転校生越川の声
質問攻めが嫌いな浅井は、危険を察知し屋上へと向かった………
屋上に上がった俺は、晴れ晴れした青空をただ見ていた。
「空って、なんでこんなに広いんだろ…」
と、意識していないのに思ってしまった。
とりあえず暇だったから、携帯のワンセグを起動した。
勝手に選局されたテレビは野球中継だ。徹天と永ゴンズの果敢な決闘だった。
俺はとくに野球は興味がないので、負けている徹天をなんとなく応援していると、携帯のバイブが鳴った。
「誰だ。ん?担任かよ」
即拒否した。担任に関わるとろくなことがない、前だって教科書忘れたぐらいで三時間説教を喰らった。
いきなり「あれは三年前の事だった」とかいって語り出すのだ。
画面を見ると、バッターの加藤がホームランを打っていた。しかし、会場は盛りあがっていない。そこまで人気がないのだろう。
ホームランを打ってチームに貢献したのに誰も喜んでくれない。
さすがにその試合は飽きたので見るのをやめ、他の局番を選んだ。
すると、メンズアイドルと称した発表会の生中継が放送されていた。全くもって興味はないのだが、一応気になるので見てみた。
すると、東京代表の今山がセンターとして出てきた。
さすがセンターポジション。めっちゃ人気がある。リアルタイム投票でも林の次に人気がある。
その司会者が「センターの今山君にお言葉を頂きます!」
と、いってマイクを渡すとこう言った。
「みんな今日はありがとう!俺のナイスバディーをとくと見やがれ!」
引いた。さすがに会場内の客もドン引き。
今山は強制失格となり、林が優勝した。
突然、うしろから俺の名前を呼ぶ女の声がした。
「浅井くん!」
びっくりし、後ろに振り向くと、転校生の越川さんが立っていた。
慌てて携帯を閉じ、
「な、何!?」
と、携帯を後ろポッケに入れた。
「授業始まるよ!」
と、言ったので腕時計を確認する。時刻は午前8時55分、9時の始業まで後5分。
「やば!、早く教室に行かなきゃ!」
おれは彼女の手をとり、階段を掛け降りた。その時彼女は恥ずかしがっていた。
教室に戻ると、西村が偉そうに仁王立ちしていた。
「浅井遅いぞぉ!」と変な口調で言ってきた。まるで担任服部のように。
俺は無視し、着席して用意を出した。
当然転校生は教科書がない。「見せようか?」と問うと「ありがとう!」と爽やかな声で言った。
その声に俺は少しだけ惚れた。