#13
吉田名言集
「パイナップル、パイナポー。アップル、アッポー。リンゴ、リンポー」
俺たちの叫びに店中の視線が集まるが、そんなことはどうでもいい。
エルフだ!
エルフだぞ!
「エルフ!!」
「エルフ!!」
「エールーフ!!」
「エールーフ!!」
「エルフッ! エルフッ!」
「エルフッ! エルフッ!」
「「うおおおおおおおおおお!!!!!」」
叫ばずにはいられない!
エルフ、それは男のロマン!
ロマン指数はミヤマクワガタの約300倍!(当社比)
「アンタぁぁあ!! 隣の席のアンタよぉぉぉおおおおー!!!
アンタ今、エルフって言ったよなああああああ!!!?」
「は、はははい言いましたが……?」
「ちょっとー、マー君この人達ヤバイよ関わらないほうがいいってー逃げよ……」
「そうはさせるかァ!! 吉田ァ!!」
「応ッ!」
言うが早いか吉田は両手を広げて通せんぼ。
「な、なんだ君達は!? 僕らに何の用があるってんだ!」
「くくく、なあに質問に答えてくれればそれでいいんだ。
さっきアンタが言ったエルフってのは、エルフの事だよな?」
「……それはそうだが?」
「ヤバイよー。こいつら絶対危ないクスリやってるよー。もしくは無知な異世界人かだよー」
「異世界人の方だよ!
そのエルフってのは、こう、耳がとんがってて、金髪美人で、森を愛する系で、魔法が得意で、耳が性感帯になってる、あのエルフだよな!!?」
「あ、ああ。耳が性感帯かどうかは知らんが、トールキン以前の小さい妖精の総称ではなく、ちゃんとしたロードス島的な種族のことだ」
「聞いたか吉田!!」
「ああ! この両の耳でしかと聞いた!
それで、エルフはどこに居るんか教えろォ!!」
相手の首根っこを掴んで詰め寄る吉田。目がマジだ。
どんだけ必死なんだよ引くわ。いいぞもっとやれ!!
「こ、ここから南に行ったエルフの森に……」
「南にあるエルフの森じゃな!! よっしゃ行くで宮崎君!」
「あったりめーよォ!!」
支払いを華麗にカードで済まし、店員や周りの客から「二度と来ないでくれ!」という罵倒を背に店を出る!
「出発すんぞ吉田ァ!!」
「車ァァア!!」
ボフンッ。
吉田の雄叫びに煙と共に車が出現する。
バタンバタンと乗り込む俺たち!
「シートベルトちゃんとしとけーよ!」
「ガッテン!」
おい吉田。
お前いま普通に車出して人のまま運転席乗り込んでハンドル握ってるけど、どうなってんの?
それもアリなの?
いいの? 人外キャラが人型に戻ると人気落ちる法則知らないの?
『トランスカー』のトランス要素がゼロなの気付いてる?
気付いてねーんだろーなー。馬鹿だなー。
「大変じゃ! 南ってどっちなん!?」
「あ、考えてみればコッチの東西南北の見方とかわかんねぇわ」
誰かに聞くか?
いや、今は一分一秒が惜しい。エルフが俺たちを待っているんだ!
「運転は吉田だ! お前に任せる!」
「よっしゃァ!!」
ズギャギャギャギャっと
アクセルターンして軽バンは走り出す!
大丈夫。吉田の勘はけっこう当たる。
車はすぐに町の外れまでたどり着いた。
「あっかん! ここだけ町周りの柵が間隔狭いから車で通れんで!? 迂回せんと!」
「構うことはねぇ! 突っ切れぇ!!!」
「その言葉を待っとったァァ!!!」
ガシャァァアアーン!!
木の柵を悠々とぶち壊して町を飛び出す。
なんなのこの車の頑丈さ、戦車なの……?




