20話
「まず最初に言っておく.魔銃を使うなよファルシオン」
「お前達が馬鹿な真似をしなければな.…それとそう言うお前もだ,ジュード」
2人は魔銃をベルトに刺す.
「それで,ちょうどいい,と言ったな.どういうことだ?」
「話し合おう.魔銃の扱いについて.俺たちは上手くやれるはずだ」
「話し合うだと…」
「ヴィンセント,その前に聞きたいことがある」
「ん?(俺は名乗ったかな?)」
ヴィンセントはジュードの方を向く.
「お前は魔銃をどうするつもりだ?」
「その答えは君たちの話を聞いてからだ」
「お前以外の考えは互いに知っている.いい考えが思い浮かぶとしたら先に多くの人数の方が先の方がいいだろう?」
「…….仕方ない.俺の立場は,余計な争いを生みたくないというものだ.そうなるならどの形でもいい」
「どの形でも…だと?」
「いや,それは言い過ぎたか.よほど嫌なものでなければいいよ.それで,君らの考えはどうなんだ?」
「じゃあ俺が説明しよう」
「ジュードか,嘘偽りのないようにな」
「誤解を生むような言い方も許さん」
「CGが金になることに使おうというもの,俺たちが今の技術では避けられない危険を回避するのに使おうというもの,SCが俺たちよりも高次元な危険回避に使おうというもの.CGが言っていることは言い換えれば,今を生きる人の役に立つには,価値が広く認められているものを増やしたり質を上げるということ.俺たちが,隕石のような確率が低いから後回しにされるものに使おうというもの.SCは人間より上位の生物や理を変えようというもの」
「ま,大体合っている.言葉の選び身内びいきだが…」
「フン…」
「なるほど.じゃあ順番に使えばいいじゃないか」
「そうはいかない.何かを改変すれば次から次へと対応に追われる.他のことに使っている余裕があるかは不明だ」
「SC,ガーディアンズは文明の破壊者を倒すことには同意だ」
「なんだそれは?」
「…….巨大な生物.例えるなら,夜寝て朝起きると口の中の細菌は繁殖している.朝,歯磨きするとその細菌の多くが死ぬ.人間をその細菌に例えると,歯磨きする人間がその文明の破壊者だ.いや,これじゃまるで,邪魔者みたいだな.違う,アリクイのようなものだ.ある程度,巣が出来てから食べに来る.そういうもの」
「対抗とはどういうことだ?殺すのか?」
「そうだ」
「大丈夫なのか?」
「不治の病を治せるようになったら,人は長生きして,別の新しい病を患うようになったじゃないか?それと同じ.対策を繰り返して上に進む.それが我々の考えだ」
「なるほどね.まとめてみると,資金調達は価値を認めてくれる人に頼る.つまり身近な脅威とは無縁の地位に居る人たちに頼ればいいんじゃないかな?いや,魔銃で資金どころか必要なものを生産してしまえば…」
「いや,世界と関らないで独自の世界を作るのは望んでいない.魔銃で完成したサイクルを作るには反対だ」
「魔銃を巡る争いにはもう1つある.俺たちは互いに相手に魔銃を使わせてはならないと考えている.危なっかしいから」
「ギルベルトの言う通りだ.でも,争って全滅というのも避けたい.手を取り合って1つの組織になろう」
「ジュード正気?そんなの聞いてない!」
「形式だけは1つにして,主導権を握れると考えているのだろうが,そうはいかない」
「そうはいかないだと?互いに身内びいきの組織.1つの組織になって競争して適正化すればマシになる.その上で主導権が握れたのなら問題ないのでは?」
「それはまさしく俺が思っていたことだ.どこも人材が不足.ジュードの提案,いいと思うんだけど」
「ヴィンス,それは無理.そんな面倒なことをしなくても,βの力を弱らせた上で,魔銃の力で思い通りに書き換えてしまえばいいのだから」
「駄目だ!それはしてはいけない!」
