クルーは今日も暴走中
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『つくづく運のない男だな。君は』
「まったくだ。帝国が管理してる補給ステーションで、旧帝国の影が絡むなんてな。驚きだよ」
『そこは申し訳ない、としか言えんな。こちらも一息ついたところでこれだ。頭が痛いよ』
「まぁ、お互い運が悪かったってことで」
『そうだな。補給ステーションはこちらで調査しておく。では』
通信が切れる。これでやることは終わった……はずなのだが。
「うわ、なんだこのドローンの山は」
食堂がドローンで埋め尽くされていた。
「只今ドローンの点検作業中です。整備室には入りきらない分を、ここで作業中です」
「なんでまた……」
「リズさんがアップデートと称して新型プログラムをインストール。結果、すべてのドローンが行動不能になってしまいました」
「一括で管理してるんじゃなかったのか?」
「メインサーバーとのリンクが切れてしまいました。おかげで、一機ずつ点検する羽目に……」
「またリズか……」
「現在お仕置きプログラム実行中です。しばらくはおとなしくなるかと」
「あいつも懲りないな……」
――そのころリズは――
「痛い!やめて、やめてくれ!」
「ここがこってますね~。ほぐしますよ~」
「いたたたたた!悪かった!謝る!謝るから!止めてくれー!」
整体ロボットによる最強マッサージモードで、リズは全身を痛めつけられていた。
「しかしドローンが全機使えないとなると、艦を動かすこともできないな。……たまにはステーションで散歩でもするか」
こうして俺は宇宙ステーションの商業区画へと足を踏み入れた。
しばらく歩いていると、なにやら騒がしい。人だかりができている。
「おーっと!これで5人抜き!強い!まさにアルコールに愛された天使!」
「しゃー!どうよ!」
酒瓶片手にマリナが雄たけびをあげていた。
「何やってんだ?あいつ」
「これで飲酒量はおよそ5リットル!この細い体にどうやって入っているのか!?さて、次はだれが彼女に挑む!?」
「あ、コウキじゃん!こっちこっち。ただ酒飲めるよ~」
見つかった。周りも俺を見ている。期待を込めた目で。……行くしかないか。
「何やってんだ?」
「酒飲み大会。10人抜きで賞金もらえるの」
看板には「大酒飲み大会!優勝者には金一封!目指せ10人抜き!」と書かれていた。
「さあ、飲むよ!」
「俺は別に……」
しかしマリナに強引に座らせられる。
「さあ、お兄さん持ってきて!」
ドン!とテーブルの上に特大ジョッキが置かれる。これは……蒸留酒じゃねーか!
「おい!これきついやつだろ!こんな量飲んだら死ぬぞ!」
「大丈夫大丈夫。私死んでないから」
「お前本当に人間か!?」
コウキ、奮戦むなしく半分でノックアウト。
「畜生……頭痛い……」
アルコールによる頭痛で頭をおさえながら、商業区画を歩く。また人だかりができていて、騒がしい。今度は何だ?
「これぞ我が叡智の集大成!ふははははは!恐れおののくが良い!」
リズの声が聞こえる。あいつもう解放されたのか。
「これで……私の勝ちだ!」
「この俺が……負けた!?銀河一チャンプの俺が!?」
見てみると、対戦型カードゲームをしているらしい。
「ふははははは!我が叡智の前にはこの程度、児戯に等しい!これでレアカードは私のものだ!」
「この俺が負けるとは……くっ。お前がナンバーワンだ」
「はーはっはっはっはっは!君も弱くはない。ただ、相手が悪かったのさ。このリズ・ベラットに敗北の二文字はない!」
「ん?コウキじゃないか!どうだ!私の素晴らしい勝利は!」
「知らんがな」
「まだだ。これは3回勝負……ここから逆転2連勝だ!」
まだ勝負はついていないらしい。さっき対戦相手が負けを認めてたと思うが……そういうもんなんだろう。
「地獄のマッサージを受けてから非常に調子がいい!このまま勝たせてもらおう!」
白熱した勝負が続く。一進一退の攻防。そこでリズが……
「これぞ我が叡智!デスティニードロー!」
リズの右手が輝いて見える。……大丈夫かあれ?
「ふははははは!これで……トドメだ!」
「ぐわー!」
対戦相手が吹き飛んでいく。どういうゲームなんだよ……
「優勝はリズ選手!盛大な拍手を!」
ワーワーと盛大な拍手。それに答え手を振るリズ。もう何が何だかわかりゃしない。俺はそっとその場を離れて行った……
「ここは静かだな……」
俺は平穏を求め、公園に来ていた。噴水が静かに水を噴き上げている。
「しかし今日は騒がしかったな……」
思い返す今日の出来事。マリナは酒を飲み雄たけびをあげ、リズは右手が光って対戦相手を吹き飛ばした。
「……もしかして、うちのクルーってやばいのしかいない?」
俺は頭を抱えながら、静かな水の音に耳を傾ける。外は平穏……いや、今だけだろうけど。
「……いや、ほんと勘弁してくれよ」
のんびりと噴水を眺めていると、声が聞こえる。
「おにいちゃーん!」
キョウカだ。どうしてここに……
「むかえにきたの!おにいちゃんかえってこないから!」
「ん?」
気が付けばもういい時間だ。もうそんなに時間が経ってたのか。
「よし、帰るか」
俺はキョウカと手をつなぎ、ヘッジホッグへと戻るのだった……
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