邪神、ストーカーが出来る
現在、街はイアズァールの封印解除による混乱が残っているため、街の騎士の大半は広場に出払っており、領主邸に護衛はほとんどいない。
この混乱に乗じて、ハゲた大男が領主邸でニヤニヤしながら貴金属や酒を盗んでいた。
「へっへっへ、なんかやべえことが起こってたが、ラッキーだぜ。これでしばらくは贅沢できる!」
男は領主邸の中でもひときわ暗い、地下の酒蔵の中で窃盗品を詰め込んだ袋を背負ってその場を立ち去ろうとした。
すると盗人の前に一人の騎士が現れた。
その騎士は前日、邪神を連行した時に騎士長と呼ばれていた人物だ。
騎士長は金髪金眼の美丈夫で、鎧に青いマントをつけた姿をしている。
騎士と遭遇して慌てた大男だったが、相手がたった一人であるとわかると、ニヤリと笑みを浮かべた。
「おいおい、たった一人でこの俺様を捕まえようとするなんて、馬鹿だな! 俺様はBランク冒険者を素手でのしたことがあるんだからな!」
大男は窃盗品を入れた袋を地面に置くとファイテングポーズを取った。
しかし、騎士は大男の方を見ているわけでは無かった。大男の後ろにいる黒い闇に紛れた何かを見ていた。
大男はそんなことはつゆ知らず、騎士に殴りかかったが、騎士は大男を裏拳で一撃で気絶させると何かの方へ剣を向けた。
「そこにいるのは、誰だ?」
その時、黒い闇の中から顔が現れた。
青白い肌をした、笑顔を模した肉の仮面が、黒い闇の中に浮かび、騎士を見つめていた。
「もしや、魔王の手先だな。どのようにしてここに入ったかは知らないが、ここで死んでもらう」
騎士は素早い身のこなしで白い仮面を即座に斬りつけ、仮面は縦に裂けて赤い血液が飛び散った。
「ザンネン......」
それと同時に、倒れていた盗人の顔が縦に裂け、赤い血が飛び散った。
「損傷を共有させたのか......?」
床、壁、天井、あらゆる闇の中から無数の白い肉の仮面が現れ、貼り付けた笑顔で騎士を見ていた。
「ワタシはただの、暗いところが好きなだけの無害な魔物です。この街に溢れていた巨大な暗がりに釣られてやって来ただけの......」
「もしや、先ほどの天変地異について何か知っているか?」
「ああ、あれは邪神二柱が戦っていたんですよ。闇喰らいと灰炎がね。フフフ、話していたらあの闇をもう一度見てみたくなりました。では、ワタシはこれで......」
その瞬間、騎士は感じていた悍ましい気配が消えるのを感じた。
その直後、前日捕らえた大罪人、エルダ・カーミラが闇喰らいの邪神を自称していたのを思い出し、体が少し震えた。
「......まさか、本当に復活したというのか......?」




