帰り道
夕日に照らされた僕の影が、帰り道に細長く伸びる。僕はそれを道標に歩く。
君はまだ覚えているかな。
小学校の近くの長い坂を自転車で一緒に登ったこと。自動販売機で買ったペットボトルを籠にいれて、汗を拭いながら登った。
特に意味はないけど、その頂上から田園の景色を一緒に見た。そして他愛の無いことを話して笑っていた。
女の子を好きになったこと。何か伝えたい漠然とした不安と期待が渦巻いて、けれども何故か伝えてはならないような気がして、僕は自分とばかり秘密を交わしあう。
クラスで一番かっこよかったアイツと付き合うことになった彼女は、屈託無く笑った。
自分が嫌いになったこと。人と見比べる必要は無いが、少なからず理想とはかけ離れていた。その責任を人になすりつけて、また自分が嫌いになった。
いっそ消えてしまいたいと思った。
だんだん皆離れ離れになっていったこと。
とうとう僕は道を選んで、歩むべき道を歩みだした。それでも消えないものはあって、僕はそれに少し泣いて。
それも明日には全て持っていけない。
夕日に照らされた僕の影が、帰り道に細長く伸びる。僕はそれを道標に歩く。
悲しい記憶が薄れていくのはいいけど、楽しかったことまで薄れていくとは思わなかった。
零した涙が土に染みて、その上で土に還るまで。
それまで僕はもう歩き慣れたこの道を歩き続ける。
夕日に照らされた僕の悲しい影が、いつもの道に細長く伸びる。僕はそれをなんとなく見てる。
僕等はずっと、このままだ。