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A級昇格推薦

お久しぶりです。よろしくお願いします。

『艦内放送。艦内放送。クルーは至急食堂まで。食堂まで来てください』


ぐうたらと自室でのんびりしていたらアイカの声が艦内に響き渡る。


「折角の休みだってのに、なんだよ」


そう言って俺は食堂へ向かうのだった。


「艦長。遅いです」


「うるせえ。今日はオフだぞ。何の用だ?」


「そうだそうだー。お酒返せー!」


「無視していたらドローンに強制連行されたぞ。せっかく新作を作っていたのに」


「おにいちゃんがくるまでひみつだって。なんだろうねー」


俺が来るなり一様に騒ぎ出すクルーたち。協調性、ってのをこいつらに求めるのは無理なんだろうな。キョウカ以外。


「で、なんなんだ?」


「ギルドからの出頭要請です」


「は?お前らまた何か問題でも起こしたのか?」


「してないよ」


「していない」


「ん-?」


「そうではありません」


「じゃあなんだってんだよ」


「Aランク昇格審査の推薦、だそうです」


「推薦?誰から」


「リサ提督からのようですね。先日のメルセデス討伐戦。旧帝国との戦闘。実績は十分だろうとのことで、推薦されたようです。やりましたね」


「リサ提督か。なんだかんだ付き合いも長くなってきたな」


「コウキ気に入られてるもんねー」


「やっかいごとばかり持ち込まれてる気がするがな」


「で、どうするんだい?」


「A級ねぇ。そういやここに元A級がいたな。A級審査ってどんなもんだ?」


「元とは何よ元とは!ちゃんと現役A級よ!……多分」


「実際どうなってるんだ?」


「ギルドのランクは艦とその艦長に付与されます。現在マリナさんは艦を所有していないので、ギルドランクは一時停止扱いですね」


「え!?私今A級じゃないの!?ハイペリオンは?」


「俺の艦だよ馬鹿野郎」


「じゃあ私の扱いどうなってるの?」


「マリナさんと、他のクルーもそうですが、現状ですと宇宙海賊ギルドBランク、ヘッジホッグ。所有者コウキ艦長。そのクルー。という扱いですね。クルーとしては特にギルドから何かあるとかはありません。クルーの問題はすべて艦長に帰属します」


「こいつらのやらかしが全部俺のところに来るってのか!?」


「クルーとして行動していた場合に限ります。ステーション滞在中等個人的な行動での問題は個人の責任です。小言は言われると思いますが。ちゃんと面倒見てあげてくださいね」


「俺はこいつらの保護者か?」


「少なくとも、艦長ではあるかと」


アイカがさらりと言う。


「艦を率い、クルーを管理し、問題が起きれば責任を取る。それがギルドにおける艦長の基本です。……A級ともなれば、なおさらですね」


「……現実を突きつけるなよ」


「事実ですので」


「……アイカ、お前はどういう扱いなんだ?」


「私は艦載AIですので、艦の備品ですね。私の行動はすべて艦長の責任となります」


「備品ってお前……」


「高性能備品です」


「ちょっと誇らしげに言うな」


「で、A級審査ってどんなもんなんだ? マリナ」


「大変だよ? B級までは実績と腕で何とかなる。でも、A級は別。艦の強さだけでも、撃墜数だけでも上がれない。“あいつに任せれば片付く”って思われて、ようやく土俵に乗る感じ」


「それだけ厳しいのに、よくお前A級まで行けたな」


「これでも凄かったんだからね? 昔のあたしは、無茶して、ちゃんと結果も出してたの。10代でA級なんて、そうそういないんだから」


「今聞くと信じがたいな」


「なによそれ!」


「で、結局A級審査ってのは何を見るんだ?」


「主に四点です。戦闘能力、任務達成実績、ギルドへの貢献度、そして、ギルドの顔として相応しいか、です」


「最後だけふわっとしてるな」


「ふわっとしているようで、最も重視される項目です。A級は単なる実力者ではありません。高難度依頼の優先斡旋対象であり、場合によってはギルドの看板として扱われます」


「つまり、強いだけの問題児はダメってことか」


「はい。もっとも、宇宙海賊ギルドにおける“問題児”の許容範囲はやや広めですが」


「やや、で済むか?」


「マリナさんはこう見えて、酒クズ以外はまともですよ? 事故で艦を失う前までは」


「その前に借金こさえてただろうが」


「裏を返せば、それだけ借りられるだけの実績と信用があった、ということです」


「ふふーん」


「うぜえ」


「ひどっ!」


「で、結局マリナはどうやってA級になれたんだ?」


「えーとね、まず実績。任務達成率が低いとその時点でアウト。で、次に依頼主からの評判。仕事できても、揉め事ばっか起こすようなのは落とされる。そこを抜けて、ようやく面談。最後に“ギルドの看板にして平気か”って見られる感じ」


