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つまらない話  作者: 優陽
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呪いの夢

「最近、胸がズキズキと痛いのです」

この日の朝1番に精神科に訪れた若者が言った。

「そうなの。それなら胸ヤケのお薬を飲んだらどうですか?」

精神科医の大門寺鈴子はペンとメモを準備しながら薬を勧めた。

「いや、でも、治りそうにも……」

「やってみなきゃ分からないじゃない。それに身体的な事で相談に来たなら他の病院を当たってください。ちゃんとしたお薬も出せますよ」

「それがどうにも、それだけでは無さそうなんで……」

「どういうことかしら?私に話してちょうだい」


話を聞いてみると、どうやら若者は毎晩同じ夢を見ているらしく起きたときに胸がズキズキと痛むということだった。

簡単なメモを走らせながら次々と質問していった。

「えぇ。では次の質問ですが、初めてその夢を見たのはいつだったかしら」

患者の若者は肩を震わせながら怯えた口調で答えた。

「先週の土曜の夜で……あの……先生……僕すごく怖いんです」

「大丈夫です。きっと良くなりますよ」

患者の肩をポンッと叩いて元気づけさらに質問を投げる。

「先週の土曜の夜っていうと、ちょうど1週間経つわね。その日に何か特別な行動を取ったりしなかったかしら。差し支えなければ夢の内容を教えてくれないかな?」

若者はしばらく躊躇っていたが、決心し、答えた。

「お酒を飲んで酔っ払っていたので殆ど覚えていません。高校の同級生の女の子が僕の家に来て、一緒にお酒を飲んだことぐらいしか……。夢の内容ですか……。それは恐ろしくてとても……」

「その女の子が怪しいわね。お酒に毒を混入されたとか……。その人とは今から連絡とれない?もしかして何か知っているかもしれないし。夢のことは私も無理して聞こうとは思わないわ。ただ、話す気になったら話してちょうだい」

「それが、その日に急に僕の家に来たんで連絡はとれないです……。夢……頑張って話します……」


夢の内容を聞いた鈴子はサッと立ちあがり有無を言わさぬ口調で言う。

「それは恋じゃないですか?きっとそうです、そうに違いありません。その女の子が夢に出てきたんです!」

「でも……そんな感じは……まさか」

「いいですか?胸のドキドキは恋ですよ。私も大学時代は同じサークルの男性に恋しちゃってたなぁ。今思い出しても恥ずかしいことばっかり。あんなことやこんなこと…なんかすっごい興奮しちゃったぁ。って私、何話してんだろ。気にしないでね、とにかくそれは恋よ、恋じゃなきゃ何だって言うのよ!」


昔の恋愛を思い出し興奮していた鈴子は、患者の男を強引に説得した。

そして患者の男の方は浮かない表情で帰っていった。

興奮し過ぎて疲れた鈴子は重い腰をソファに落ち付け、珈琲を口に含む。

ホットコーヒーを飲みながらホッと落ち付けるこの時間が鈴子は好きだった。

とてもまともな精神科医ではない鈴子だったが仕事は真面目にやっていた。

小さな診療所、それも1人で経営しているのだが破格の値段で診てもらえるということで来る患者の数は少なくない。


翌日、来るはずだった患者の若者が来なかった。

「変ね、約束では、今日来るはずだったのに。私の診療が間違ってたのかしら」

今ごろになって自分の過ちに気付く。

「それにしても、奇妙な夢を見る人もいるものね。髪の長い女性が井戸から這い上がるなんて……。それもテレビの中から飛び出してくるなんていう夢……。どれだけ想像力が逞しい方なんでしょう」


新聞を見ると、今日も載っていた。

“死人続出。呪いのビデオ”

「……死因は心臓発作。○×県警は連続殺人事件とみて解明に取りかかり始めている」


日付を見ると、日曜となっていた。

わかると思いますが映画『リング』の呪いのビデオの設定を利用しました。

ホラーといえるような代物ではなく、コメディともいえない、微妙な小説です。

独特の世界観を生み出せていれば、いいんですが。

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