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#22

吉田名言集



「なんか今日は畑に釣り糸たらしたら魚釣れそうな気がする! 根拠ねぇけどすげーそんな気がする! 多分鯛とか釣れるわ」





それならばと更なる威力を増した雷撃を放つ十和田だが、ことごとく伊藤に無力化されていた。



「いやー、誰か知らんけど助かったわー」


「いやいや吉田、あれ、さっき寄ったガソスタの店員だよあの人?

話の流れで気付こうぜ?」


「えっ、でも声違うやん」


「多分のど飴でも舐めたんだろ。異世界なんだからスゲー効能あるのど飴でもあったんだって多分」


「ふーん。それなのにわざわざ助けてくれるなんて、よっぽどお人好しなんじゃろうな。十和田って奴以外は完全にノビてヨーヨーも解けとる事じゃし、後は放っといて逃げよーで」


こいつ…!

見ず知らずの俺たちを助けてくれてる伊藤サンにまるで感謝していないどころか、ナチュラルに逃げるとか言い出しよったぞ!?

同じ男とは思えないクズ野郎だ。俺はお前とは違う。我が身を挺して戦う女を置いて逃げるなんて、そんな事は絶対にしない!


「そうだなチャンスだ逃げよう!」


俺はね。俺は逃げたくなかったよ?

でもほらー? 吉田が逃げたいって言ってっからさー。俺は悪くねーよ。悪いのは政治と吉田とハンドスピナーだよ。



吉田は車になった。


俺は車に乗り込んだ。


車は発進した。


気分は俺は車にウーハーを飛び出せハイウェイだった(久しぶりだゼ)。


逃げた。


逃げまくった。


追いつかれた。


正座させられた。


吉田は車モードのままだったから俺だけ正座させられた。


吉田ずるい。


「オンナ残して逃げるとか情けない野郎どもがァ!」!?

「心配で様子見に来たのに…見損なったっス!」!?


十和田と伊藤二人掛かりで説教された。


お前ら仲いいの? 悪いの?


「そんな事よりお前ら勝負してたんじゃねーの?」


て率直に訊いたら、「今はそんな"話"して"ねェゾ"!!」!?

「話を逸らさないでくれっス!」!?


ってめんどくさい事言い出してダメだった。


そのまま流れで近くの離れ街に拉致られて復活したエルフ珍走団ともども居酒屋に連れてかれた。


「ひゅー! エルフ美人をはべらしてモテモテじゃなー!」


って吉田が冷やかしてきやがったから「いやお前も駐車場に居ないで人間モードで混ざれよ頼むから」


ってお願いしたのに頑なに来なかった。


吉田の勘が鬼門だと告げていたのだろう。


十和田と伊藤はいつの間にか打ち解けていて、俺は彼女たちの会話に混ざる事も出来ずポツンとしてた。


惨めだった。


唐揚げが来たからレモン汁かけたら怒られた。


惨めだった。


焼き鳥が来たから串から外してたら怒られた。


惨めだった。


異世界クソだと思った。


吉田の勘は正しかった。


でも酒メニュー見たら日本でも中々手に入らないプレミアムな焼酎があってビビった。


もちろん飲んだ。


琥珀色の液体にまるでウイスキーのような味と香りが特徴のその焼酎は、俺の百年の孤独を癒してくれた。


異世界サイコーだった。


考えてみれば会話に混ざれなくてもエルフ美女(ただしヤンキーメイク)を眺めながら美酒に酔いしれるのは中々の贅沢なのだ。


吉田ざまぁと思った。


気分が良くなった俺は「今夜は俺の奢りだぁああああ!!!」

とか口走っていた。


「きゃー!」「すごーい!」「すてきー!」と歓声が上がったけどそれきりだった。


相変わらずぼっち酒だった。


なのにここの代金は俺が支払うのかと思うと涙がこみ上げてきた。


惨めだった。


夜も更けてさあ会計ってなったから、俺は断腸の思いでクレジットカードを差し出した。



「あれ……? すみませんお客さん。このカード使えないみたいですね」




なん……だと……?

極めてどうでもいい裏設定


・伊藤が舐めたのど飴は龍角散のど飴

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