某大魔王の兄 2
「ここが人間界……」
「僕らにぴったりな雰囲気だ!!」
僕は父上からカマルケルの付き添いと人間界の偵察を命じられた。
「兄さんは街でなにか旨いやつを買ってくるから、メイドの目を盗んで外に出たらだめだぞー」
「わかった」
ああ、これ外に出るパターンだ。何となくそんな気がする。
「こんにちは」
「ああ、新入りかい?」
あれ、村人は余所者を石を投げて追い出すと本で読んだのに普通だ。
「都会の男はイケメンだなぁ~」
いなかっぺな少女がガン見してくる。
城じゃ誰も相手にしてくれなかったのに、こんなのはじめて!!
「きゃあああああ!」
さっきまでと違う悲鳴が聞こえた。
「なにごとだい!?」
村人達が大騒ぎで口々に状況を把握しあった。
「隣国の黒騎士が、そこの男殺して娘っ子を連れてったさ!!」
「なんだってそれは大変だ。助けにいかないと!!」
「あ、兄ちゃん!?」
「アブねえぞ!」
村人が止めるが、これから世話になる村でゴタゴタなんて見過ごせない。
「まてー!」
「なぁんだこいつ?」
「……男に用はない」
「たすけてぇ!!」
黒鎧の男と女が村のパッとしないモブ顔の少女をとらえていた。
「ねぇシャオ……あいつ殺していい?」
「ダメ、イケメンは殺すなとエンプレスから禁止されてる」
僕は人間から見るとイケメンなのか―――
「へへ……」
魔族からは雑魚野郎としか見られてなかったから嬉しいな。
「うわっなんか、あいつニヤニヤしてるよ!!」
「ラージ、あんなの無視して帰りましょう」
「そうはいかない!!」