「びっくりした.ジュード,君はそんな声が出せたんだ」
「まだ使いこなすには足りて無いんだ」
「技術が?それとも人材か?」
「いや,新しい道徳が要る」
「道徳だと?」
「そう.例えば,医療が発達すると,どこからが生命で,どこまでが生命じゃないか,という議論が起きる.受精卵を医療に利用するのは生命倫理に反するか?脳死は死か?など.そこで納得できる道徳が必要になるのだ.それと同じことが言える.魔銃を使う上で新しい道徳が要る.すぐに使うのではなく,十分に議論されてから使うべきだ」
「一理あるが,文明の破壊者を倒すことは邪魔させない」
「それは従おう.だから,その次は話合いに応じてくれ」
「取引か.いいだろう.だがこれで君たちも責任を負う」
「分かっている」
「だが,借りが出来たとしても,同じ組織になるのは嫌だね.お前達と私達は敵同士.仲良くなどなれない」
「それが何だ?仲良くなる必要はない.大規模組織とはそういうもの」
「いや,しかし…,寝首をかかれると困る」
「決まりを作ればいい,そのようなことができない決まりを」
「面倒だな…知っている者だけならそんな労力に費やさなくて済む
「CGはどうする?」
「随分と恨みはあるが…止むを得ない….以前,お前は私達の下につくことを断ったな.一体誰をトップにするつもりだ?聞かないことにはうんともすんとも言えない」
「それは…,後で….まずは争いの芽を摘むことが先…」
「……」
「まあ,仕方ない.そう簡単に答えが出たら苦労はしない.少し待ってやってくれ」
「ヴィンセントに感謝することだなジュード」
「…助かった」
「とにかく先に文明の破壊者を潰してくる.後でいいな」
「そうはいかない」
部屋の奥から男が姿を現す.
「お前はオーギュスト…どうやってここに…」
「使い魔の力と君らの作った道を使って.ま,そんなことはどうでもいい.困るなあ,アレを壊されちゃ」
「知っているのか…」
「ああ.それよりもお前達は戦う気がないのか?」
「邪魔するならお前から」
「違う…,お前達同士でだ.敵同士だったじゃないか?どうして止めてしまうんだ?いや,止められると思っているんだ?」
「お前には関係のないことだ.消えろ」
「もう遅い.(休眠中とはいえ奴らのネットワークの中枢.使い魔のパワーアップは済んだ)」
オーギュストは使い魔を呼び出す.カゴサミの咆哮で魔銃は光を失って沈黙する.
「奴を倒す」
ファルシオンたちは使い魔を出す.ガーディアンズとCGもつられて呼び出す.
オーギュストは左手をピストル状にしてファルシオンに向ける.
「バーン」
「…何の真似だ?」
「後ろから刺されないように気をつけることだな」
「その手に乗るか.かかれ」
「そう言うと思ったよ」
アンバーの目の模様が光り,周囲に幻覚を見せる.
「フレイル!何のつもりだ?」
「こういうつもりさ」
フレイルは飛び跳ねてオーギュストの前に立ってファルシオンたちに向けて剣を構える.
「フレイル,なぜそいつの味方をする?裏切るのか?」
「面白そうだから.ファルシオン,お前は言っていたはずだ.組織を抜けたいときはいつ抜けてもいいと.今抜けたところだ」
「そんな常識知らずがSCに居るとは思わなかった.だからあのルールを口にした…」
「それは残念だったな」
「どうしてお前達はそんな簡単に裏切ることができるんだ?あんなに仲が良さそうだったのに…」
「ジュード,君は勘違いをしている.仲がいいとか悪いとかそういうレベルの話ではない.俺にとっては,終わりの日に死ぬ奴は今死んでもその時死んでも大差はない.その程度の存在だ.裏切り位で何を戸惑うことがある?」
「やはり,お前達はかからないのか.魔銃は完全に沈黙したわけではないようだ」
「ちょうど一対一.やや物足りないが,良しとするか」
竜の尻尾でフレイルはなぎ払われる.
