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最弱の邪神は悪役令嬢に転生しても世界を支配したいようです  作者: 米西 ことる
第一章 冤罪なので脱獄したいようです
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邪神、まともな飯を食う

 心地よい爽やかな風に吹かれ、邪神とエルフは歩みを進めていた。


「こうして邪神様と歩けているだけでも、なんだか嬉しいです!」

アリシアは嬉しそうに微笑んでいた。


「......心地よいという気持ちは、何となくわかるな」邪神の口角が自然と上がっていた。



聖都への道すがら、イアズァールの助言により、冒険者と呼ばれる職業になることで旅を円滑に進められると知った邪神一行は、別の街で冒険者ギルドに立ち寄ることにした。


冒険者になることが出来れば旅費の確保や身分証を手に入れることが楽になるからだ。



「そういえば、話変わるんですけど、邪神様が二柱もいると、どっちの邪神様なのかわからなくなるので、呼び方を決めませんか?」

アリシアは二柱に提案した。


闇喰らいは顎に手を当て考える素振りを見せた。

「......なら、我のことはラテと呼べ。そして、この脳筋邪神は......燃えるゴミと呼べ」


「誰がゴミだ! ......とりあえず、イアズァールじゃ呼びずらいだろうから、俺の呼び名はアズにしろ」


「はい。ラテ様、アズ!」


ラテが敬語なのに対し、自分は呼び捨てなことが少し釈然としないアズであったが、特に何も言わなかった。




 道は長いため、道中、邪神達は野宿をすることにした。食料採取のため、二人は小さな森の中に入る。


「それにしても意外です。邪神は略奪行為をすると両親からは聞いていましたけど、ラテ様はそのようなことをしないのですね」


初めの街は混乱状態であった為、火事場泥棒は容易であったが、ラテは盗まなかった。


「我の支配下にあるのは人間の闇だけ。そいつらの持つ財産などには興味がない。まあ、お前の元いた場所は略奪が生きがいみたいな邪神に昔は支配されていたから、そのせいだろうな」


「そう言えば、同じ邪神様でも、行動指針がまるで違いますよね。対立することは無かったんですか?」


「あったぞ。しかし、かつては邪神同士で同盟を組んで善神と対立していたのでな、本格的に争うことはしなかった」




アリシアは元から森育ちのため、慣れた手つきで木の実や薬草を採取していくが、ラテは人間の食料を探すという行為をしてこなかった為か、不慣れな手つきでアリシアを手伝った。


幸い、季節が収穫時期であるため、森の恵みは豊富だった。


邪神は森の奥の方まで向かい、そこで木の実を採取していると、ツノの生えた兎の魔獣が突進して来た。


ラテは自らの持つ巨大なオーラを完全に隠しているため、攻撃性が高い魔獣は警戒せずに近づいてくる。


「こいつは、食えるか......」


ラテは闇で短剣を生み出し、素早い身のこなしで一撃で魔獣の急所を貫いた。



日が暮れ始め、アリシアは調理を始めることにした。

採ってきた木の実や薬草をエルダ・カーミラの屋敷で手に入れた鍋に入れて魔法で火を起こし、火加減に注意しつつ煮込んでスープを作る。


ラテは刈った魔獣を闇を刃物のようにしてアリシアの助言を受けながら解体し、アリシアは火を使って調理した。

そして、今食べない分は干し肉にするため燻製してから持っていくことにした。


「おおー、これは、とても良い匂いに感じる!」

ラテは目を輝かせていた。


「ラテ様の初めてのちゃんとしたご飯なので、頑張って作りました!」

アリシアはえっへんと言いそうな顔をした。



ラテは早速アリシアの作った料理を口にした。


「ぐっ......なんだ、これは、地下牢で食ったのよりも、はるかに美味く感じる! アリシア、貴様は天才だ!」

ラテはとても嬉しそうな表情をした。


それを見ていたアリシアも嬉しい気持ちになった。

「ありがとうございます!」


「......なんか、俺も食いたくなってきた」

イアズァールが悔しそうに言った。


「貴様は封印されてるからこのうまい飯が食えないな! はははは!」


「ぐぬぬ」



アリシアも手を合わせ、祈ってから夕食を食べ始める。


「お前、まだ善神に祈ってるのか?」

アズがやれやれと言った口調でアリシアに言った。


「ああ、ごめんなさい。生まれた時からやっていたから、習慣化してしまって......邪神様に祈った方がいいんでしょうか.......?」


「............まあ、貴様も幼い頃は善神の加護を受けた地にいたようだし無理は無い。ただ、貴様はいま我の従者だ。だから、あまり我以外の神に祈らないでくれ」




