43章 終章 ~絵描き旅ははじまったけれど~
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
この物語はここで一旦区切りです。
続きはまた別タイトルで、「神を描く血の子」シリーズとして絵描き旅が続きます。
書き溜めてからアップ予定なのでしばらくはアップしません。
後日みかけた時にまた読んでくだされば幸いです。
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その後、クリスは神界で一人放っておかれたり、たまにヘルメスが現れつつ、好き勝手に進んでいた。神様のお付の者らしい人にも幾人かすれ違ったが、簡単に会話するのみで、その人達を描くことはなかった。だが、とても親切でここの世界のことはヘルメスよりもその人達から教わっているようなものだ。
幾つかの絵を描いて、方々を歩くのにも慣れたころ。
クリスは、名前も知らない小山を登り、そこに小さな祭殿があるのをみつけた。
自分の家の小屋ほどしかない祭壇だが、小奇麗で柱の装飾も美しい。
数段の階段の上の神殿は、太陽に照らされて、光輝いているかのようだ。
風景ばかりではなく、たまにはこういう綺麗な造形物も描いてみようと、杖をつついて道具をだした。
それから、一旦階段を降りて、いい角度を探してみようと思ったときに、空から不思議な声が聞こえた。
しゃべっているかのような、甲高い声。ふと見上げると、新緑の葉っぱのような色の鳥だった。それが二羽飛んでいて、会話をしていたかのような声だった。
人間界ではみたことない色、そして声というかしゃべり方だ。
そういえば神界にきてから鳥をみたのは初めてかも知れない。いや、いたけど気づいてなかったのかも。
とにかく珍しい色なので、ずーっと目で追っているうちに、足を踏み外した。
あっと思って足を出したが、段なので踏みとどまれる訳がない。
おまけに、杖をもったままだったので、手でついて立て直すこともできず。
更に杖を折ってしまっては大変だと、咄嗟に思ったのか、杖をかばう形で転んだ。
「いっ……た……」
ものすごい激痛。
血がでた痛みとはなにか違う。
痛いところをみると、右足だった。
その足首。出血もしているが、この激痛。
「あ……折れたのかな……っつ」
とにかく痛い。
右手の甲もすって出血しているが、それどころではない。どうしようかと患部に手を伸ばしかけたところで、声がした。
「お前なぁ、なんで前みて普通に歩けないんだ」
「あ……。ヘルメス……痛い……」
開口一番、心配ではなく嫌味だが、それでもいい、転んですぐに来てくれたから。
これから先も安心できそう。欲をいえば転ぶ前に現れて欲しかったけどね。
ほっとして少しだけ涙がでてきたが、痛くて泣いてるふりをしよう。
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こうして、神の存在は現代まで伝えられている。が、神の姿は絵ではなく、ほとんど彫刻でしか残されていない。どういうことか?
これは、大地が伝え、刻の神があえてヘルメスたちに伝えなかった詩の、最後の一行に記されている。
なれば血の子は、永遠に我を地に刻み、交わりを保つだろう
(それならば、クリスの子は永遠に神を大地に刻み、人間との関係を保つだろう)
終