「いや,ここにもう1人…」
「ギルベルト,さすがだな….フレイル,君はファルシオンの相手をしろ.俺がこの2人の相手をする」
「ギルベルト,変なことを言うかもしれないが…力を貸してくれ」
「本当に変だな.当然だ」
カゴサミとドラコは回転しつつ体重をかけてぶつかりあい,周囲に衝撃波が飛ぶ.シェイドは姿勢を低くして前にバリアを出して岩や砂から身を守る.カゴサミは片方の頭でドラコの首に噛み付く.ドラコは体を捻ってカゴサミを下にして地面で磨り潰すように回る.カゴサミはドラコを離すと横に転がり,もう1つの口から炎を吐く.シェイドはカゴサミの横顔に無数の氷弾をぶつけて向きを変える.ドラコは翼を広げて飛び上がって前転しつつ尻尾をカゴサミに叩きつけ,飛び上がって後ろに下がる.カゴサミが飛びかかろうと体を縮めた瞬間に影から闇の手が伸びて右半身を抑えて横に転ばせる.ドラコとシェイドは続けざまに攻撃してカゴサミを翻弄する.
「足止めは出来ても決まらない…」
「ドラコのあの攻撃でも駄目となると…」
「どうした?万策尽きたか?といっても,手を見せれば見せるほど予想しやすくなるから結果は変わらない」
「奴の挑発だ.大技の隙を狙っている」
「言われるまでもない.…オーギュスト,なぜこんなことをする?」
「どうせお前たちには分からない」
「彼女の死が関係しているのか…?」
「違う.チッ…他人に分かったように言われるのが嫌だから教えてやる.あいつの死はただ止める人を失ったに過ぎないことで,前から考えていたことさ」
「前から…」
「そうだ,お前たちと会う前からだ.俺は破壊されるものから飛び出すエネルギーに輝きを感じる.その輝きを見たい,だから世界を壊して回ってきた.そしてついに最高の輝きを見ることができそうなんだ」
「だったらお前の隣の奴のかける幻でも見てろよ…」
「あれは記憶を頼りに作っているものだ.そこに偶然はなく味気ない.理想が詰まっていて満腹感こそあれ,どうも物足りない.やはり本物でなくてはな.キャラを用意すれば頭の中で独りでに知識の外を話し始めるという技術を持つ者も居るようだが,生憎そのようなものは持ち合わせては居ない」
「何がお前を狂わせてしまったんだ…」
「狂う?最初からさ,誰しも持っているもので,それを実現できる力を持っているのが俺だというだけのこと.そこら辺の人を10人でも集めて俺と同程度の力を得れば半数は同じことを思うだろう」
「……」
「……」
「そう変な顔をするなよ.君らにだってあるだろう?楽しもうという気持ちが.自分に害がなければ,自分が巻き込まれなければイタズラだとかしようとするだろう?蟻の巣に水を流したり,蟷螂を潰して寄生虫を観察したり,自分に危険が無いほど力の差があれば,やってみたくなるものだ.復讐される恐れなど無いのだから.人だってそうさ.ネットの向こう側の少年少女に金を渡してどう踊るか楽しんでいる人はいるじゃないか.ほんの一握りのおかしいことじゃない」
「……」
「なら,お前にそんな大きな力が無いことを証明してやる」
「いいや,あるね.神に選ばれた俺には有象無象では話にならない」
「何を言っているんだ?」
「破壊と創造は交互に訪れる.どちらも無くてはならないもので,さしずめ俺は破壊の代行者といったところか.神が破壊が必要だと考えて俺を遣わしたんだよ」
「馬鹿か.そもそも人を選んで任せるなどというのが驕った考えだ.お前はその盲目的な態度で考えることを止めた小心者だ」
「お前が今までやってきたのは神の加護じゃない,実力だ.惑わされるな」
「神への感謝が足りないぞ.フン…負け犬の遠吠えにしか聞こえないな」
「お前は居場所がないから,全てを壊して最初の状態に戻したいだけだ」
「居場所がない…?どうしてそう思うんだ,それを恐れているのは君の方なんじゃないかジュード?」
「なんだと?」
「だってそうだろう.お前はこの争いが終わればお役ご免.居場所が無くなるのはお前だ.だから世界が滅びるのも止めたいし,戦いが終わってしまうのも止めたい.違うか?」
「馬鹿なことを…」
