邪神、ヒーローを倒す
看守が来る少し前、邪神は牢から抜け出しアリシアの手錠を外した。
「看守の鎮圧、私は加減が出来ないので少しやり過ぎてしまうと思うんですけど、任せても大丈夫ですか?」
「問題ない。我がやろう。この地下牢獄は闇が濃いのでな、いるだけで僅かだが力が戻って来ている。奴に勝利する程度の力はある」
そして二人は牢に戻って看守を待ち構え、看守を案内させて現在に至る。
看守は震える足で先頭を歩き、二人の大罪人を地上まで案内していた。
アリシアが看守に訊ねた。
「この地下牢獄の中に、私達以外の人はいるの?」
「いない......ここは、元々は地下牢獄の目的で作られた訳じゃねえから、収容人数が少ないし、入る罪人なんてマジの大罪人だけだ」
「そう言えば、アリシアはなぜこの牢にいるのだ?」邪神はアリシアに訊ねた。
「お、お前、知らないのか!? そいつは......」看守が震える声で邪神に言った。
その時、地を震わせるような雄叫び声が地下牢獄に響き、巨大な何かが粗い息遣いこちらへ走ってくる音が聞こえた。
「来たか......!」
邪神はニヤリと笑う。
そして十数秒も経たないうちに、現れたのは先ほど見た牛の怪物、真っ赤な目を血走らせたミノタウロスであった。
サッとアリシアが動き、邪神達と怪物の間に割って入る。
「おお、ミノタウロス! 頼む、こいつらを倒してくれ......!」看守は涙目で怪物を応援した。ビジュアル的には真逆の状態である。
ヒーローとなったミノタウロスと対峙するのは、エルフの少女アリシア。
ミノタウロスはその巨大とは見合わぬ俊敏な動きでこちらへ近づき、手に持っている両刃斧をアリシア目掛けて振り下ろした。
その一撃は大岩をも容易く破壊する威力であり、騎士が十人いても勝てないとされるミノタウロスをさらに改造したこの怪物はこの牢の最強の守護者だ。
斧が振り下ろされる刹那、アリシアの左目に青い炎が灯り、彼女は無表情のままミノタウロスを睨む。
そして、アリシアは魔法を発動した。
「蒼炎」
青い炎のレーザーが勢いよく放たれ、魔法耐性の高いミノタウロスの肉体の全てを一瞬で蒸発させ、地下通路に大穴を開いた。
「ミ、ミノーーーーー!」
看守は怪物の名を呼ぶが、返事はない。怪物は跡形もなく消し飛んでいた。
『なんという威力だ......勇者一行にいた黒滅龍のブレスと同じ熱量か? まさか、これほどのエルフ族がいたとはな......』
邪神は笑みを崩さぬまま冷や汗をかいた。
アリシアは振り返り、微笑んだ。
「さあ、行きましょう!」




