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最弱の邪神は悪役令嬢に転生しても世界を支配したいようです  作者: 米西 ことる
第一章 冤罪なので脱獄したいようです
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邪神、怪物と出会う

邪神は目が覚めた。


元の体では睡眠を必要としなかった邪神にとって、睡眠自体が新鮮なものだった。


邪神は大きくあくびをすると眠気まなこな目を擦ってゆっくりと起き上がった。藁の上で眠っていたため体が痛い。

アリシアはすでに起きているようで、じっとこちらを見つめていた。


「どうかしたのか?」

邪神はアリシアに訊ねた。


「やっぱり、こっちが見えているんですね。夜目が効くとは便利......」


邪神は誇らしげな顔をした。

「そう、我には闇を見る目の力がある」



説明しよう、邪神の持つ目はどんなに暗い状況でも鮮明に物を見ることができ、さらに生物や空間に漂う闇を視認することができるのだ。

屋敷にやって来た騎士達が近づいてくるのが分かったのもこの闇を見る目の力である。


「そんか便利な力があるんですね......!」

アリシアは目を輝かせており、邪神は誇らしげな顔でドヤった。


「ふん、まあいい。とにかく脱獄を......」

と言いかけた時、邪神の腹がなった。


「なんだ、この音は!?」

邪神は自分自身からなるこの音を始めて聞いたため驚いた。


「お腹空いたんですね。そろそろ看守がご飯持って来てくれるはずですよ」


すると足音が近付いて来て、やがて二人の牢の前で止まった。看守はランプを持っており、アリシアはやっと邪神の姿が見えた。


「おら、囚人ども飯だぞ」

茶髪で耳にピアスをジャラジャラとつけた男が邪神の牢の前に少しカビているパンとコップ一杯の水を置いた。


「ほら、ちゃんと食えよ、ゴミども! はははは!」そう言うと男は去っていった。



「あれが看守とやらか? 奴め、ここを出たら真っ先に滅ぼしてくれよう!」


「あれは看守の中でも嫌われてる問題児らしいです......邪神の貴方には、このパンは合わないと思いますけど、生きるためには......」


アリシアが言い終わる前に邪神は固いパンを食べていた。


「............う、うまい!」

邪神は目を輝かせていた。


「.......えっ」


邪神は元の肉体の時には味覚と痛覚が無く、睡眠を必要としない体だったため闇の味しかわからない。


しかし、転生し人間の体となった邪神ははじめて生物の味覚を体験し、その衝撃がこの固くて少しカビた不味いパンを美味しいと感じさせたのだ。



アリシアは当然美味しい訳が無いこのパンを美味だと言って食べる邪神を見て思わず笑った。  

「ははは、貴方はやっぱり面白い人ですね」


「ん? だから、我は邪神だと......というか、貴様痩せているようだが、ちゃんと食べているのか?」


「ああ......ここ最近、あまり食欲が無いんですよね」


「ちゃんと飯は食べるのだぞ。そうでなければ美味な闇も育たない!」


アリシアには邪神が何言っているのかよくわからなかったが、とりあえずパンを食べることにした。


「よし、脱獄の案を考えるぞ!」





 まず、この【闇の底】と呼ばれる牢獄から抜け出すためには一箇所しか無い出口から出る必要がある。なぜならばここは地下深くにあるため地面を掘って逃げることも出来ず、さらには手錠によって魔法が使えないからだ。


しかし、出口は看守以外が通れないように強固な結界魔法が施され、さらには出口の近くには番犬代わりに二体の大型の魔物が置かれているため魔法が使えない生身の人間ではとうてい太刀打ちできない。


さらに、この地下牢獄は迷宮となっている為、ルートを知らなければ出口にすら辿りつけない。迷宮内部にも魔物が徘徊しており、それに遭遇すれば間違いなく死亡するだろう。


「ふむ......かなり難しいな」


「邪神の力でこの牢獄を壊したり出来ないのですか?」

アリシアは指摘した。


しかし、現状それは不可能である。

邪神は勇者との戦いでかなり魔力を消費し、さらには転生の禁呪を発動させたことで魂までもが摩耗した状態。

故に現在は前世の残りカスを煎じて水に入れた程度の力しか残っていない。

つまり現状は暗いところが見えて多少の闇を操れる一般人である。


そして、アリシアの方も得意とする魔法を封じられている為、ただの少女にすぎない。


「その手錠を外すためにはどうすれば良いのだ?」邪神はアリシアに訊ねた。


「手錠の鍵は地上で厳重に保管されていて、さらに破壊も不可能。つまりは外せません」


「ふむ......いや、待てよ」


邪神は周囲の闇を指先に集め、その闇を手錠の鍵穴に入れて捻った。

すると、手錠が外れた。


「おう、外れた」


「えっ?」暗くてよく見えていないが、鍵の開錠音が聞こえたアリシアはこの状況に驚いていた。


「ふむ、小さめならば闇の力を使えるようだ」


「いやいや、その手錠は魔法を封じるはず!」

アリシアは驚いていた。


「我の闇の力は魔法では無く【神性(しんせい)】。この手錠の効果範囲外だったようだな」


「よし、お前の手錠を外せば今の我よりは戦力になるだろう。今この牢から出てそっちに......」


その時、こちらに近づいてくる足音がした。しかし、先ほどの看守のような軽い足音では無い。もっと大きな地響きに近い足音だ。


アリシアは焦った声を出した。

「まずい、今は外に出ないでください」



しばらくして、邪神の目の前に現れたのは巨大な魔物だった。背丈は三メートルはあり、二足歩行をする牛の胴と頭を持つ怪物、ミノタウロス。

迷宮の徘徊者にして番人であるこの魔物は牢から出た罪人を手に持っている巨大な両刃斧で八つ裂きにする。


牢から出る方が地獄だとさえ思える戦慄の気配を漂わせたこの魔物は、邪神の方を"黒く濁った目"で睨み、空気が震えるような唸り声をあげる。


しかし、邪神は自然と口角が上がった。

彼女は目の前の怪物に恐怖を感じなかった。


怪物は一瞬動きを止め、牢屋の中を見た。そして、邪神の手錠が"掛けられたまま"であることを確認するとその場を去っていった。



足音が過ぎ去り、アリシアは安堵の息を漏らす。「はあ、どうなることかと思った」


「ああ、手錠をもう一度つけておいて正解だった。今の我では奴に勝てない」


アリシアは疑問に思ったことを訊ねた。

「......どうして、あのミノタウロスを見て笑ったの?」


「............なぜか、懐かしい気配がしたのだ」



邪神が処刑されるまでまであと二日──


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