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新人教師の正体は?  作者: 瀧野憂
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MaIna 一話 出会い

ここはプロテキタ王国、俺はこの国の下級貴族に生まれた。

本来は家を継ぐはずだったが、大蛇に噛まれても死なないと言う騎士団長カーデストに憧れて、屋敷を飛び出した俺は次男に全てを丸投げし、騎士団に入った。

それから一週間、正式な騎士団員として、騎士団長やら偉い方面から呼び出しを貰った。


案外俺と年の近いやつもいれば、小さな女の子もいる。


珍しい金髪の男が、一番真ん中で、偉いそうな席にいる。

「私はカーデストに代わり、騎士団長となったフェレイド・カルチャスだ…貴様の名は?」

ギロりと睨み付けられた。

感じ悪い、いかにも真面目で冗談通じなそうだな。


それにしてもカーデストさん、騎士辞めたのか…。「ドルフ=デルネスレクです」

「男爵家か…」

なんで名乗っただけでわかるんだ。


不本意だが俺は貴族だ。

だがそいつの家が貴族だろうとなんだろうと関係ないだろ。

貴族とか、平民とかそんな面倒な呼び方は嫌いだ。


「俺、騎士団辞めます」

「は?」

「え?」

赤毛の青年と、桃髪の少女が唖然として俺を見た。


「ほう…面白いことを言う…」

しまったこいつは上流貴族だろうから、権力を使って俺の家に何かするつもりに違いない。

どう弁解したもんか、悩んでいると、城の通路から忙しない足音がした。


「大変です!!」

兵士が勢いよくドアを開いた。


「なんだ」

「魔王軍が現れました!!」

魔王…それはかつて騎士団長カーデストが倒したはずじゃないか、なぜそれが10年経った今出てくるんだ。


「貴様の沙汰は後だ」

「ほら、君も出撃するぞ」

赤毛の青年が手を叩いて騎士達をまとめる。

「だから俺は…」

「つべこべ仰らないで!!」

桃髪の少女はキリリとした顔で俺を叱咤した。


現場に行くと、村が焼かれていた。


悲鳴が聞こえて、俺は声がする方向に単独で駆けつけた。

金髪の少女が、悪魔のような怪物に迫られていた。


俺は怪物の翼を斬りつける。


そのすきに金髪の少女の手をひいて、騎士団のところへ連れていった。


「あ…ありがとうございます騎士様」

周りがこんなときにニヤニヤしている。

なんだろうと思って、手を握りっぱなしなことに気がつき少女の手をはなした。


「どうやら生き残ったのは彼女だけのようだ」


魔王軍の放った火は小さな村をあっと言う間に黒炭へと変貌させた。


「君、名前は?家族はどうしたの?」

赤毛の青年が訪ねる。


「私はエレアです…気がついたらそこにいて

覚えているのはそれだけなんです

きっと家族はいません」

少女はショックか何かで記憶をなくしたらしい。


「困ったな…魔王軍のこともあるし、エレアさんのことは医者に任せよう」

「間ってください!

私はこの方と一緒にいたいです」

少女は俺の腕に抱きついた。


「ははっスミにおけないなー」

「女性が人前で男性に抱きつくなんて…ふしだらですわ!!」


「くだらん…帰還するぞ」

「はい」

桃髪の少女はむくれたままさっさと行ってしまった。


「悪いけどさ、俺は騎士じゃなくなるんだよ」

憧れのカーデスト団長もいないことだし、俺は騎士団を辞めるんだ。

頼りにしてくれたエレアには悪いが。


「何をしているんだ早く来たまえ」

てっきり先に行ったかと思っていたら、皆向うで待っていた。


そうか、皆魔王軍と戦う戦力が足りないから俺に抜けられたら困るってことか。


「…エレア」

「はい?」

「お前の記憶が戻るのと魔王軍を倒すのどっちが早いだろうな」


魔王軍を倒すまで、俺は騎士になることにした。



■■


「親睦を深めるってことで!歓迎パーティーを開いたよ」


ここは城内の大広間―――――。


「よくお城の中を貸しきれましたね…」

昼間だし、夜会もない時間だからだろうか。


エレアは飾り付けやシャンデリアをキョロキョロながめて驚いている。


「頼んだらあっさりOK貰ったんだ」

こいつは赤毛の…多分団長の次に偉い奴だ。


「へえ…騎士が一人入ったくらいでパーティー会場にしてくれるなんて寛大な王様だな…」



「まったくだ」


後から来たフェレイド。皆が振り向き注目する。


「全員揃ったみたいだね…そうだ、名前をまだ名乗ってなかったね。

僕はフォース=ヒーラス=プロテキタだ」


名字がプロテキタ…王様じゃないとすりゃこの人は王子なのか!?


「ええっもしかして王子様ですか!?」

「うん」


どうりで会場を貸しきれたわけだ。


「改めて歓迎するよドルフ君」

「どうも」

周りからニコニコ見られている。なんか照れるな。


「お前は名前なんだっけ」

「あ…私はディア・ミレニアム・デロッサリデアです」

「ディアな。覚えとくよ」


さて、料理を食うか。



「失礼する」

何が気に入らないのか、フェレイドは不機嫌そうな顔で、食事にまったく手をつけずに会場を去った。


飯が気に入らないのだろうか…さすがに王族のいる城で出す飯だ。

あいつの口には合わないって事はないだろう。


「美味いのに勿体ないよな」

「そうですね!」


エレアは生ハムばかりを食べている。


「野菜も食えよ」

「そういうドルフさんはお魚だけとって無いじゃないですかー」

「バレたか」

―――


「そういえばディアは明日で13だったね。一日早いけどおめでとう」

「ありがとうございますフォース副団長」


ディアはフォースに会釈すると、会場を後にした。

―――――


皆と食事など、自分にはふさわしくない。

そう思った私はパーティーを抜けた。


「カルチャス団長」

「ディアか」


なぜ、彼女はここに居るのだろう。

――――社交辞令のようなものか。



「常々気になっていたのですが、食事がお嫌いですか?」


なぜそう考えられたのか、見当もつかない。

第一食事が嫌い、と言うのは語弊があるのではないだろうか。

人間は食べなければ死ぬのだから。


「食事が嫌いなわけではない」

「では仲間といるのが嫌ですか」


去り際にそう言われ、否定しようと振り向く。

しかし、もう彼女の姿はなかった。

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