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最弱の邪神は悪役令嬢に転生しても世界を支配したいようです  作者: 米西 ことる
第一章 冤罪なので脱獄したいようです
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邪神、罠にかかる

邪神、エルフ、看守の一行は地上までの歩みを進めていた。道中、追加で二体のミノタウロスに襲われたが全てアリシアが返り討ちにした。


この地下牢獄に放たれているミノタウロスを全て倒したため、邪神たちは気楽に地上へと向かっている。


看守は地下通路の地図を見ながらゆっくりと歩みを進めている。この地下牢獄はずっと同じ風景が繰り返されるような構造で、上に進んでいるのか、下に進んでいるのかもわからなくなる。道に迷えばその時点で永遠に彷徨い続けて餓死することは明白だ。


「も、もう少しで、出口に着く......頼むから、地上に出ても、悪さをしないでくれ。人間全員が、悪いわけじゃない」

看守は震える声でアリシアに目を合わせながら言った。


「わかっていますよ」

アリシアは看守のことばに微笑んで返した。



邪神はアリシアに訊ねた。

「そう言えば、貴様はなぜ、我と共に行こうと思ったのだ?」



「............何となく、貴方と一緒ならここを出てもいいかなって思ったんです。生きる目的も無く、ずっとこんな牢獄にいるよりも、貴方と一緒に外に出た方が、楽しそうだなって......」


「そうなのか......ちなみに、貴様には行きたい場所はあるのか?」


「......私は、人生のほとんどの時間を森の中で過ごして来たので、人類の街をもっと見てみたいと思っています。街を見ればきっと、人類の良いところがわかるはず。わからないと、また、燃やしてしまいそうだから」

アリシアの青い瞳にうっすらと黒い陽炎が見えた。



邪神は少し訝しんだ表情をし、そうかと一言呟いた。



その時、看守が告げた。

「出口に着きましたよ」


目の前には鉄製の巨大な扉と、広い空間が存在していた。

巨人でなければ開くことが出来ないような巨大な扉には大賢者グレンドリッヒの強力な結界が張られ、今もなお維持され続けている。


「グレンドリッヒの結界が未だに使われているとはな......」


「いや、あんたは知ってるだろ。この結界はあんたらカーミラ家が管理してるんだから」と看守が言った。


邪神はアゴに手を当て考える素振りを見せた。

「ふむ、この結界の術式、封印魔法も兼ねているな。それも、邪神対策、あのシンボルは.....」


封印魔法は結界魔法の一種で、結界魔法の中でも特に高等な技術が必要となるものである。グレンドリッヒはかつて邪神と戦った時のように封印魔法をここに用いているようだ。


封印魔法には特徴があり、封印対象となる存在のシンボルが結界の中心部に刻まれる。

おそらく、ここでつけていた手錠には魔法陣の描かれたシンボルがあったため、魔法を封印する封印魔法が用いられたのだろう。


そして、今この結界にあるシンボルは"黒い太陽と月"邪神はどこかで見覚えがあった。邪神が思考を巡らせている間に、三人は出口に近づく。


看守が邪神に話しかけた。

「あんた、ここの封印を解除しようとしたんじゃねえのか? なんで知らないフリをしてんだよ」


「封印を、解除......ああ、我の罪状にあったのは......」




 その時、地面に魔法陣が現れ二体の魔物が現れた。どちらも巨大な鉱石で出来たゴーレムだ。


アリシアはうち一体を即座に仕留め、鉱石で出来たゴーレムの上半身を熱で溶かした。

しかし、もう一体は仕留めきれず、こちらに接近し、アリシア目掛けてパンチをして来た。


邪神はゴーレムの関節部分に圧縮した闇を纏った手刀を浴びせて切断し、アリシアが攻撃されるのを防いだ。


アリシアは蒼炎を放ち、ゴーレムにとどめの一撃を入れた。


二人は部屋の中心部に立ち、ゴーレムが完全に消滅するのを見届けると、一息ついて緊張が解けた。


その瞬間、地面の魔法陣の輝きがさらに増した。よく見ると、看守は門のある部屋の中に侵入せずにその一歩手前で立ち止まっていた。


「じゃあな、お前らは地下牢の最下層で焼却処分だ!」

看守の表情はしてやったというニヤニヤした笑みだった。


その表情を見た刹那、魔法陣が起動して空間転移魔法が発動した──







 気がつくと、そこは先ほどの地下牢では無かった。あたりは灰色の霧で覆われて何も見えない。

しかし、普通ならば見通しの悪いこの空間でも、邪神の目にはアリシアの居場所がはっきりと見えた。


邪神はアリシアに近づき、手で軽く肩を叩いた──




 アリシアは夢を見ていた。


かつての故郷の夢だ。


エルフの里、そこが彼女の故郷。

温和なエルフ族達は自然の恵みに感謝して平和に暮らしていた。


緑豊かな森の中、きらきらと輝くような木漏れ日の下を両親と歩き、木の実を採取していた。


優しい母に逞しい父。困ったことがあれば助けてくれる里の者達。

里全体が一つの家族のようだった。


平穏に暮らす彼女達にとって、争いなど縁遠いもの、こんな平和で和やかな日々がいつまでも続くと思っていた。


あの日までは──


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