激戦
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マリア・クレスト宙域、そこは激しい戦闘のただ中にいた。
漆黒の機体が帝国軍戦艦に狙いを定め、無慈悲な砲撃を叩き込む。
その狙いは正確で、一発ごとに艦体が揺れ、火花を散らした。
『くそっ、奴らの狙いが厳しい!』
帝国軍の艦長が咆哮する。
『なんだこの軌道は!?海賊諸君!こいつらを抑えてくれ!』
海賊艦隊が漆黒の機体を帝国軍艦から引きはがすために行動を開始する。
『くそ!動きが速い!追いつけない!』
縦横無尽に宇宙を駆ける漆黒の機体たち。
『舐めるな!俺たちは、ただの海賊とは違うんだよ!』
海賊艦隊が漆黒の機体をとらえ、攻撃を開始する。
『ミサイルロック、発射!』
無数のミサイルが漆黒の機体を襲う。
しかし、ミサイルはすべて目標を外れ明後日の方向に飛び去って行く。
『ロックが外れた!?畜生、レーダーからも消えた!情報通りだな!くそ!』
『奴らはステルス機だ!レーダーに頼るな!ミサイルもロックが外れる!直接砲撃を叩きこむしかない!』
『この宇宙で有視界戦闘かよ!黒くて見ずらくて仕方ねぇ!』
『これがゴーストリンク機体か!なるほど、バケモンだなぁ!』
漆黒の機体はあり得ない角度で曲がり、あり得ない速度で追撃を躱していく。
『一機で相手をするな!複数で囲め!これ以上帝国軍に近づけるな!』
必死に、海賊たちはゴーストリンク機体を追う。
海賊たちは帝国軍から漆黒の機体を引き剥がし、敵艦隊を分断に成功。
だが、敵は常軌を逸した戦闘軌道で応戦し、圧倒的な動きを見せる。
『こいつら…マジでやべえな!』
海賊たちが驚愕の声をあげる。
激戦の中、ヘッジホッグとハイペリオンが果敢に戦場の最前線で火花を散らしていた。
これからが正念場だ。勝利はまだ遠い。
漆黒の艦影が、帝国軍の戦列を切り裂くように駆け抜けた。砲火を浴びせられても、まるで無視するかのように急転回し、敵艦の懐へ滑り込む。
その異常な機動に帝国軍は追いすがれず、海賊たちが割って入り、煙と閃光の中で両陣営が入り乱れた。
「ゴーストリンク部隊、帝国軍から引きはがされました!」
「構わん。そのまま海賊どもをせん滅しろ」
「はっ!」
「現在の状況は」
「帝国軍艦四隻撃沈、海賊艦隊撃沈なし。こちらは戦艦二隻喪失、ゴーストリンク部隊損耗なし――優勢です」
「よし。このまま続けろ」
「了解しました」
戦場の遠く、ヘッジホッグ艦橋。
大型モニターには、乱れ飛ぶ砲撃の光と、回避軌道を描く黒い影が映し出されている。
「なんだか敵が俺たち狙ってねえか?」
「抹殺対象に指定されましたからね。優先的に狙ってくるようです」
アイカの無機質な声が、爆音混じりの空気を切り裂く。
「きついな。マリナ、そっちはどうだ?」
『待って、やばい、やばいって! こいつらしつこい! 逃げるので精一杯なんだけど! 助けて~!』
通信の向こう、マリナの声は半ば悲鳴だ。ハイペリオンの映像には、背後から爪のようなフォルムの機体が付きまとい、極端なGで軌道を切り返しては追いすがってくる。
「こっちも精一杯だ。ドローンを送る。何とかしてくれ」
『なんでもいいから早く!』
「アイカ、ドローン展開。マリナのサポートにつけろ」
「了解。ドローン部隊展開。マリナさんの援護につきます」
数秒後、艦底ハッチが開き、群青色の機動ドローンが真空の闇へ解き放たれた。推進光が尾を引き、黒い機体へ殺到する。
だが――
ゴーストリンク機体は速度を落とさない。ドローンの射線を寸前で外れ、逆に一機を機関砲で撃ち抜き、火花を散らせる。その動きは、人間の操縦反応ではありえない滑らかさだった。展開したドローン部隊は全滅だ。
「他の海賊に援護を頼めないか?」
「現在海賊艦隊総出で、残り四機のゴーストリンク部隊を相手取るのに手間取っています。援護は難しいかと」
「俺たちだけで二機相手をしなきゃならないってことか」
コウキは操舵席に身を乗り出し、視界の中央に二つの黒い影を捕らえる。
光を吸い込むような艶消しの装甲。僅かに発光するセンサー部が、不気味にこちらを睨みつけていた。
「よし、やるぞ、お前ら!」
次の瞬間、ゴーストリンク部隊が不規則な軌道で突入し、戦場の重力がねじ曲がったかのような錯覚が走った――。
漆黒の機影が、星間空域を裂くように駆け抜ける。
ヘッジホッグのセンサーには、ゴーストリンク機体特有の不規則で予測不能な航跡が描かれていた。推進剤噴射は断続的、慣性を無視するかのような急制動と旋回。まるで“意思”が軌道を描いているような、不気味な挙動だ。
「二時方向、接近速度マッハ七」
アイカの冷静な声と同時に、艦体が大きく震える。敵の粒子砲がかすめただけで、外殻温度が急上昇していた。
「かすっただけでこれかよ……!」
俺はモニターを睨み、回避行動に注力する。
ゴーストリンクの攻撃は予測線を引いても、その通りには来ない。センサーの補正値が意味を成さないのだ。
一方、ハイペリオンは星屑の間を縫うように回避を続けていた。
しかしマリナの息は荒く、通信越しでも焦燥が伝わる。
『ちょ、やばいやばいやばい!そっちの援護まだ!?』
「あと十秒で到着する、持ちこたえろ!」
俺はアイカに合図を送り、追加でドローン群を射出させる。小型機が編隊を組み、猛然とマリナの背後に飛び込んだ。敵機のセンサーをノイズで覆い、位置情報を乱す。
『よっしゃ、ちょっとマシになった!反撃する!』
マリナの声と同時に、ハイペリオンの機首から火線が閃き、敵機のシールドをかすめた。しかし漆黒の機体は、まるで液体のように軌道をねじ曲げ、再び死角へと消える。
「くそ、なんであんな動きができるんだ……」
「推進機構に特殊なベクトル制御が搭載されている可能性があります。通常の慣性航行を行っていません」
アイカの分析は簡潔だが、つまり“今の俺たちの戦術では不利”ということだ。
「なら、逆に慣性を利用してやる……」
俺は艦を大きく旋回させた。自ら慣性を溜め込み、そのまま人工重力制御を切る。艦内に一瞬、無重力が広がった。
敵機の機動を逆算し、ドローンの網を広げる。わずかに動きが鈍った瞬間を逃さず、全砲門を開いた。
漆黒の機影が閃光に包まれる。
だが——センサーにはまだ、二つの赤い光点が健在として映っていた。
「しぶとい……」
「でも、いけます。今の反応速度なら、勝機はあります」
俺は深く息を吸い、再びモニターに視線を戻した。次の一撃で、決める。
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