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01:あの世を駆け回るだけの簡単なお仕事

「というわけで、お主は死んでしまいましたとさ」

「……マジすか」

「うん。マジ、マジだよ」


 俺は気がついたら知らない家に居た。

 ソファの横でテレビゲームをしながら軽い感じで頷いているのは、なにやら俺の居た世界の神様らしい。


「我は女神アルちゃんだ」


 いきなりそんな自己紹介をされ、そして俺は死んだと宣言された。

 アルちゃんは見た目は可愛らしいギャル系の幼女だが、実年齢は千を超えているらしく、人類を誕生から見守ってきた神族の一人だという。


「これから俺、どうなるんですか?」


 この知らない部屋はこの世とあの世の境界にあるアルちゃんの固有世界らしい。

 そして今の俺は、いわゆる魂だけの存在という状態なんだとか。


 そんな事を言われても正直「だから何?」って感じだ。


 俺は、死後の世界の事なんて難しい事はあまり考えた事がない。

 人間が死んだ後、その魂がどこへ行くかなんて想像もできなかった。


(というか、魂って本当にあったんだな)


 そんな風にぼんやり考えていると、アルちゃんは丸いセンベイを齧りながら質問に答えてくれた。

 ミニスカのままソファの上であぐらをかいており、水玉パンツがこんにちはしているが気にする様子もない。


「今回の出来事は、まぁ事故みたいな物だ。保証が効くから安心して良いぞ」


 うん。

 意味が分からない。


「事故……? 保証……?」

「ちょっとしたケンカだ。神々のな。お前はそれに巻き込まれた」


 なるほど。

 つまり、神々がケンカすると空からトラックが降ってくるらしい。


 なんだそれ。


 俺はトラックに潰さて死んだ。

 轢かれたのではなく、文字通り潰された。

 突然、空から落ちてきたトラックによって。

 神々のケンカとやらでそうなったらしいが、全くもって意味不明だ。


 どうしてそうなった?


「保証ってのは、アレだ。簡単に言えば生き返らせてやるって事だ」

「……マジすか」

「だからマジだって。ただ、勘違いしてもらっては困るからな」


 アルちゃんはオレンジ色のジュースをストローでチューチューしながら、俺に向きなおってそう釘を刺してきた。

 ずいっと顔を寄せてきたとき前かがみになったせいで、ゆったりとしたシャツの胸元からピンクの突起がこんにちはしているが、はやり気にする様子はない。

 そのままいくつかの規則(ルール)を俺に教えてくれた。


「死は誰にでも平等に訪れるものだ。そして絶対的なもの。例えその理由が神にあったとしても、それが簡単に覆ることはない。つまり、生き返るという事はかなりの特例なのだよ」


 そのために規則(ルール)があるらしい。

 簡単に言えば、自分が生き返るに値する存在だと証明する必要があるという。


 つまり、俺はこれからなんらかの試練を受ける必要がある。

 試練は人によって違うらしいが、そう難しいものではないらしい。


「担当の神が認めれば、その神からの加護も与えられるからな。自分で言うのもなんだが、我はそこそこ強い。それに器が大きいからな。加護でもなんでもくれてやろう! ワハハ! 大船に乗った気持ちで行くが良いぞ」

 

 試練を乗り越える事が出来た場合、俺はトラックを回避したか、あるいはそもそもトラックが落ちてこなかったか、そんな状況から人生をやり直す事になるらしい。

 つまり、死そのものがなかったことになるようだ。

 

「分かりました。それで、その試練っていうのは……?」

「うむ。お主の試練は……これじゃな」


 アルちゃんがソファに埋もれていたリモコンを取り出し、巨大なテレビ画面に向けた。


『 【緊急クエスト】転生の試練:迷い猫又の捜索

 難易度:D

 依頼主:閻魔大王の第二秘書アムネ


 < 依頼内容 >

 今日分のノルマとして回収されたハズの迷い猫又が一匹、まだ地獄の待合室に辿り着いてないみたいなんです。

 このままじゃノルマ未達成でまた閻魔様に怒られちゃう!

 せっかく死神さん達が頑張ってくれたのに……グスン。

 ハンターさん、もしよければ迷い猫又を探して出してくれませんか?

 私は事務処理に追われて持ち場を離れられなくて……

 本日中に、どうかよろしくお願いしますね!


 メインターゲット:迷い猫又の捕獲

 報酬 :現世への帰還 』


 あれ、なんかどっかで見たことのある雰囲気だけど。

 なにこれ。試練ってこんなゲーム感覚なの?


「見ての通りだな。お主は運がいいな。もしくは生前に猫に関する善行でもあったか。難易度Dとは、初心者クエストレベルよ。あの世を駆け回るだけの簡単なお仕事という奴だな」

「そうなんですか?」

「うむ。あの世もこの世も大差ないぞ? 最近は都会化も進んで居るしな。高度情報化社会って奴だよ」

「そういうものなんですね……」


 良く分からないが元の世界と似ているなら確かに楽そうだ。

 ターゲットは元は野良猫らしいから、たぶん裏路地とか? とんな所にいるんじゃないかと思う。


「それに、猫又といってもただの猫の霊だ。ほれ、この神の猫じゃらしを授けるから、見つけたらこれで手なずけるが良いぞ。あ、天使にだけは気を付けておけよ。お主自身が迷い霊と間違えされて浄化されるだろうからな。奴らは知性が足りておらんからな。見境が無い。浄化されると魂ごと消滅するし、そうなると蘇生どころではないからな(笑)」

「え?」

「(笑)」


 いや、(笑)じゃねぇよ!


「じゃ、幸運を祈るぞ」

「え? ちょっと待って、もっと詳しい説明を――」


 アルちゃんは説明もそこまでに、俺にグッと親指を立ててきた。


 途端にパカンとソファが消えた。

 俺は真っ白な空間を真っ逆さまに落ちていく。


 そこで俺の意識は途絶えた。

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