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進撃の熊  作者: 赤虎鉄馬
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第6話 「拡散」



テレビ局のスタジオは、混乱に包まれていた。

ディレクターがヘッドセットを外し、額の汗を拭いながら叫ぶ。


「中継を止めろ! 放送事故だ!」

「無理です! 視聴率が跳ね上がってます!」


モニターには、ショッピングモール内の惨状が生々しく映し出されていた。

悲鳴。血。逃げ惑う群衆。

一人、また一人と倒れ、画面の端で巨大な影が悠然と歩く。


キャスターの顔は青ざめている。

しかし口は笑顔を作ったまま、原稿を読み上げる。

「えー……現在、現場では警察が対応を――」


その背後で、モニターの中の女性が熊に捕らえられ、壁に叩きつけられた。

スタジオの空気が凍りつく。

生放送を観ていた全国の視聴者も、同時に息を呑んだ。



SNSは瞬く間に炎上した。


> 「映画の宣伝かと思ったらガチだった」

「これ、テロじゃないの?」

「銃が効かないってマジ? 誰か嘘って言ってくれ」

「うちの近所のモールだ! 家族が行ってるんだよ!」




書き込みは雪崩のように広がり、デマと真実が交錯した。

「熊は複数いる」「軍が出動した」「ウイルスに感染してる」

憶測と恐怖が混じり合い、人々は冷静さを失っていく。



行政は火消しに追われていた。

「被害は限定的です」「現場は封鎖済みです」

会見で繰り返されるその言葉は、逆に市民の不安を煽るだけだった。


テレビ局の生中継は、すでに“災害映像”から“戦場映像”へと変貌していた。

人々はリモコンを握り締め、逃げ場のない恐怖に釘付けになる。



その時、再び画面が揺れた。

カメラが生き残っていた。

血まみれのレンズ越しに、巨大な影が振り返る。


――熊の赤い目が、真っ直ぐにカメラを射抜いた。


視聴者は一斉に息を呑む。

それは獣の目ではなかった。

まるで「理解している」と告げる、人間じみた視線だった。


瞬間、SNSに新たな言葉が広がった。


> 「あいつ、笑ったぞ」





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