#5 『庭付き一戸建てモフモフとビニールシート付き』【完結】
流石のレンガ造り、外観は完璧。庭もバラで彩られていた。ポストも外構もアンティークで完璧!
(これは是非、中も拝見したい!!)
モフも激しく同意していたに違いない。ヒノキ風呂のショックでふて寝してるけど……。
ダメ元でピンポンを押してみた。
「はーい。」
(あ、出た!)
扉が開いた瞬間を見逃さなかった、俺たち。
(ん?モフ、いつの間に?)
兎に角、扉を大きく開けて、中に飛び込んだ。
「うわーーー!」
思わず大声が出てしまった。だってさ……まさかの。
中はレンガではなく、鉄筋コンクリート造り。しかも、打ちっ放しでモダン!!
これだー!もう、俺たちのやることは一つだった。
それからというもの、俺たちは来る日も来る日もそのダンジョンに通った。コンクリートの分量を計り、練り混ぜ、一輪車で運び、バケツに取って、コテで塗った。
「違う!そうじゃないやろ!!何回言ったら分かるんや!!どあほ!」
怒号が飛ぶ。
(ううっ。こぶた親方怖いよぉ~。)
でも、やるしかないんや。
(あ、親方につられて、エセ関西弁でてもうた。)
モフもバケツ運びを手伝ってくれて、朝から晩まで働いて……。どのくらい経っただろう……。あ、二か月?
「おい、お前たちこっちへ来い。」
親方がゆっくりと話し始めた。
「免許皆伝や。材料は好きなだけ持っていけ。……屋根、直るといいな。ほな。」
「お、親方……。」
俺たちはすぐさま帰った。この日をどれだけ待ちわびただろう……。
家に帰り、材料をコネて、運んで、屋根にコテで塗っていく。一塗り一塗り心を込めて。
そして、その作業は夜通し行われた。何故か妻が投光器を持っていたから……。
陽の光が差し込む中、最後の一塗りを終えた俺たちは、屋根の上に腰を下ろした。
(あ、いけね、まだ乾いてないから、座っちゃいけないんだった。)
隣を見ると、モフの足跡がコンクリートに残っている。これはこれでいいか。
足跡を残し、ムゲンソウ茶を飲みながら、乾くのを待った。表面だけなら1日で乾く。
そうそう、もうビニールシートは外した。
ビニールシート付きの家は終わったのだ。
数日経ち、完全に乾き、俺たちの旅は終わった。
あ、住宅ローンはまだ392回分残ってるけど……。
ーーーとりあえず、完。ーーー