邪神、呪いを知る
ゴブリン討伐のため、三人は街の近くの洞窟へやって来た。洞窟の前には三体のゴブリンが見張りをしている。
「一斉に飛び出して、それぞれ一体ずつやるか」
ラテの提案に全員が賛同し、物陰から一斉に飛び出した。
ゴブリンが驚いたのも束の間、仲間を呼ぶ暇すら与えずに三人は一斉攻撃を仕掛けてゴブリンを討伐した。
ラテはリアニスの動きを見て感心していた。
『さすがはA級冒険者。良い動きだ。今の我よりも強いかもな......』
「では、洞窟の奥まで進もうか。後衛のアリシアくんは支援を頼む。前衛の私とラテくんでゴブリンに斬りかかろう」
「うむ。わかった」
三人は洞窟の奥へ気配を隠しつつ進んだ。
暗いところでもはっきりと見えるラテの目は洞窟内では特に役立った。
順調に進んでいき、見つけたゴブリンは手当たり次第に倒していく。
リアニスに斬られたゴブリンは、死んだことにすら気づいてないのか、恐怖に顔を歪めることなく即死している。
アリシアが念和して来た。
『私、リアニスさんの動きが捉えられないです』
『我も視界に捉えることが出来る程度だな。この強さは、勇者一行の戦士を彷彿とさせる』
勇者一行の一人、戦士ゼーア・ダムナート。
彼は素でミノタウロスの十倍の耐久力とスタミナを持ち、怪力を持つ大男であった。さらに類稀な武の才を持ち、百の武術を修め、勇者でさえ近接戦では負けることもあった。
彼女の剣技はゼーアの神業に近い。
ラテは少し思い出した。
『ん? そう言えば、ダムナート......』
アズが念和に入って来た。
『あいつの名前、リアニス・ダムナートじゃなかったか?』
『......あっ!』
ラテは声に出して訊ねた。
「貴様は、勇者一行の一人、ゼーア・ダムナートの子孫か?」
リアニスは非常に驚いた様子で動揺していた。
「ああ、実はそうなんだよ......実家には勘当されているのだけどね......」
「勘当って、何かあったんですか......?」
「まあ、それは後で話そうか」
三人の目の前には巨大なゴブリンがいた。
C級モンスター
ゴブリンジェネラルが三体現れた。
「三体か。一人一体倒せばいけるか」
「大丈夫かい? 相手はC級モンスターだよ?」
「安心しろ。この程度なら余裕だ」
ラテは地面を強く蹴り、ゴブリンジェネラルの頭上まで跳躍し、闇の大剣を具現化して真っ二つにした。
アリシアは赤い炎の光線でゴブリンジェネラルの頭を貫いた。
「強いね、君たち」
リアニスはいつの間にかゴブリンを細切れにしていた。
「貴様もな」
「お褒めに預かり光栄だ」
「剣ってそんなに速く振れるんですね! 誰かに教わったんですか?」
アリシアは興味津々な様子でリアニスに近づいてじっと見つめた。
リアニスは少し顔を赤らめて僅かに視線を逸らした。
「私の師匠は近くの街で騎士長をしている人だよ。家から勘当されて食いぶちに困っているところを助けてもらった恩人だ」
ラテは先ほどの会話を思い出した。
「そう言えば、どうして実家から勘当されたんだ?」
「ああ、それは............」
リアニスは言い渋っている様子だった。
「言いたくなければいいが......」
「いや、君たちとは仲間になりたいからね、ここは話させてもらうよ」
リアニスは来ていた鎧を脱いで上の服をめくった。
服をめくったことによって見えた彼女の腹には奇妙な魔法陣が刻まれていた。
「この魔法陣は【邪神の呪い】先祖の戦士ゼーアが受けた、末代まで残る呪いだ。この呪いを受けた者は最期には怪物と成れ果てる。私はあと二年くらいは持つから、それまでは生きて、時期が近づいたら自害する予定だ」
二人は沈黙した。
リアニスは誤魔化し笑いをした。
「ごめんね、急にこんな話してしまって......ただ、あと二年は平気だからさ」
その光景を見ていたアズがラテとアリシアに念和した。
『......この呪い、【水底】が原因だな。奴らしい、悪趣味な呪いだ』
『.......ラテ様、リアニスさんを助けることは出来ませんか......?』
『難しいな。あの呪いは非常に強力だ。今の我の力では引き剥がせない。おそらく、奴も死ぬことになる』
アリシアは暗い表情をした。
「リアニス、貴様はなぜそんな大層な秘密を我々に話した?」
「......この呪いがあるから、あまり大切な人を作りたく無くて、ずっと一人で過ごして来たんだけど、恥ずかしながら、突然寂しくなってしまって......仲間と、一度でいいから冒険をしたいと思ったんだ......」
ラテはリアニスに微笑みかけた。
「そうか......なら、今回のダンジョン依頼、我ら三人で完全攻略を目指してみないか?」
「え、でも依頼は魔物の掃討だけだよ」
「挑むのはお前の呪いの元凶、【水底の邪神】クテーアのダンジョンだ。何か呪いを解く鍵が見つかるかもしれない。やってみる価値はあるだろ?」
「......! やるよ。完全攻略を目指す、協力してくれ!」
「無論だ」
「もちろんです!」
こうして、三人はダンジョン【深淵湖】の完全攻略を目指すのだった──




