マロが残った石ころを咥えると、二匹はじゃれあいながら戻って来た。
石ころを差し出すように顔を向けてくる。
「なんだ、コレ……?」
アイテム名:スライムの魔石
分類:魔石・カテゴリーG
効果:なし
加工:スキルが不足しています
どうせ無駄だろうと思いながら確認してみると、詳細が表示された。
スライムの知識のせいだろうか。
「うーん、加工はスキル不足か。でもスキルさえあれば何かに使えるって事だよな」
一応、取っておこう。
今後なにかの役に立つかも知れない。
「その前に……マロ、ハチ! おすわり!」
俺の指令に、二匹がピシャリとおすわりの姿勢になる。
「次からは俺が指示を出すから、いきなり飛び出すのは禁止! わかった?」
分かっているのかいないのか、いつも通りの元気な「ワン!」が返ってきた。
今回は圧勝だったものの、毎回こうなるとは限らない。
念のため、敵の様子を確認してから戦闘を行う事にした。
せっかくの仲間を失いたくはない。
「よし、良い子だ。じゃあ、気を引き締めていくぞ!」
そんな俺の用心は杞憂に終わった。
出会うモンスターはコボルト達より弱いモンスターばかりだったのだ。
カテゴリーはモンスターの強さか、あるいは危険度のランクらしい。
恐らくはスライムのGが一番下で、F、Eと上がっていくのだろう。
コボルトはFだが、今のところそれ以上には出会っていない。
この森のモンスターはカテゴリーGがほとんどらしい。
スライムとの戦闘でカテゴリーGの知識を手に入れたおかげで、ステータスを確認してからの戦闘が可能になった。
そのため安心してコボルト達に攻撃指令を出せる。
現れるのはスライムを初めとして、大きな芋虫、イモワーム。
足の生えた大きな茸、アルキノコ。
大きなネズミ、デカマウス。
なんか虫やら小動物やらがちょっと大きくなった程度で危険度の低いモンスターばかりだ。
途中から毎回指示を出すのも面倒になってきて、マロとハチへの命令は「自由行動」になった。
やれそうなら殺れ、だ。
ついでにヤバそうなのを見つけたら吠えるように頼んでいる。
戦闘を二匹に任せた分、俺は進みながらも取得したスキルの解析に努めていた。
先に俺の現在のステータスについてだが、全く変わっていない。
ゲームなんかじゃ戦闘をこなせば経験値などが手に入り、レベルが上がっていくもんだ。
神様も「レベルあげ頑張ってね!」って言ってたし、その概念はあるハズだ。
カテゴリーGの経験値が極端に少ないのか、あるいはコボルトの戦闘が主体のため俺の経験になっていないか。
前者に加えて、ペット二匹に経験値が分散しているためという可能性もある。
それならば戦闘を続けまくれば良いのだが、後者の場合は森を抜けてから対策を考える必要があった。
俺が戦うとなれば、それなりの武器が必要だからだ。
試しに一度だけスライムを殴ってみたが、相手のHPは1しか減らなかった。
さすがゴミ以下ステータス。
ちなみにスライムのステータスはこんな感じだった。
スライム
レベル:1
HP:50/50 SP:10/10 MP:10/10
生命力:5 持久力:1 集中力:1
筋力 :5 技力 :5 理解力:1
信仰 :0 呪怨 :0 血統 :0
幸運 :1
理論上では50発殴れば倒せるわけだが、残念ながら俺はそんなに殴り続けるスタミナを持ち合わせていなかった。
攻撃を意識して殴ると思ったよりもスタミナを消費するせいだ。
殴って、逃げて、回復をまって、殴って、逃げて……なんてやってたら日が暮れてしまう。
今は戦闘はコボルト達に任せておく。
そんなワケで成長したのはスキルの方だけだ。
ちなみに、全体のステータスとしてはこうなっている。
名前:イセヤ ナルコ
レベル:1
職業:魔物使い
状態:正常
HP:120/120 SP:50/50 MP:30/30
生命力:12 持久力:5 集中力:3
筋力 :5 技力 :5 理解力:3
信仰 :0 呪怨 :0 血統 :0
幸運 :#$%&
固有スキル:地脈の奔流
ペット:マロ[コボルトLv3]・ハチ[コボルトLv3]
取得スキル一覧
一般:散歩・登攀・野営・腕力増強
知識:モンスター[カテゴリーF/G]
魔物使い:散歩・捕獲・獣癒し・攻撃指令・防御指令・撤退指令・待機指令
所有物一覧
固有:神の猫じゃらし
魔石:スライム*4・イモワーム*3・アルキノコ*1・デカマウス*2
新たに取得したスキルは主に魔物使いとしての職業スキルだ。
攻撃、防御、撤退、待機と四つの指令を取得しているが、これは普通に指示を出すだけなので技というほどのものでもない。
効果としてはペットが指示を聞きやすくなるという事らしい。
恐らく、スライムのように理解力の低いモンスターなんかでもすぐに指令を理解してくれるとか、そういう方向の便利さだろう。
捕獲はモンスターをペット化するためのスキル。
今のところ戦力に困っていないので、使う予定はない。
魔物使いとしては本来ならメインのスキルだろうが、そもそも猫じゃらしがあるので俺にとっては要らないと言えば要らないスキルな気もする。
俺にとって一番つかえそうなスキルは獣癒しだろうか。
スキル名:獣癒し
分類:魔物使い・実行発動型
効果:ペットのライフを回復する
効果の通り、これはペットを回復させるスキルのようだ。
対象がペット専用だが、いわゆる回復魔法のようなもの。
今のところ相手を瞬殺してばかりなので回復の出番はなさそうだが、同等以上の相手との戦いでは活躍する機会があると思う。
というか魔法使ってみたい。
そんな俺の願望が通じてしまったのかも知れない。
俺達がコボルトと同じFランクのそのモンスターに出会ったのは、もう日の暮れかけた頃だった。