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つまらない話  作者: 優陽
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機会の見計らう機会

「つまんねぇよなぁ〜」

冷蔵庫は炊飯器に話しかけた。

「コッチは引っ切り無しに体を冷してるんだぜ?働き尽くめっていうのも困りモンだよ。そっちはどんなもんだい」

まるでナンパをする男のような喋り方だった。

それに対して炊飯器は

「うるさい!気安く喋りかけないでよっ。あたし今熱気プンプンで常にこうしてないと体が持たない!特に仕事中だと……ほらっ、あなたも仕事しなさいよ!」

気が立っているようだ。冷蔵庫の方が図体は大きい。男(?)としても負けてはいられない。

「あっそ。俺は働き尽くめだけど君はご飯炊くときしか働かないだろ?つまり必要とされてないんだよ、人間様ひとさまに」

と挑発するように言う、語尾を強めて。

すると突然、それが仕事だと言わんばかりに炊飯器は喚き泣きだした。

それを見た冷蔵庫も、情けない事に炊飯器に釣られて大声をあげて泣き出した。

炊飯器への思いやりなのかもしれない。

“ウイーン”という機械音が室内に漏れる……

「いい加減にしてくれないか?」

どれだけ待っていても泣きやまないことに怒り心頭した冷凍庫が冷たくあしらう。

幾らか初登場の機会を見計らっていたようだ。

「僕の上のポンコツ冷蔵庫クン。普段から君は煩すぎなんだよ。冷蔵庫なのだから他人に冷たくしろ、いいな!そうでないとろくに仕事もできやしない。それに泣くんじゃない。お前の泣き声は煩すぎて人間に嫌われる。そんなことになってみろ、僕たちは捨てられる事になるんだぞ?機能しなくなるという事は……そんなこと考えたくも無いよな」

そんな冷凍庫の意見は、誰のせいだか、まだケツが青い冷蔵庫には、通じない。

音をたてていた冷蔵庫は冷凍庫に向かって、ついにキレた。

「うるせえ!俺はポンコツじゃぁねえ!」

叫び出した冷蔵庫を見て冷凍庫はぼやく。

「そんなに熱くなっていたら中身が腐るよ……。もう腐っているか」

冷凍庫は冷静だった。

そして予測する。

「今のままの君じゃすぐに……」


突然、カチャッと扉の開く音が聞こえるとドスドスという振動が伝わって来て、何者かが近づいてくる気配が感じられた。

しょっちゅう感じるものだ。

どうやら帰ってきたらしい。

冷凍庫は心拍数がはねあがり、自分の能力をフルに出そうと踏ん張った。

そしてよくみる。

僕等を使っているアレが今コチラに向かって……。

アレは僕の上の存在を見つめ不審がっている。

およそ僕たちには理解できない、よく分からぬ言葉を発しながら。

今、上から冷気が飛び出してきたことにより冷蔵庫が開けられたのだと分かった。

自分も開けられるかという期待と、何をされるのかという不安が入り混じりドキドキしていると何かを捻る音が聞こえそれきり冷蔵庫の音は止んだ。

それと共にちょうどいいくらいの静かさ、いや温度へと変わっていったのが分かる。

幸い僕にはそんなことはされてないようだ。

それをされると寿命が縮まるという噂がある。

だから僕たちに任してくれた方がよっぽどいいのだが。


辺りは完全に静まり帰った。

冷蔵庫も機能を果たして寝静まったらしい。

真っ暗だ、部屋も自身も。

これはいつもやってくる、僕達にとってはかなり楽な時間でもある。

中を管理するのも明るい時より楽だし、僕達が管理されることもない。

ふと、炊飯器のことを思い出した。

あれはどうだったのだ。

そう思い前方に目を凝らして見ると“保温”と書かれたランプが点滅している。

うん、なるほど、仕事を終え、中の品質を保つ作業に取り組んでいるわけだな。

なんだ、僕達より大変ではないか。

冷蔵庫め、炊飯器を甘く見ると痛い目にあうぞコリャ。

痛い目といえば、炊飯器の彼は毎日泣き喚いているようだが、あれは何の為だ?

もしやそれが仕事なのでは……。

そんなことはないよな…。

そうだとしたら冷蔵庫の野郎が可愛そう過ぎる。

人間の男が女に振りまわされることはあるだろうが、冷蔵庫が炊飯器に振りまわされるなんて許せない。

僕達の方が図体は大きいし、ずっとずっと消費する力も大きいのだ。

あれ。

でも確か、消費する力が大きいのは、アレにとっては不便だったのだっけ?

まぁ、考えるのはやめにしておこう。

余計なことに力を消費してしまう。

確か“電力”というやつを消費するのだ。

それにしても今日は疲れた。

きっとみんなこうやってやってきているのだろうな。

冷凍庫は考えるのをやめ、皆と同じように眠り出した。


一部始終を見ていたストーブは

「炊飯器め!被害者ぶりやがって。いつも泣き喚き水蒸気を出しきって随分とストレス発散できるじゃないか。俺なんか冬の時期しか使われないんだからお前よりかよっぽど必要とされない存在なんだ……すぐに買い替えられるし。そういえばおじいちゃん言ってたなぁ。昔は頭にやかんを乗せて活躍してたのに今じゃめっきり仕事が減ったって……」

他のものと比較し自分の不幸を訴えた。

辺りはすごくすごく静かで誰も聞いてくれるモノはいない。

ストーブは無性に悲しくなり周囲に油を巻き散った。

そして憎しみの炎を点火した。

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