2話.路地裏に入るとたまに違う世界に行けるんじゃないかみたいないつもと違った気分になるときあるよね
「おい、ばぁさん!ここら辺にフードかぶったエルフいなかったか!?」
「おしえて~」
時間がたてばそれだけ見つからなくなるから小走りしながら花屋のばぁさんにそう聞いた。
ちなみにこのばぁさんで6人目だ。
「おやおや。どうしたんだい?そんなにあわてて」
「財布をすられたんだ!中身はいいんだけど、3万円もするストラップがついていてそれだけは絶対に取り返さなきゃならないんだ!」
余計なことは聞かないで知ってるか知らないかだけ答えてくれよ!!
「確か2分ほど前にそっちの路地裏に入って行ったと思うよ。あんなところに入る人間なんてそうそういないし覚えてるよ」
それを聞いてすぐに路地裏へ行く
「そうか!サンキューばぁさん」
「ありがとばっちゃ」
もちろん礼の言葉はわすれずにな。
*
路地裏に入りしばらく進むするとほこりのせいか周りをみずらくなってきた。
しかも、どれだけあるいてもまっすぐな道が続いている。さすがに逆側の道に出ていてもおかしくはない。だがいつまでたっても同じような道が続くだけだ。
それを、さすがに不信に思ったのかクラウスも怪訝そうな顔をしている。
「なぁ…これは…」
俺は横目でクラウスを見つつ警戒する。
「魔力を感じるね。魔法が得意なエルフならこのくらいできるだろうね~」
魔法は魔式と呼ばれる計算式をたてることにより、人以外の種族は生まれつき体内に持っている
魔力を具現化させて、炎や氷を発生させたり幻をみせたり認識をずらしたりをすることができる。
だが、魔法を使うには魔式が重要だからそれを崩されるとすぐに使えなくなる。
要するに、今クラウスがやろうとしてることは、相手の魔法を崩すことだ。
ちなみにそうやって魔法を崩すことを魔力無効果という。
「それなりに魔法をうまいことあつかえるってことは、べつにすりなんてしなくても暮らしていけんじゃねぇのかよ」
そうだよ。今この時代、なら昔と違って力を持ってたり魔法さえ使えれば働くどころには困らないはずだ…
特に、こんな幻魔法を使えるならどっかの博物館とかの警備でもして働いていけそうなものだ。
「HAHAHAまぁ、考えてもよくわかんないしさくっとこの幻魔法なんとかして、さっきのエルフ探しちゃお~」
「結局ノリは軽いんだな」
まぁいいけどさ…。
「それで、この幻魔法どうにかなるのか?」
頭を掻きながらそれを聞いてみる。
「まぁ~なんとかなるよ。っていうか、なんとかするよ」
こういうときは頼もしいのになぁ~口調と行動のせいでバカにしかみえねぇんだよな。
すぐに変なもん買ってくるし、頼むぜまったく…。
「まぁそういうなら頼んだ」
「この幻魔法の魔式をとくからしばらくまってね~」
そういうとクラウスは顔を下げて集中する。すると、数秒立つとすぐに顔をあげた。
それを見て、終わったのだと思ったのだが
「この幻魔法、重ねがけされてるね~」
重ねがけはエルフだけができる魔式による魔法の掛け算みたいなものだ。
魔式を重ねれば重ねるほど、その魔法は強くなる。
その上重ねられてる分だけ崩す必要が出てくる魔式が多くなるのだから、かなりやっかいなものだ。
「めんどくさいな…。ちなみにいくつ重ねがけされてんだ?」
なんとなく聞いてみる。
「ん?え~っとたぶん10個かな」
クラウスは両手の指で10をアピールしてくる。
「10!?」
重ねがけを10もだと!?
普通魔法を重ねられても2,3個が限界だろ!
重ねるとか掛け算みたいだとか言うと簡単そうに思えるだろうが、全然簡単じゃない。
それをを成功させるには、たとえば151745×573315みたいな複雑な計算を
一瞬でする必要があるんだ。
しかも、重ねる数が多ければ多いほどその数字の桁が多くなり、さらにかけるものも多くなる。
だから、10も重ねることができるのは相当、上位のエルフしかありえないはずなのだが…
「そんだけ重ねることができるなら、相当な高待遇の仕事でもできるだろし、なんですりなんてやってんだよ」
「普通ならそうなんだよねぇ~ほんとうになんでだろうね~」
力があれば権力が得られるような世界なのにこれは変だ。
あきらかに普通じゃないし何かかかわるのが嫌になってきた。
でも、絡まなきゃ3万が…
「うぅぅぅ~~」
「なにうなってんの~?ほら魔式は崩したから早くしてよ」
「え?あ、ちょ人が迷ってるときに…ってか早ぇなんだその早さ!?」
10個も重ねられてたんだから相当な時間食うはずだろ!まだ5分くらいしかたってねぇぞ!
すなおに驚いてテンパってると
「俺、種族的にエルフより、幻魔法は得意だからね~」
とドヤ顔で言われた。とりあえずそのうざったいドヤ顔はスルーするが、にしてもこれはしても早すぎだろ。
「まぁ難しいことは考えないで、さっさと追いかけよ~結構足止めくらっちゃったからね~」
「それもそうだな…」
いろいろと言いたいこともあったけど、とりあえず俺たちはエルフを追いかけることを最優先として、そのまま路地裏を進んでいった。