表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

だイ いチ ワ

この物語ノ主人公、少年にハ名前ガありマせン。


読者ノあナた自身ガ、


少年に名前ヲつけテあげテクだサい。


物語ノ進行に影響しナいノデ、


名前をつけヅに読み進メても構いマセン。

夏の心地よい風が頬に当たり、少年は目を覚ます。


「 うっ・・・う~ん 」


今までボクは何をしていたんだろう?


少年は眠りから覚めたばかりのように体が重かった。


目を擦りながら、あたりを見わたす。


そこは少年の見覚えのある場所。

街を一望できる丘の上にある大きな木陰だった。

丘の上にある大きな木は特徴的で少年の記憶にしっかりと残っている。


少年の記憶がしだいに蘇る。


以前に父と母とピクニックに来たときのこと・・・。

楽しい一日、晴れていて穏やかな日。

木に父がブランコをかけたことを思い出す。

母のおいしい手料理・・・。

つい最近のことのような、ずいぶん昔のことのような・・・。

少年は、そんな不思議な感覚を味わう。


ふと少年は、あたりに父と母がいないことに気がつく。

いつも近くにいた父と母・・・。

その姿がどこにも見えない。


澄んだ空気を吸うと少年は大声で叫んだ。


「 お父さーん!! お母さーん!! 」


しかし、聞こえてくるのは小鳥のさえずりと風が木々を揺らす音だけだ。

少年は一瞬にして不安に呑み込まれた・・・。


ついに耐えられなくなった少年は、

その場から駆け出し、必死に父と母を呼び続ける。



太陽が照らし、カラリと乾いた小道を少年が駆け抜ける。

川のせせらぎが心地よいが、今の少年にとってはどうでもいいことだ・・・。

名前を呼べばすぐに来てくれた父と母。その姿がどこにも見えないのだ。


しだいに涙が溢れ出す。


「 お父さーん!! お母さーん、どこ!!! 」


少年は気づかぬうちに涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしていた。

嗚咽をしばらくの間繰り返す、再び少年は父と母を探すため、歩き出した。


丘からはすでに遠く離れ、街に出た。


もしかしたら、ボクを置いて家に帰っちゃったのかな?


何となく少年はそう思った。

そう思うことによって、少年は少しでも自分に暗示をかけたかったのだ。

父と母はいる、この街にしっかりと今も住んでいるのだと・・・。


少年はそうして、すっかり泣き止んでしまった。




自分ひとりで家に帰るのは初めての少年。

しかし、しっかりと家までの道は覚えていた・・・。


よく母と歩いて街に買い物に出かけていたため、道順は分かっていた。


家の外壁が見えてくる。

いつもの外壁はそこに存在していたのだ。

少年の顔がいっきに晴れ、思わずその場から駆け出した。



「 お父さん、お母さん!!

  ボクを置いていくなんてひどいよ!! 」



そう言いながら、外壁から飛び出した。

しかし・・・


そこにいつもあるはずの家は・・・姿を消していた。


訳が分からず絶句する少年。

今まで家のあった場所は、さらちになっていたのだ・・・。


「 えっ・・・? 」


少年は何もない空き地と化してしまった自分の家の庭を歩き回った。

母がいつも世話をしていた、キレイな植物がすべてない。

父のお気に入りだったロッキングチェアーもない。

少年が大好きだった、砂場も何もかも姿を消していた・・・。


「 何で・・・? 」


はっとした少年はあたりを見わたす。


「 お父さん? お母さん?

  どこ、どこに行ったの!!

  お家はどこ? 」


再び少年の小さな瞳から涙が零れ落ちた。


そのまま少年はそこにうずくまり、泣き崩れてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