アリシアは少し沈黙して自身の記憶を巡らせた。


「思えば、地下牢にいたあの時、私は灰色の世界の中で、死んでいました。でも、ラテ様によって色づいた世界に再び生き返らせてもらいました。だから......」


アリシアは一拍おいて声を発した。


「生まれ変わって、過去の憎悪も、信仰も、全て忘れて、今のラテ様の従者になると、改めて覚悟を決めました」



アリシアは地面に善神ガイエイラの紋章を描き、その前で祈った。


それは誓いを破ることへの贖罪。

信仰を止め、与えられた恩恵を神へと返還する儀式だ。


その恩恵は神聖魔法と呼ばれる、神の力の断片。いわば善神からの加護である。


しかし、恩恵の返上だけでは贖罪は成立しない。それに加えて寿命の半分を善神へと返上する必要がある。


アリシアは少し躊躇うが、ラテ達の制止も効かず、覚悟を決めているため贖罪を行なった。


紋様が光輝き、眩い閃光がほとばしり、そして......



光が収まり、完全に消えた。


アリシアは神聖魔法を使おうとするが、発動しない。しかし、脱力感のようなものも特段無かった。


「お前な、いきなり神聖魔法を返還する儀式するなよ!」

アズが怒った口調でアリシアに言った。


「ごめんなさい。でも、こうでもしないと折り合いはつけられないと思ったので............」



しかし、特段体に変化はない。


アズが言った。

「お前の寿命は減ってねえよ。俺の寿命を持っていかせたからな」


「え......!?」



「お前の寿命の半分なんて、俺ら不老不死の神からすると関係ねえ.............ただ、ビビるから制止くらいは聞けよ」


アズは寿命、言ってみれば生命の根本的な核となる魂の持つエネルギーを肩代わりした。



「......ありがとうございます、アズ」


「......おう」


ラテはアリシアの元へ近づいた。

「見事な忠義だアリシア。だが、生命の寿命は短いのだ、たとえ長寿のエルフであろうとな......だから、相談もせずにそんなことはするな」


「......すいません」

アリシアはしょんぼりとした顔をした。


「あまり気にするな。さあ、飯を食おう」


二人は暖かなご飯を平らげた。



 しかし、ラテには気になっていることがあった。


かつての善神達は祈りを与えるものに恩恵を与え、信仰を変える者からは恩恵を返してもらうだけだった。


いつから、寿命の半分などと言う大きな代償を支払わせるようになったのか.......ラテは考えていたが、転生までの間に善神が変わってしまったのでは無いかと思った。



夕飯を食べ終え片付けが終わり、二人は焚き火をゆっくりと見つめていた。

そんな時、アリシアがラテに話しかけた。


「ラテ様は、一体どうやって世界を支配するつもりなんですか? ......人を、大勢傷つけて、恐怖で支配する.......みたいに」


「......我は、無闇に人間を傷つけるつもりは無い。ただ、武力行使はある程度は必要だと思っているがな。我の目標は全人類に我を信仰させることだ。我の闇喰らいの力は触れられる者か、信奉者にしか使えない。ゆえに、我を信仰させて契約し、人間どもから溢れる闇を我が食うシステムをつくれば、人間どもの蛮行も無くなるだろう」


「......それはつまり、全人類に【誓いの碑(アーク)】に名を書かせるということですか?」


誓いの碑(アーク)】とは、神と人間との契約の証。

人類は誓いの碑に自身の名を刻むことで神の信仰を証明する。


神と誓約を交わした者は、神の信仰の代わりに、恩恵と神の与える魔法を使えるようになる。


ラテの言う世界の支配とは、人族・魔族共に、誓約を誓わせ、その者たちの身から溢れる余分な闇を喰らうというものだ。



「だがな、この案は欠点がある。知的生物の持つ闇はそれぞれ別の色や特徴、言うなれば正義や、種族特有の特性があるから、全てを完全に支配下におくのは難しい。だから、アリシア、お前にももっと最良の方法が無いか考えてほしい。我は全知では無いからな、もっと様々な知見を得ねば世界の支配は完遂できない。協力しろ」


「喜んで......!」



そうして話し合っている内に、夜は更けていった──



アズはずっとミュート状態でその会話を聞いていた。

「闇喰らい、やはりお前は、半端者だ」



第一章まで読んでいただきありがとうございます。

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