表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

05:詰んでるじゃん

 肌寒さを感じて目を覚ますと同時に、ピロリンと聞き覚えのある効果音がした。


< 【スキル:野宿】を獲得しました >


 いつの間にか寝てしまっていたらしい。

 夜は警戒しなければなどと思いながら秒で寝落ちしていた。


「……思ってたより疲れてたのかもな」


 思い出してると、急に色々ありすぎた。

 SPは減ってもすぐに全快するが、そこに精神的な疲労などは含まれていない気がする。


「うー、さむ!」


 朝の風にブルリと身震いする。

 この世界の季節感は分からないが、少なくとも夏ではないと思う。


「こんな状況で風邪でもひいたらヤバイよな。気を付けないと」


 念のためステータスを確認してみるが、特に変化はなかった。

 もし風邪をひいたとしてそれが表示されるかは分からないんだけどさ。


 ついでに寝てる間に取得したらしいスキルを確認してみる。


 取得スキル一覧

 一般:散歩・野宿


 うん、確かに増えてるな。


 スキル名:野宿

 分類:一般・常時発動型

 効果:野外での睡眠時に回復効果が上昇する。


「野宿か。単純に野外で寝たからって事だろうな」


 効果は寝ている間の疲労の回復。

 簡単に言えば寝つきが良くなったって事だろうか。

 いや、睡眠の質が上がったって考えた方が近いか。

 簡単に取得できたし、スキルの恩恵がどれほどあるかは分からないけど無いよりはマシってところだろう。


「もっと便利なスキルが欲しいんだけどな。……というかスキルを取得する条件ってなんなんだ?」


 歩き回っていれば散歩。

 野外で寝れば野宿。


 自分の行動がそのままスキル化してる感じだ。

 今のところ手に入ってるスキルはわざわざ(スキル)と呼ぶようなものでもないんだけど。


 少し考えてみよう。


 例えば、火を起こすスキルなんかもあるのだろうか。

 だとすればそれを取得するには、一度自分で火を起こしてみる必要がある……って所か。


「夜は冷えるからな、試しにキャンプファイヤーでもしてみるか」


 思い付いたが吉日で、さっそく試してみる事にする。


 立ち上がって伸びをすると、背中や腰が鈍い音を立てた。

 座ったまま寝ていたせいだろう。


 森を適当に歩き回りながら木の枝を集めた。

 相変わらず元の場所に戻ってきてしまうので迷う事はなかった。


 集めた木の枝を薪にして、さっそく火を起こしてみる。

 

「いや、火のおこし方なんて知らないわ」


 どうしたら良いか分からなかった。

 都合よくサバイバルの心得があるわけでもなく、ぼんやりとした知識しか持っていない。


「……こすって摩擦で燃やすとかだよな?」


 歴史の授業か何かで原始時代の話を聞いたハズだった。

 火は文明の始まり。

 こんな事になるなら、ちゃんと授業を聞いていれば良かったとありがちな後悔。


「確か木に窪み見たいなものをつくって、こうグリグリするんだよな……」


 太めの木を足で固定し、そこにもう一本の細めの木の枝を立て、手のひらで擦り合わせるように回転させる。

 俺は掛け声と共に全力で両腕に力を込めた。


「うおおおおおおおおおおお!」


 その結果、煙すら上がらなかった。

 回転させた場所を触るとかすかに温い。

 とてもこれから発火するとは思えない温度だった。


「うおおおおおおおおおおお!」


 発火する代わりにめちゃくちゃスタミナが減った。


「これダメなヤツだ……!」


 やり方が間違っているのか、まるで発火する気配はない。


「くそー、なんか道具でもあれば……」


 そう思いステータスを開く。


「なんか持ち物とか隠れてないのか?」


 ゲームなんかだといくらでもアイテムを所有出来たりする。

 あのゲーム脳な幼女神の加護を受けているのだから、それくらい出来ているかもしれない。


 俺が気づいていないだけでアイテムボックス的な空間にアイテムがあるんじゃないか?


 そんな俺の思惑に呼応するように、ステータスウィンドウが変化した。


 所有物一覧

 固有:神の猫じゃらし


「やってられるかー!!」


 とツッコミながら一応、取り出しを選択してみる。

 手にはいつの間にかフサフサの猫じゃらしが握られていた。


 神よ、何故これなんだ!

 マッチの一本でもあればまだ貴様を信仰できたのに……!


 他には何も所有していないらしい。

 ただ、この神の猫じゃらしはいくらでも取り出せた。

 転移した時に所持していたせいなのか、手品のようにいくらでも沸いてくるのだ。

 どうでも良いわ。


「せっかくだからなんか使えないもんかな。加工とか……」


 猫じゃらしを揺らしながらこぼした何気ない呟きにステータスが反応した。


 アイテム名:神の猫じゃらし

 分類:固有・レジェンダリー

 効果:特定の魔物を魅了する。

 加工:不可


 アイテムの詳細も見れるらしい。

 下部に、気になる単語があった。


「ん、加工……? これって、もしかして……!」


 その単語に強烈な直感が脳を貫いた。

 現状打破。

 起死回生のアイデアだと思った。


 俺は期待に胸を膨らませながら、集めていた木の枝を拾ってみる。


< 鑑定不可:知識スキルが不足しています >


 そうきたか!

 使えねーな!


 色々と試してみた結果、俺はバカだという事がわかった。

 恐らく、この世界の知識が足りていない……というか皆無なのが原因なのだと思う。


 木を見てもそれが何の木かわからない。

 それがステータスウィンドウにも繋がっているようだ。


「知識って、誰かから学ぶしかないよな……」


 加工に関してはいったん諦める。

 まずは鑑定能力を上げる必要があるが、それには知識が必要で、今この状況でそれは望めない。


 色々考えたが、結局その日は何の成果も得られなかった。


 次の日、俺は自分の体の異変に気が付いた。

 腹が減っていないのだ。

 丸二日も何も食べていないのだから腹が減らないほうがおかしいのだが、まるで空腹を感じない。


 チートのおかげで水はいくらでも飲めるのだが、それだけでここまで腹持ちが良いのは妙だ。


「これも加護のおかげなのか?」


 食べなくても生きていける体にされてしまったのかも知れない。

 この疑問はすぐに解決した。


 翌日、空腹を感じたからだ。

 試しに水を飲まないでいた結果だった。

 水を飲んだだけで飢えが収まるのを感じた。


「もしかして水も食料扱いされてる……?」


 そうとしか思えなかった。

 空腹の概念を持ち込んだものの食材のくくりがアバウドでチープになってしまったゲームみたいな設定だ。

 いや、例えがおかしいな。

 多分あのゲーム脳(神)の影響だろう。


 そろそろやることも無くなってきたので試しに食材を探してみたが、何もなかった。

 この森に生えているのは巨大な針葉樹ばかりで、食べられそうな木の実は見つからなかった。

 都合よく地面にキノコが生えていたりもしない。


「なにこれ、詰んでるじゃん」


 困った。

 やる事がない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