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最弱の邪神は悪役令嬢に転生しても世界を支配したいようです  作者: 米西 ことる
第一章 冤罪なので脱獄したいようです
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邪神、脅迫する


ミノタウロスとの遭遇後、二人はさらに話し合った。というのも、ミノタウロスはあらゆる五感が人間より優れている為、この音の響く地下内では間違いなく脱走を察知されてしまうからだ。


そして何より、この地下迷宮を抜ける為には案内役が必要なため、看守を無力化して案内役にする必要があるが、その間にミノタウロスを呼ばれれば一巻の終わりだ。


加えて、ここにいるミノタウロスは、通常の個体とは違い、魔法による改造を受けているようで、元から持っている魔法耐性と物理耐性をさらに強化し、さらに身体強化までされているスーパーミノタウロスなのだ。


そのタフネスは勇者一行の戦士に匹敵するかもしれない、と邪神は思った。


「アリシア、貴様は手錠を外せばミノタウロスを倒せるか?」


アリシアは少し考えて言った。

「うーん、多分いけます!」


邪神はアリシアに微笑んだ。

「......なら、任せるぞ」


「任せてください! 今は魔力自体は十分ありますので、一撃で倒してやります!!」



邪神はアリシアの言葉を信じ、二人分の手錠を外してそのままミノタウロスを倒して地上に出ることにした。




そして、その日の夕方頃、看守が食料を運びにやって来た。今朝と同様に茶髪にピアスをつけた看守が欠伸をしながらランプ片手に近づいてくる。



「よおー、ゴミどもー、飯食ってるなー」

看守はニヤニヤと下品な笑みを浮かべてカビ臭いパンと一杯の水を置いてその場を去ろうとした。


その時、邪神が看守に声をかけた。


「貴様の闇は小さいな」


看守は足を止めて牢獄に捕まる大罪人の少女の方を見た。

「あ、何言ってんだテメェ? 闇? とうとう頭まで逝っちまったのか?」


そんな返しには耳を持たず、邪神は続けた。

「我は闇喰らいの神。特に人間の闇が好物でな、特にどす黒く渦巻いている闇が一番好きだ。その点で言うと、貴様にはあまり興味が湧かない」


奇妙なことを語る邪神の姿に、看守は僅かに恐怖を感じ後ずさった。

「へっ、まあいい。じゃあな、稀代の不燃ゴミ〜」



その時、後ろからギーッと言う音がした。

金属製の扉が重々しい開く時のようなその音に、看守は目を見開いて振り返った。


そこには、鉄格子から外に出た罪人、エルダ・カーミラ、もとい闇喰らいの邪神がいた。

血のように赤い瞳で看守を見つめる邪神は不敵な笑みを浮かべており、ボロ布のような囚人服と相まって、怪物が解き放たれたような、そんな恐ろしい気配がした。


看守は急いで携帯していた剣に手を伸ばし、抜刀すると躊躇(ためら)いなく邪神に斬りかかった。看守の目に映っているのは人間の少女でも、大罪人でも無い。何かもっと強大な何かだ。


看守は渾身の力で剣を振り下ろした。その太刀筋は一流のそれだった。


邪神は周囲の闇の渦を右手のみに集中させる。

高圧縮された闇は右手だけではあるが鋼鉄並みの強度を持ち、看守の渾身の一撃を容易に防いだ。


「バカな、俺の攻撃を、片手だけで防ぐだと......?」


邪神はそのまま剣の刀身を掴み、軽く力を込めた。すると刃の鋼鉄に亀裂が入り、容易く砕けた。

武器を失った看守が呆然としている中、邪神は腕を横に薙いだ。すると看守の頬にわずかに傷が付き、そこから微かに血が流れる。


看守は腰を抜かして尻餅をつきながら後退する。


「来い、ミノ......」

ミノタウロスを呼ぼうとした看守の口に黒い闇がまとわりついて口が開かなくなった。

闇は次第に広がり、顔の目以外を全て覆った。


息が苦しくなった看守はもがき始める。

恐怖によって涙が出そうな、救いを求める目を邪神に向ける看守に対し、邪神はが口を開いた。


「地上まで道案内をしろ。そうすれば生かしてやる」


邪神の言葉に看守は涙目になりながら、大きく首を縦に振った。


その瞬間、顔に張り付いていた闇が消え去り、看守は咳き込んだ。



「......案内する」

看守は囚人達を案内し始めた──




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