召し上がる話
高田家は毎朝、家族全員で朝食をする事になっている。
まず最初に起きるのは母と父。
さっそく二人は早朝から調理に取りかかる。
母は栄養士、父は料理教室の講師というだけあって手際はいい。
作っている最中に香りに釣られて長男が起き出し、ベッドで横になっている祖父を起こす。
その後すぐに作り終え椅子を並べてみんなが揃ったとき
「いただきます」
と、朝食を開始する。
料理が美味しいだけに会話も弾み、皆が楽しんでいるようだった。
特に、祖父はこの一家団欒を生き甲斐のようにしており、どんな場合でもここへ欠かさず来ていた。
例外はない。
普段は寝たきりの人だが、この時ばかりは元気になるのだ。
しかし何年か経ち、とうとうというか、その日祖父は亡くなった。
これはどうも仕方のないことである。
翌朝、いつものように両親が朝食を作り始め息子が起き出した。
そして息子はいつものように祖父を起こしに行こうとしたが母に止められた。
習慣と言うのは恐ろしい。
場違いな息子は椅子に座ってただ朝食を待つのみだった。
そして朝飯が作り終えたので手を合わせ
「いただきます」
と家族全員で言った。
それも例外無く。
しかし母も父も息子も小さな声でしか言えなかった。
この状況では手を合わせるのも気負いする。
長い間沈黙が続いた。
高田家の誰もが「あぁこんな時に祖父がいれば」と考える。
一方死んでしまった祖父は、霊となってその光景を見ていた。
「なんじゃぁ!今日は息子が起こしてくれんかった。これは一体どういうことだ。をいお前ら、わしも混ぜろ」
と側に寄ってどんなに叫んでも決して届く事はない。
やがて、この寂しい光景を見ていた祖父はつまらなさそうに去って行った。
生き甲斐を無くした男は死ぬしかないのだ……。
既に死んでいるが。
ここまで読んでくれてどうもありがとう。
『召し上がる話』はショートショートによくあるシュールさや、ブラックコメディ的な発想をモチーフにしました。
全体的に暗く重たく仕上がっていると思いますが、それが雰囲気となって伝わればいいなぁと思って書いたんですがどうだったんでしょう。
自分では起承転結は上手くできていると思っています。
なので、短編としてのまとめ方はなんとかなったかなぁと。
あとは祖父の思いがどのように伝わったか……気になります。
これからも書いていきますので、ぜひ読んでいってください。ついでに、感想まで書いてくれると、とてもとても喜びます(笑)
頑張りますので、みなさんも小説作りガンバってください!