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最弱の邪神は悪役令嬢に転生しても世界を支配したいようです  作者: 米西 ことる
第一章 冤罪なので脱獄したいようです
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灰炎


灰色の霧がかかった空間に突如転移させられた邪神とアリシア。しかし、アリシアはしばらくの間、目を覚まさなかった。


彼女は悪夢にうなされているのか瞳から涙が溢れていた。邪神は涙というものを見慣れていたが、人間の感情にはあまり詳しく無い。

邪神が知る感情は憎悪、絶望、悲しみ、罪悪感......彼の神が闇と呼ぶモノに関係している。


人間は負の感情で形成される。

だからだろうか、邪神の経験則では強い人間ほど闇は大きい。


そして、闇を見る目を持つ邪神には、出会った時からアリシアの持つ巨大な闇が見えていた。


故にアリシアの強さにも納得していた。

しかし、彼女の持つ闇だけでは無い。何か別の大きな見落としがあるような気がしていた。


 


アリシアが目を覚ました。

過去の夢を見ていた彼女はあの日の出来事を想起していた。


アリシアの瞳に映る邪神の姿は、黒髪に灰色の目をした人間の少女の姿であり、無言でアリシアを見つめていた。


「ここは、どこですか......?」

アリシアが邪神に尋ねた。


「わからん。しかし、とても懐かしい気配がする」

赤い瞳の邪神は何やら不穏な気配を感じていた。


すると、灰色の霧が晴れていき、あたりの光景が露わになった。

そこは全てが灰で覆われ、それ以外には何も無い空間。まるで、世界の終末のような、全てが焼き尽くされた後の世界だった。


「さっきまで、地下にいましたよね?」


「ああ、そのはずだが......なぜかこの空間は明るい」


邪神が頭上を見上げると、そこにはあるはずのない空があった。空には"黒い太陽"が浮かび、ここが異界であると確信させるようだった。


「この世界、私は一度来たことがある......」

アリシアはボソッと呟いた。



「ああ、そうか、我の罪状、邪神の封印解除未遂......お前のことか」

邪神は頬から汗をかいていた。


「どういうことですか?」

アリシアは状況が呑み込めずに邪神の方を不思議な目で見つめた。


邪神は黒い太陽を指差した。

「あの黒い太陽、あれこそが【灰炎(かいえん)の邪神】イアズァール。そしてここは、奴の神性領域(しんせいりょういき)だ」



その時、天から神々しさを帯びる声がした。


「久しいな、闇喰らい。まさか、人間に転生していたとはな」


「イアズァール、貴様こそ、こんな場所で封印されていたとはな......他の邪神達は生きているのか?」


「みな、勇者に討たれた。封印されたのは我だけだ」


「そうか......まあいい、貴様、何が目的だ?」

闇喰らいは灰炎に訊ねた。



「ああ、そのことか、やっと......器を見つけてな、今から復活を果たすところだ」




 その瞬間、闇喰らいの隣にいたアリシアが突然、苦しげな悲鳴をあげて倒れた。


「そう言うことか......」


アリシアが再び立ち上がると、彼女はニヤニヤと不気味に笑った。彼女の瞳の中でどす黒い炎が渦巻いている。


アリシアは今まで見せたことのない下品な笑い声をあげ、宙を浮いた。

それと同時に、灰色の大地に墨染色(すみぞめいろ)の八本の灰色の炎の柱が現れた。




「やっと、この俺の炎に耐性を持つ器が現れた。だから、少し干渉してこいつの持つ炎を引き出して人間を殺させた。そして、こいつは俺の封印されているこの場所までやって来た! 遂に、復活できる! 世界を、焼き尽くせる!」






[地上]


牢のある古城から少し離れた場所で、一人の幼い子供が牢の方角を見つめていた。母親がどうしたのと訊くが、彼はずっとその方角を見ている。


その時、古城の地下から灰色の炎の柱が天に向かって伸び、直後に空が灰で覆われ、灰の雨が街全体に降り注いだ。

街は一瞬にしてパニックに陥り、混乱した民衆が悲鳴をあげて四方八方に走り出した。



 黒い炎の柱が消え、地下から上昇する人影が一つあった。灰を被ったような髪色に、青い瞳の中で黒い炎が渦巻いているエルフの少女。いや、もはやそんなものではない。


かつてこの世界を支配した邪神の一柱、灰炎の神イアズァールが地の底より降臨したのである──




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