悪役令嬢エルダ・カーミラ
地上は数刻前の邪神達の戦いの影響で未だ混乱していたが、罪人である邪神達からするとそれは好都合だった。
そして、邪神はどうしても行っておきたい場所があった。それは邪神の体の元の持ち主、エルダ・カーミラの屋敷である。
好都合なことに、現在は誰も見張りがいないため、容易く侵入出来た。
広い屋敷内を歩き、邪神とアリシアは復活した時のあの部屋に来ていた。
「ここに、何かあるのですか?」
「ああ、この体の前の持ち主のことを知っておきたくてな」
幸いなことに、部屋には特段押収されたものは無かった。
邪神は「邪神様へ」と書かれた紙を手に取り、裏に書かれた魔法陣をイアズァールに見せた。
「これは......善神と邪神のシンボルを組み合わせたような.......だが、おそらくお前のシンボルでは無いか? 闇っぽいのあるし」
「私もそう思います!」
「これは我のシンボルか......我の復活を企ていたのか?」
邪神は紙の下にあった本を手に取り、中身を読んだ。
読み終えた邪神は静かに本を閉じ、机の上に戻した。
「何が、書かれていたんですか?」
アリシアが訊ねた。
本のあるページに、邪神に向けて書かれたメッセージがあった。
邪神様へ
時期に、私は大罪人となって捕まり、処刑されることになるでしょう。その罪はきっと、国家反逆罪、または邪神の封印解除などもあり得るかもしれません。
ですが、私は無実です。
こうなったのは、私がこの国の【禁忌】を知ってしまい、前々から目をつけられていたのが原因でしょう。
おそらく私を陥れた犯人は王か公爵、協力者は魔法学園の学園長、あとは聖女の可能性があります。
私は、貴方の不完全だった転生の禁呪を成功させます。私の死後、体も遺産も好きに使って貰って構いません。ですが、その代わりに、私の無実を証明してください。
エルダ・カーミラ
邪神はため息をついた。
「......復活の礼だ。世界を支配する前に、まずはお前の無念を晴らしてやろう。エルダ・カーミラ」
邪神は何かの手掛かりになると思い、その本を持ち出すことにした。
邪神はほぼ布切れと化したボロい囚人服を着ているため、エルダの屋敷にあった服を借りて服装を着替えることにした。
邪神は黒と白を基調として西洋貴族風の服装になり、アリシアは本人の要望でメイド服を着た。
そして、その他の旅に必要な物を片っ端から集め、邪神の空間収納魔法でしまった。
邪神達は地下へと向かいつつ、話をしていた。
「そう言えば、この屋敷の者はどこへ行ったんだ? まさかエルダ・カーミラひとりでこの広い屋敷に住んでいたわけでは無いだろう?」
イアズァールが言った。
「そのまさかだ。一月前にカーミラ家の者はエルダ以外全員死んでいる。残った従者達もエルダが解雇したらしい」
「なら、お前の結界の管理はエルダ・カーミラ一人で行っていたのか?」
「そうだ。まあ、そのお陰なのかはわからないが、近頃は封印が緩んでいて、地下牢内のミノタウロスとかに取り憑いたり出来た」
「......その結界、たった一月で脆くなるようには思えない......おそらくはエルダの冤罪に関わるのだろうな」
屋敷の地下に行くと、そこには大きな金庫があり、本に書かれていた番号で開けてみると、なかには貴族らしく金銀財宝があった。
中の金品を空間収納魔法に詰めていると、一つ気になるものがあった。
それは錆びた剣。
見てくれはどう見ても鈍だが、秘めた力を感じる。
邪神はそれも回収することにした。
鞘に入った剣を空間収納魔法に入れようとすると、閃光と共に弾かれ、中に入れることが出来ない。
「仕方がない、我が持つか」
邪神は鈍の剣を腰に携えた。
屋敷を探索している中で地図を発見した邪神は、それを机の上に広げ、アリシアも机の方に近づいた。
アリシアは冒険に瞳を輝かせ、食い入るようにそれを見た。
「次の目的地はどこにするんですか?」
「ああ、次の目的地はここだ」
邪神が指差したのは聖都と呼ばれる場所だった。
現代の聖女が活動拠点としている、大聖堂のある巨大な都市だ。
「エルダ・カーミラの手記にも名があったのでな、まずは聖女に会いに行くぞ!」