「君の心の奥底にあるのがそれだ.言葉で誤魔化そうといずれは浮上してくる」
「誤魔化し?俺は想定はしても,だから足を引っ張ろうなどと考えない」
「上手く行った場合は,ね」
「ジュード,お前なら最後は上手くやれる.これまでCGを苦しめたんだから間違いない
「…フン,言わなくても分かってる(しかし,オーギュストの奴,全く動揺する気配が無い.揺さぶりは効きそうに無い…)」
「そろそろ終わりにしよう.奴らの技はもう見切った」
「ギルベルト,最後に1つ試したい.……」
「なるほど,やってみよう」
シェイドは後ろに下がり,杖を右手に持って水平にして腕を前に突き出す.カゴサミはシェイドに切りかかろうとして,ドラコのタックルに阻まれて後ろに押し戻される.ドラコは体を膨らませて空気を溜め込んだ後,口から炎を吐く.カゴサミは片方の頭の口で炎を吐いて,もう片方は空気を吸い込み始める.ドラコの炎は押されていき,カゴサミのもう1つの口が炎を吐き出す.シェイドは作り出した羽を広げてドラコの炎に押されて前に飛び出す.杖の前方に半月状の曲がった透明な壁を出す.横だけでなく上から見ても半月のようになっている.カゴサミの炎を受けて輪の中を炎が走り,もう1つの息を吸い込んでいた口へ炎を送り込む.シェイドは杖を両手で持って前に突き出して抑える.カゴサミは炎をやめて暴れだす.シェイドの腕は圧力で折れて杖が地面に落ち,シェイドはバッジに戻る.ドラコの吐いた炎を遮るものがなくなり,カゴサミは溶けて消えた.
「馬鹿な…」
「お疲れシェイド」
「(クレナイは瀕死だが,カゴサミが負けてドラコが残っているか…これは勝てない.逃げるが勝ち)」
フレイルは一太刀でクレナイを両断する.クレナイはファルシオンの手の中に戻る.
「待てフレイル!」
フレイルは異空間を通ってどこか遠くへ逃げ出した.
「チッ…だが魔銃は直った」
ジュードは魔銃を見る.光を取り戻していた.
「フレイルを野放しにできない.奴から力を奪っておこう」
ファルシオンは魔銃の引き金を引く.周囲が光に包まれた後,特に変化がないまま元に戻る.
「何か変わったのか?」
「フレイルのβの力を消した.奴の使い魔アンバーをもう奴は呼び出せない.遠いところの変化だから分からないだろうが」
「あいつは何者なんだ?」
「人間だと思うが,普通の人間よりも身体能力や強度が勝っている特殊な存在だ」
「ジュード,無事?」
エルサたちは我に帰って走り寄る.
「心配ない.そっちこそ」
「私達も大丈夫」
「さてと,文明の破壊者を永遠の眠りに就かせる.どうするCG,邪魔をするか?」
「後で話し合いに応じるなら認めよう」
「了解した」
ファルシオンは魔銃を放つ.光に包まれ,すぐに収まる.
「終わったのか?」
「終わった」
「じゃあ魔銃を一先ずヴィンセントに持っていてもらおう」
「まあ,誰か一人とすればそれが妥当か…」
ヴァランの提案にファルシオンは従ってヴィンセントに渡す.
「ジュード,君もだ」
「ああ…,変な気を起こすなよ…」
ジュードはヴィンセントに魔銃を差し出す.ジュードの視界は真っ暗になった.
ジュードが目を覚ますと辺り一面が星空の空間だった.
「ようこそ,と言っておこう,ご主人サマ」
「誰だ?」
ジュードの問いかけに闇の中からもう一人のジュードが姿を現す.
「お前は…」
「君の思考を支える者.君が僕と対話を望んだのだからわざわざ人格を作り出したんだ」
「この空間は…」
「深い意味は無いよ.殺風景は嫌だろうと,君の使い魔にちなんだ空間を」
「対話…,どういうことだ?」
「その質問はおかしいな.君の意思じゃないか?僕達はいつも通り,主人である君を支えるために思考の手助けをしようとした.いつものように違う視点や最初の地点から見る,というものではなく,対話を望んだのは他ならぬ君だ.忘れたのかい?」
「……,そうか,そうだったな」
もう一人のジュードは姿を消して後ろから逆さまに現れる.主人は振り返って目で追う.
「君は悩んでいる.自分に務まるのかどうか」
再び消えて後ろを向きながら主人の横に現れる.再び消えてまた違った場所から現れる.
