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最弱の邪神は悪役令嬢に転生しても世界を支配したいようです  作者: 米西 ことる
第二章 邪神が冒険者になりたいようです
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邪神、巨狼を討つ

隻眼の巨狼はキラーウルフの突然変異体。


魔物の発生メカニズムや突然変異の発生率の高さについてはまだ未解明な部分が多いが、この個体のように巨大な体躯を持って生まれてくることがある。


巨大に見合ったパワーとスタミナ、そして群れを統率する知能の高さ。この怪物はすでにB級冒険者を食い殺している。


その時に付けられた顔の傷が由来して、隻眼の巨狼と呼ばれている。


巨狼は人間の脆さを知っていた。餌であることを知っていた。ゆえに、気づいていなかった。

目の前の存在が、かつて世界の支配者の一角であった邪神であることを──




 巨狼は強靭な脚力で一瞬にしてラテとの間合いを詰め、鋭い牙の生えた大口を開き、頭を噛みちぎろうと襲いかかった。


しかし、その牙は堅牢な闇の衣によって防がれ、傷をつけることは無かった。

動揺した巨狼はすぐさまラテから離れて合図をして逃走を図った。


「つまらん」


ラテは逃走する巨狼の正面まで一瞬で移動し、闇の剣を大剣に変えて縦に振るった。


一刀両断され、縦に真っ二つにされた巨狼は沈黙し、倒れた。


有象無象なキラーウルフはアリシアがすでに倒していた。



アリシアは狼の魔物に襲われていた少女に近づき、しゃがんで目線を合わせた。

「大丈夫? 怪我はしてない?」


「うん......ありがとう」

小さな少女は涙目になりながら感謝を述べた。


ラテは立った状態で小さな少女に近づいた。

「冒険者でも無いのに、森に近づくのは危険だと言われていただろう?」


「ごめんなさい......お母さんが病気で、薬が必要だったけど、薬草採取の依頼を受けてくれる人がいなくて......」


「そう言うことなら、これをやる」


ラテは薬草を手渡した。

薬草は少し多めに採取しているので問題は無い。


「薬は作れるの?」


「うん。お父さんが作れる! ありがとう!」


ラテとアリシアは小さな少女を連れて街へと帰還した。

街に入ると、一人の男が衛兵と話をしていた。


その光景をみた少女は「お父さん」と男を呼んだ。


こちらに気づいた男はすぐに駆け寄ってきた。

「アンナ、お前、勝手に街の外へ出たのか?」


「ごめんなさい......」


少女の父親は、彼女が薬草を持っているのに気づいた。

「お前、母さんのために......ごめんよ。でも、危ないことはだめだ」


ラテは父親の方を見た。

「その子供、魔物に襲われていたぞ。あまり目を離してやるなよ」


「......! はい、気をつけます。あなた方が娘を助けてくれたんですよね、本当にありがとうございます!」


アリシアは照れていた。

「お礼なんて......」 


「良ければ、料理を振る舞わせてください」


料理という言葉にラテは食いついた。

「ほお、料理か。貴様、言質はとったぞ」


「とりあえず、ギルドに寄ってからにしましょう」


アリシアの提案に従い、二人はギルドに寄ってから料理をご馳走になることにした──




 二人がギルドに寄って薬草を渡すと、受付嬢は驚いた顔をした。


「あの森の付近で狼の魔物が現れたので、注意勧告があったはずなんですが、これはどこで?」


「注意されたエリアから少し離れたところで採取しました」

アリシアは説明した。


「すごい度胸ですね......初心者冒険者とは思えない......」


「あと、ついでに魔物を狩ったのだが、買い取ってもらえるか?」


「はい。勿論です。ちなみに狩った魔物はどこに......?」


ラテは空間収納魔法から隻眼の巨狼の死体を取り出した。


「それは、使い手が稀有な空間収納魔法! しかも、これB級モンスターの隻眼の巨狼じゃないですか!」


受付嬢は空いた口が塞がらず、ラテとアリシアを交互に見つめていた。


「凄いです! これはランク昇級案件ですよ! ギルドマスターを呼んできます!」


受付嬢はすぐさまギルドマスターを呼びに向かった。


しばらくして受付嬢とやって来たギルドマスターは褐色の快活そうな大男で、巨狼を見て驚いていた。


「まさか、こいつがE級冒険者にやられるとはな......お前らには昇級試験を受ける資格があるぜ」


冒険者は昇級試験を受けることでランクを上げることが出来る。


「ほう、なら受けてみるか」

「私も受けます!」


ギルドマスターは嬉しそうに見えた。

「強い冒険者が増えるのはいいことだ! 試験官はこのグランツ・リッヒが引き受ける。次元の間に狩って来た魔物の査定とかしておくぜ」



こうして、二人はC級昇格試験を受けることになった。

そんな二人を訝しげに見つめる人物がいた。




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