終章「黄金の街」
暮れなずむ国道を塵芥車が走っている。
車窓から差し込んだ陽に顔をくすぐられ、リンゴは目覚めた。
のっそり起き上がると揺れる車内の窓から、見知らぬ福岡の街並みが広がっている。
「あーっ」
小さく感嘆が漏れた。
林立するビルや建物の群れが黄金色に輝いている。
リンゴは過ぎ行く街並みに視線を奪われ心が躍った。
―――何てキレイなんだろう。
見とれていると、すぐ隣で気配が動いた。
疲れた目をした黎人が運転している。ハンドルを持つ手は微かに震え、鼻からは血が垂れている。しかし、運転に集中しているのか気付いていない。
「あ~い~?」
大丈夫?
リンゴは右手の人差し指で黎人の鼻血をすくうと口に含んだ。リンゴにとってはおやつみたいなものだ。
黎人はリンゴに力なくも穏やかに微笑んだ。
リンゴも微笑みを返す。また心が躍った。
なぜだろう?
あ、そっか。
この人が私を守ってくれる。そのことが嬉しいのだ。
でも、この人は何でいつもボロボロなんだろう?
泣いたり、怪我してたり……。
………………。
私のせいかな?
それなら、私もこの人を守ってあげなきゃいけない。
いや、守りたい。
私はまだこの人にそのことを伝えることが出来ない。
苦しいな。
………………。
……ずっと一緒にいよう。
そうしたら、いつかは伝えられる。
いつかは―――。
その思いが通じたのか、黎人が左手を伸ばしてきた。
リンゴはその手を両手で包み、頬にあてる。
暖かい。
大丈夫、きっと大丈夫なんだ。
無人の国道を走る塵芥車は一路、八博へ―――。
リンゴは大きなあくびをつくと、心地良い揺れを感じながら再び眠りについた。
(終わり)