「そうだ.俺には夢があって,それを成し遂げようと頑張れる.しかし…」
「分かっているよ.その夢が本当のものか分からないんだろう?」
「今までの夢見たことを実現するたびに,こんなものか,と幻滅する.そして同時に努力への疑問が浮かぶ」
「急速に興味が薄れていってしまう.しかし,次の夢を描くことで繋いで来れた.今までは」
「これからもそうかもしれない.何を恐れる?」
「本当にそのままでいいのか分からなくなった.何とも無駄なことの繰り返しなようで…」
「君は何かを成し遂げると特別喜びはしない.減点式で評価するのみ.リーダーとして仲間を褒めはしても,褒められることはない.喜びを知らないんじゃないかな?」
「成し遂げた喜びを満たす,そういう見方があってもいいじゃないか」
「できるかな….夢は大きな屋敷に住んで自分好みの庭木を植えて四季を楽しみ,庭池で魚を育てて眺めること.これはすぐにはできない夢だから,夢であることにしようとしたんじゃないかと思うんだ.頑張るための理由が欲しくて,すぐに手に入らないものを夢として選んだ.俺の本心ではないんじゃないか?」
「じゃあどうやって本心かどうか分かるのさ?過去を振り返ることでしか分からない.つまり実現しなければ分からない」
「いや,君は対話を重ねることで,言葉に引っ張られて歪められた本心を探そうとして来たんだろう?」
「君は難しく考えすぎだよ.今からやれば間に合う,ということばかり考えているからすぐに解決して,持てるエネルギーをその計画につぎ込む.世界が狭い」
「自分の思い通りに進めようとする力強さはいいとして,君は誰かのために行動すべきじゃないかな?そうして世界を広げて本心を探るべきだ」
「そう,すぐに結論を出そうとするから悩む.いや,悩みたがっている」
「だって君は悩みの袋小路に入って夢を永遠のものにしようとしている.そうすれば,いつまでも頑張れるものだから」
「だが果たしてそう上手く行くかな?」
「叶わない夢を追い続けて頑張り続けられるとは思えない」
「そうだ.自ら袋小路に入るべきじゃない」
「君に永遠を見せてあげよう」
ジュードの前方が光り輝く.
「誰だ?」
「君は永遠の目標が欲しいんだろう?それも常に達成感を与え,かつ尽きることのない目標が」
「邪魔をするなよ魔銃.貴様の出る幕ではない」
「ナンバー2ども,お前たちとは話していない.」
「……」
「君の悩みはつまりは,頑張れる本物の夢が欲しいというものだ.永遠の力を用いればそれが出来る.終わりがあって,その都度に幻滅することも,次から次へと夢のようなものが生まれて追いかける計画を組み直すこともない」
「……」
「さあ,どうだ?」
「ごめんだね.永遠が欲しいんじゃない.本物が欲しいんだ.本物は少なくとも永遠ではなく,終わりのあるものだ.大体,人の心に入る無礼なお前が気に入らない」
「お前の思い違いだ」
「消えろ」
光る物体は消えた.
「…毒を撒き散らしていたら,かつてのコンプレックスも使命感も責任感も消えてしまい,何もかもが消えてしまいそうだ.だったら,無駄なことは止めて則天去私に生きるのもありかなと思っている」
「君は他者に振り回されるのが嫌いだろう?」
「それが分かるとしても毒が抜け切った後さ.まだ止めておきなよ」
「君に付いてきてくれたあの子たちに恩返しする番だ」
「頑張れる理由は夢だけじゃない」
「君ならやれるさ.今までの失敗は成功への布石だし,成功は君の実力の証だ」
「ありがとう.これからもよろしくな」
ジュードは我に帰る.
ジュードは手を離し,ヴィンセントは魔銃を受け取る.ヴィンセントは魔銃をじっと見る.
「(俺は,これを壊せると思っていた.だが,できない….あの雇い主の言う通りだ…,畏れ多くて手が震える)」
「さて,話合いといこう.いや,ここより上で話そう.戦いの興奮を冷ます時間も要るだろう?」
「そうだな,上へ向かおう」
全員船に乗って一旦外に出て島の上に降りた.
「さあ,運営方法の話し合いだ.納得できるものにしよう」




