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桃華源紀

作者: 零桜

桃花源記を元に書きました。作者の文章力不足もあると思いますが、読んで感想などいただけたら幸いです。

古代中国・晋の時代。

武陵という国の人がいた。彼は【よう えん】と云い、漁師をしていた。


ある日、楊がいつも通り漁をしていると、夢中になっていたのか帰り道が分からなくなってしまった。

「これは困った。一体俺は何処から来たものか」

そうやって川沿いをくねくねと行くと、突然目の前に、桃花の林が現れた。

それは川の両側にズラーっと並んでいる。

当然ながら、楊は驚いた。

「これは凄い。なんと美しい桃花であろうか。それに、余計な木が全くないとは、不思議なことだ」

その林の下を見ると、とても鮮やかで美しく、良い香りのする草が一面を覆っている。

「是非、この林が何処まで続くか見てみたい」

楊はそう言うと、船をさらに林の奥へと進めた。


進んで行くと目の前に、大きな山を見つけた。その山の麓には小さな穴があった。

穴からはぼんやりとした光が出ている。

楊は船をそこに置いて、小さな穴に入ることにした。

「んっ、狭い!でも、通れなくはないな」

その穴は大人一人がやっと通れるくらいの大きさだった。

穴の外に出ると、其処は素晴らしい光景が広がっていた。


きちんと耕された田畑。

美しい池。

様々な種類の木々。

縦横を整備されているあぜ道。

家の周辺などで遊んでいる老人と子供達。

田畑で農作業している男女。

そして村人達の着ている衣服は、楊の衣服と全く変わらないものであった。


楊が歩いていると、村人の一人が楊に声をかけてきた。

「もし、見かけない顔だが・・・何処からいらしたのか」

「はい、私はあの丘の小さな穴から出て参りました。

しかし、こんな場所に村があるとは・・・私も知りませんでした」

こう、楊が答えると村人はとても驚いたような顔をして、もっと外の話を聞かせてくれと、楊を自宅へと招いた。

そして、高級そうな酒や様々な料理を楊の前に出した。

「どうぞ、遠慮なさらずにお食べ下さい。この村は、客人が全く来ない場所なので貴方のような人は珍しくて・・・」

楊の周りには気がつくと、沢山の人だかりが出来ていた。

そうして、長老らしき人物がこう話し始めた。

「私達は、秦という時代の戦乱の世から逃げてきた難民です。私達は始皇帝の圧政に耐えられず、妻や村人を連れてここまで逃げてきました。未だに一度も、外に出たことはありません」


(今は、晋の時代。ということは、漢の時代があるのも知らないのか…魏や晋という時代は、言うまでもないな。知っているはずがない)


「ときに、今は何の時代ですか?」

長老は、楊に尋ねた。

「今は、晋という時代です」


それから村人達は楊に色んな質問をした。

楊はそれに事細かに答えた。

ひとつの家で質問攻めが終わると今度は少し離れた家へと案内され、それが終わるとまた次の家へと案内された。


数日後・・・・・


「そろそろ、家へ帰ろうと思います」

「そうですか。

どうか、ここの村のことは話さないで下さい。村の平和を壊したくはありませんので」



楊は船の場所まで戻ると船に乗り、帰りながら岸に目印をつけた。

そうしてそのまま国の役人の下へと行き、こう告げた。

「私は面白い村を見つけました。とても平和な村です。

きっとお役人様にも気に入っていただけることでしょう。そのために目印をつけてきました」

「そうか。では使いの者を寄越そう。おい、楊という者と共に村を視察して来い!」

「はい」


二人は船で目印を頼りに村を探した。しかし、見つけることが出来ずに帰ってきてしまった。


それから、村を探そうとする者が現れたがその者の病に倒れ、死んでしまった。


今ではその船を出した場所さえ分からず、誰もそれを聞くこともなくなった。

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