「良く通ったな」


「面談の時はちゃんとお酒飲まなかったんだよ? すごいでしょ」


「普段からそうしてくれると助かるんだが」


「無理」


「真顔で言うな」


「マリナおねえちゃん、すごい?」


「すごいよー。バリバリすごい。一万人に一人の天才? そんな感じ」


「絶対盛ってるだろ」


「本当ですー。たぶん」


「雑になったな」


「実際にマリナさんは優秀です。10代のA級昇格者は全体の0.02%。一万人に一人は誇張ですが、パイロットとしては天才、と言って差し支えありません」


「ふっふーん」


「で、どんな感じでA級まで行ったんだ? 一人乗りの高速戦闘艦一機でだろ?」


「そうだねー。毎日依頼、依頼、また依頼。終わったら酒飲んで寝て、起きたらまた依頼。休みなんてほとんどなかったかな。それを二年くらいずっと。そしたら顔も売れてきて、指名依頼も増えてきてさ。“審査やる?”って軽く言われたの」


「気軽だな」


「こっちも気軽に“やるやるー”って言っちゃったんだけど、そこからが大変だったよ」


「どんなことがあったんだ?」


「まずシミュレーション。死ぬほどやらされた。護衛、殲滅、監視、救援。“お前に本当にA級の実力があるのか”って、延々見られるの。あれはめちゃくちゃ疲れた」


「それが終わったら次は書類審査。過去の依頼内容、戦闘記録、損害、依頼主の評価……全部見られるの。どんな仕事をして、どう片付けたのか、細かく聞かれてさ。しかもそれが数日続く。キッツいよー」


「それも終わって、ようやく面接。で、開口一番、“本日は飲酒されていないようですが、体調に問題はありませんか?”だよ?」


「……見られてるな」


「マジで全部見られてるなって思ったね。あの時だけは、さすがにちょっと背筋伸びた」


「ってわけ。A級は強いだけじゃ駄目なんだよ。コウキ」


「じゃあ俺、面接で何見られるんだ?」


「いっぱい」


「雑すぎるだろ」


「多分私ほどきつくはないと思うよ?帝国軍の、それも提督クラスからの推薦付きだし」


「俺シミュレーションとか自信ないんだけど」


「そもそもコウキは、私みたいな“単騎エース枠”で見られてるわけじゃないでしょ。だから方向性が違うんじゃない?」


「パイロット以外を見られるってことだろ」


「実際、艦長単独では難しいかもしれませんね。私が同行しますので、ご安心ください」


「俺、もしかしていらない?」


「艦長以外の指示には従いませんので、そういった意味では必要です」


「必要のされ方が消去法なんだよな……」


「でも実際、実績は十分でしょ。問題は“ギルドの顔として相応しいか”ってやつじゃない」


「そこが一番不安なんだが」


「大丈夫でしょ。普段通りやって、変なこと言わなきゃ」


「それが難しいんだよ」


「ご安心ください、艦長。面接想定問答の作成は可能です」


「就活かな?」


「A級昇格審査は、ある意味で就職活動に近いものがあります」


「余計不安になってきた」


「心拍数と発汗を一定値以下に抑える薬でも作ろうか?」


「殺す気か?」


「ちゃんとテストしたよ?宇宙ネズミで」


「俺はネズミじゃない」


「で、出頭要請っていつなんだ?」


「本日です」


「は?」


「正確には三時間後ですね。先ほど詳細データが届いています」


「先に言えよ!」


「本日はオフとのことだったので、少しでもお休みしていただこうと思いまして」


「余計な気を使ってんじゃねえよ!」



読んでいただき、ありがとうございました。評価、ブクマ、感想。励みになります。


次回もお楽しみに。

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