邪神、ダンジョンボスに遭遇する
四階層、このダンジョン内で人類が到達した最終地点。この階層は白い砂岩で覆われており、ここの魔物は全てC級以上。ボスはA級モンスターのクラーケンだ。
「この階層はトラップが非常に多い。気をつけよう」
リアニスがそう伝えた時、三人の目の前に一体の魔物が現れた。
その魔物は人型で、全身が甲殻類の殻のようなもので覆われ、蝙蝠の皮膜のようなもので出来たマントを羽織り、骨の大剣を持った騎士のような姿の魔物だった。
その存在は異質そのもの。空間に漂う圧は、地下牢獄にいたミノタウロスを軽く凌駕する。
その魔物は言葉を発した。
「久しぶりだ。四階層まで人間が来るなんて」
ラテが三人の前に出た。
「貴様は、誰だ?」
「私は、何という名だったか......今は【深淵湖の騎士】とでも名乗っておくか」
「お前、見たところかなり強いな。本当にこのフロアのモンスターか?」
「ああ、私は本来、五階層にいる。このダンジョンの守護を任された存在だ」
「つまり、お前が"ダンジョンボス"か」
「ああ、それだ。クテーア様が死んで以来、私に会いに来るものが誰一人いなくてな、しかも、このダンジョンのモンスター私以外に喋らないし......もう長いこと喋っていない......」
「なるほど、貴様は、クテーアの直属の眷属だな。まあ、とりあえず......持ち場に戻れ!」
「ああ、そうさせてもらうよ。まさか、徘徊していたら、四階層で人に会うなんてね......じゃあ、私はこれで。生きて辿り着いてくれよ」
そう言い残すと、ダンジョンボスは転移して消えた。
アリシアは困惑していた。
「何だったんでしょう......」
「いいのかい? あそこで逃がしてしまって」
「こんな場所で最終決戦というのもつまらないだろう。さあ、とりあえず進むぞ。あの孤独な騎士を解放してやろう」
四階層の探索途中、三人は地図を頼りに四階層を進んでいた。
すると周囲から骨を叩くような音が聞こえた。
小さな部屋の中、三人は四方をスケルトンに挟まれた。人間の骨や魚の骨が周囲を覆い尽くし、密集している。
ラテはリアニスに訊ねた。
「どうする? 突破するか?」
「ここを正面に行こう。そうすればフロアボスに近い」
「なら、突破口は私がつくります」
アリシアが炎の光線を放ち、高音によって前方にいたスケルトンが全滅した。
三人は急いで前方に向かい、後ろから追いかけてくる無数の骨をリアニスが撃退しつつ先へ向かった。
三人は息を切らしてなんとか駆け抜けた。
しかし、懐をまさぐったリアニスがあることに気づいた。
「地図を、失った......」
リアニスの顔が青白くなった。
トラップの場所やフロアボスの位置がわからなくなってしまった。
しかし、ラテとアリシアは慌てていなかった。
ラテはリアニスの肩を叩いた。
「先駆者は地図を持たない。未知を開くことこそが冒険というものだろう? 気にするな」
「そうですよ! 私もトラップの探知魔法は使えますから!」
「二人とも......ありがとう」
三人は今まで以上に慎重にトラップに警戒しつつ先へ進んだ。
しばらく彷徨うと、宝箱のある部屋が見つかった。
アリシアは怪訝そうに宝箱を見つめる。
「この宝箱、当たりですかね......?」
「ハズレだったら、ミミックが入っているはずだよ」
ミミックは宝箱の中に入っている擬態モンスター。邪神達はダンジョン制作では必ずミミックを配置したという。
リアニスは制止した。
「流石に、当たりがわからない状況で開けるのは......」
ラテは宝箱に近づいた。
「何を言っている、我々は、冒険者だろ!」
「た、確かに......だが、危険なトラップとかだったら......」
ラテは宝箱を開いた。
「ちょっと!」
宝箱の中身はミミックだった。
C級モンスター
ミミックが現れた。
宝箱の中の暗闇から手が飛び出し、ラテの顔を掴んだ。
ラテは真っ暗な宝箱に手を突っ込み、何かを潰した。
その瞬間、宝箱の暗闇が消えてからの宝箱のみが残った。
「一体、何をしたんだい?」
「ミミックは影の魔物のように見えるが、実際は小さな黒い魔物。ミミックの固有魔法で実体のある影を操っているだけで、宝箱の中にいる本体を倒すだけで消えるのだよ」
「初耳だよ! 本当にラテくんは物知りだね!」
三人は宝箱の部屋を後にした──




