5/12
某大魔王の兄の過去 一話カルラケル
――東西南北の魔王の頂点にして、中央たる大魔王の住む暗黒魔城アデラウケスは地下にあった。
――頂点なのに地下にあるという事はスルーである。
「ルモタゲル、病弱な弟カマルケルがいるのだ。お前はいざとなったら弟がいるし~という逃げ道はない。お前が大魔王になるしかないんだ」
大魔王であるヒマタゲルはおぞましいオーラで威圧した。
「あ……綺麗な鳥さんだ」
弟のカマルケルはぼんやりと空をみる。
「まってくれ蝶々さん!」
兄ルモタゲルは毒々しい蛾をおいかけて庭へ走る。
「おまえたち言ってる側から!!」
大魔王の頭痛など彼の視界にはなかった。
「ごめん兄さん、俺がこんなだから虫も殺せない兄さんが大魔王になることになってしまって」
「気にするなよ、そういえばカマルケル、父上が療養に人間界の森へ行けばって言ってたんだ」
人間界は魔界より空気が綺麗だ。
「人間……俺達をいじめるのかな?」
「人間は魔族より弱いんだからいじめないよ」
「じゃあ俺達が人間いじめるの?」
「それも、大戦じゃないからしない療養中は仲良くね」
「療養中は仲良くか……」